記事検索
バックナンバー

第420回:実測でも8.5時間の連続通信を達成!
驚異的なスタミナのWiMAXルーター「AtermWM3500R」


 NECアクセステクニカから、最大約8時間のバッテリー動作を実現するWiMAX対応モバイルルーター「AtermWM3500R」が発売された。コンパクトで、簡単で、しかもパワフル、そんなWM3500Rの実力に迫ってみよう。

遠慮なく使える

 いかに優れた製品でも、稼働させることができなければ使い物にならない。

 特に、スマートフォンやモバイルルーターなどのモバイル機器では、この当たり前の原則を実生活の中で痛感させられることも少なくない。

 そんな中、NECアクセステクニカから登場したのが、この「AtermWM3500R」だ。WiMAXに対応したモバイルルーターで、最大150Mbpsの無線LANを利用して、携帯情報端末やゲーム機などをインターネットに接続できる製品だが、その最大の特徴は約8時間という驚異的なバッテリー動作時間にある。

NECアクセステクニカの「AtermWM3500R」。約8時間のバッテリー動作が可能なWiMAXに対応した無線LANモバイルルーター

 従来製品となるAtermWM3300Rのバッテリー動作時間は、2.5時間だったため、この3倍以上の長時間動作が可能になったことになる。筆者の知る限り、現状のモバイルルーターの中では、バッファローのDWR-PG(NTT東日本の光ポータブル)が約6時間と最長のバッテリー動作時間を実現していたが、通信方式に違いはあるものの、これをも上回るスタミナを実現している。

 モバイルルーターの場合、バッテリー駆動時間は、他社製品との差異化を実現するもっとも重要で、しかもわかりやすいポイントと言える。

 実際、モバイルルーター(やスマートフォンのテザリング)を利用していると、限られたバッテリー駆動時間をうまく利用するために、こまめに充電したり、通信時間を考えながら使わざるを得ないことが多い。

 つまり、これまでは、せっかく、高速で、どこでも使えるインフラが広がっているのに、それを思う存分使うことができなかったわけだ。

 しかし、このAtermWM3500Rであれば、これまでのような「遠慮」はいらない。一般的な用途であれば、朝出かけて、夜帰ってくるまで、ほぼバッテリーを気にせず利用することができる。まさに、パワー(バッテリー駆動時間)こそ正義といった製品だ。

胸ポケットにも入れられる

 では、実際の製品について見ていこう。まず、目につくのは、そのコンパクトでスタイリッシュなデザインだろう。

 従来のAtermWM3300Rと比べて、大幅な小型化が実現されており、サイズは105×70×14.8mm(幅、奥行き、高さ)で、重さが約120gとなった。

正面 左側面 上側面

 大きさとしては、定期券やカード類を入れるパスケースをいったところで、鞄の小物入れや背広のポケットなどにスッポリ収まるサイズとなっている。稼働させるとほんのり暖かくなるので、実際にはオススメできないが、ワイシャツの胸ポケットに入れて持ち歩くことも可能だ。

 デザインもとても良くなった。同社の製品は、どちらかというとシンプルで実直な印象の製品が多かったが、今回のWM3500Rは、ストラップホールを備えるなどの実用性を考慮しつつも、なかなか遊び心のあるデザインとなっており、カラーリングもマーズレッド、シルキーホワイト、プラチナブラックの3色がラインナップされている。

ストラップホールも用意 3色をラインナップ

 よく見ると、表面にはラメがちりばめられており、なかなか凝ったカラーリングになっている。

 かといって、イヤミがあるような派手さではないので、一見、目立つマーズレッドでも、実際にスマートフォンやPCの側に置いて使っても、ほとんど違和感がない。鞄に入れて持ち歩く人の場合、取り出したり、操作しやすいように、鞄の中で目立つことが重要だが、そういう意味では、シルキーホワイト、もしくは、このマーズレッドというのは悪くない選択と言えそうだ。

 インターフェイス類は、正面から見て左側の側面にmicroUSBポートと別売りのクレードル用のコネクタが装備されており、上側の側面に電源ボタン、らくらく無線スタートやWPS用のSETボタン、リセットボタンが配置されるというシンプルな構成となっている。

 また、LEDも見やすく工夫されており、電源やバッテリー残量、無線LAN、WiMAXの電波状況が、見やすいアイコン形式で配置されており、緑(もしくは橙)に光るようになっている。

 普段、利用中は消費電力を節約するために、基本的に消灯しており(動作中は電源ランプのみが5秒に1回点滅)、前述したSETボタンを押すと、再び点灯する仕様になっている。

 慣れないと動作中かどうか判断しにくいが、それもバッテリー動作時間のための工夫というわけだ。

見やすいアイコン形式のLEDを採用。普段はバッテリー節約のために消灯している

150Mbpsの無線LANを採用

 続いて使い勝手だが、これも問題ない。WiMAXなので、初回にセットアップが必要だが、無線LANでPCから接続し、ブラウザを利用してWiMAXの統合ポータルからセットアップを実行すればいい。

 本製品は、USB接続でも利用できるが、らくらく無線スタートをサポートしているため、これらの方式をサポートした機器であれば、簡単に無線LANに接続することができる(WPSはバージョンアップ対応予定)。

無線LANで接続後、設定画面からWiMAXの契約処理を実行。WiMAXの統合ポータル経由でその場で契約できる 設定情報は背面に記載されている。なお、セカンダリSSIDが記載されているがマルチSSIDは将来のファームアップ対応となっており、現状は利用できない

 iPhone/iPadなどの場合、手動での接続が必要だが、接続に必要なSSIDや暗号キーは本体背面に記載されているので、すぐに参照することができる。むき出しになっているため、外出先で利用する場合はちょっと心配だが、この場合は後で設定を変更しておけばいいだろう。

 なお、サポートされる無線LANは、2.4GHz帯を利用したものとなっており、いわゆる11nテクノロジーと呼ばれるデュアルチャネル利用の150Mbpsとなる。IEEE802.11n/gからMIMOを除いたものとなるため、最新の300Mbpsの半分の速度となるが、MIMOは消費電力が高くなってしまうので、速度と消費電力のバランスを考慮すると、順当な方式と言えるだろう。

 現状、モバイルルーターの多くは、IEEE802.11b/g準拠となっており、その速度が54Mbps止まりとなっている(アイ・オー・データ機器のWMX-GWGAは150Mbps対応)。WAN側が3Gであれば54Mbpsでも十分だが、WiMAXの場合、チップの進化や基地局側の調整によって、最近では実効で20Mbpsを越えるケースなども見られるようになってきている。

 その一方で、スマートフォンなどはIEEE802.11nに対応した無線LANを搭載するケースも増えてきており、無線LANの高速化は、もはや必須とも言える状況だ。

 本製品の場合、別売りのクレードルを利用することで、WAN側に有線LANを利用したルーターとして利用することも可能となっている。このような使い方を想定しても、無線LANが150Mbpsであることのメリットは大きいだろう。

実測でも8.5時間をマーク

 さて、もっとも気になる本題に入ろう。前述したように、本製品の最大の特徴は、2500mAhの容量を持つリチウムポリマ電池と、チップやソフトウェアの工夫によって実現された公称約8時間というバッテリー動作時間だ。

 最近のモバイルルーターは、公称値と実測値の差がない傾向にあるが、本製品もその1つと言えそうだ。

 PCから無線で接続し、PINGとHTTPのGETコマンドを繰り返し実行するバッチファイルを動作させ続けてみたところ、連続で8時間33分19秒の動作を確認した。

PCを利用して連続通信でバッテリーがどれくらい持つかを計測。実測で8時間33分19秒の動作を確認した

 具体的には、朝の9時38分から計測を開始して、動作しなくなったのが18時11分だったので、ほぼ会社の始業時間と終業時間と同じと考えていい。「通勤時間と残業時間も欲しい」という声も聞こえてきそうだが、あくまでも連続時間なので、途中で使わない時間があれば、当然、その分、使える時間も延びることになる。

 実際、本製品では、標準では10分間、通信がない場合に自動的に動作を停止する設定になっている(USB接続時、クレードル時は停止しない)。このため、断続的な利用ということであれば、朝の電車から、帰りの電車まで、ほぼ一日中、使い続けることが可能となっている。筆者も午後から打ち合わせに出発し、移動中に何度か利用しながら、打ち合わせ中に連続で2時間ほど利用し、夜の帰り道でも使うという形で試してみたが、電池切れになることもなかった。

WM3500Rの設定画面。標準では無通信時間が10分に設定されており、自動的に動作を停止する

 連続稼働時間も当然すばらしいのだが、このように1日の利用で、バッテリー残量を意識しなくていいというのが、本製品の最大の特徴と言えるだろう。

 もちろん、外出先で充電しながら利用することも可能だ。同社のWebページでは給電という表現になっているが、実際にはUSBポートから充電しながらの利用が可能になっており、PCや同社のWebページでも紹介されているエネループモバイルブースターシリーズを利用することもできる(もちろん利用中の充電の場合は時間がかかる)。

 充電しているかどうかは、本体のランプで確認するといいだろう。電源ランプが緑色の場合は充電していないが、橙色になっているときは充電中となる。バッテリー残量が一定以上ある場合は(80〜90%前後の模様)、USBケーブルを接続しても充電を行わないが、それ以下の場合はPCで充電しながら使うといったこともできる。こういった使い方をすれば、ラクラク1日過ごすことができる。

エネループモバイルブースターシリーズやPCのUSB経由で、利用中も充電が可能。ランプが橙色の場合は充電されている

 なお、本製品にはロングライフ充電という機能が搭載されており、有効にすると(標準では無効)、満充電の手前で充電を停止するようにできる。この場合、バッテリー駆動時間は8時間より短くなるが(1〜2時間)、その分、バッテリーの消耗を押さえ、寿命を長くすることができる。

 本製品のバッテリーは交換タイプではないため、1日の利用時間と、長期的な利用期間を考慮して設定を変更するといいだろう。

 このようにバッテリーに関しては、非常に優秀なWM3500Rだが、1点だけ付け加えておくと、個人的には、自動停止後の復帰操作が若干気になった。前述したように標準では10分間通信がないと自動的に動作を停止するが、この状態から復帰させるためには、電源ボタンを使って電源を入れ直す必要がある。

 理想としては、自動的にスリープし、再び通信が発生すれば、自動的に復帰して欲しいところだが、残念ながらこれはできない。

 ただし、これは考え方次第だ。自動スリープと自動復帰の場合、接続する機器によっては、意図せず、バッテリーを消費してしまう場合がある。こういった場合、いざというときにバッテリー切れになる場合もあり、結局、こまめに電源をオフにするといった使い方をしなければならない場合もある。

 頻繁に使う場合は、電源スイッチの操作が増えるが、それでも1日に数回、ボタンを押すだけなので、これはバッテリーを余計に消費しないための儀式だと思えば苦にならないだろう。

 場合によっては、スリープまでの時間を長くすることも可能なうえ、12月下旬の配布が予定されている新ファームでも、この設定自体をオフにすることもできるので、設定や運用でカバーするといいだろう。

クレードルも含めた実効速度を比較

 速度に関しては、WAN側にWiMAXを利用するため、その速度に大きく依存する。ただし、WiMAXの場合、何度かパフォーマンスのチューニングが行われていることもあり、新しい世代のチップを採用した製品の方が高い速度を実現しやすい。このため、古いWiMAXアダプタや従来のWM3300Rに比べてもパフォーマンスとしては良好だ。

 以下のグラフは、無線LAN接続の場合、USB接続の場合(USB-LAN時)、およびクレードルを利用したWiMAX、LAN接続の場合の4パターンで速度を計測した結果だ。

WAN LAN 下り 上り
WiMAX 無線LAN 18.97 4.703
WiMAX USB接続 17.59 4.707
WiMAX クレードル 18.18 4.707
LAN(フレッツ光) クレードル 24.41 36.52
※クライアントにThinkPad x200(Core2Duo P8600/2GB/OCZ Vertex120GB/Intel5300/Windows7 64bit)を利用し、インターネット上の速度測定サイト(Radish)を利用して計測

 筆者宅ではWiMAXの受信状況が良好なおかげもあり、下りで18Mbps、上りで4Mbpsの速度を実現することができた。これくらいの速度で常にインターネットを利用できると、かなり快適で、感覚的にはLAN経由で利用している場合とほとんど違いがない。

 スマートフォンなどでは、端末側のパフォーマンスやブラウザの速度が影響してしまうこともあるが、アプリのダウンロードなどは非常に高速で使い勝手が良い。

 一方、クレードルを利用した有線LAN接続時を利用した速度があまり高くないが、筆者宅の周辺の電波状況が混雑している影響と考えられる(75Mbps以上でリンクできなかった)。とは言え、WiMAXよりも高い速度は実現できるので、家庭や旅行先などで、有線LANが使える場合に重宝するだろう。

別売りのクレードルも利用可能。充電はもちろんのこと、背面のLAN端子(100BASE-TX)を利用することで、光ファイバーなどの有線環境の無線アクセスポイントとしても利用できる

 なお、WiMAXでの利用時でもクレードルに装着すれば自動的に有線LAN接続に切り替わる(切替時に通信中のクライアント側は無線LANの接続し直しが必要な場合もある)。このため、外出先で利用し、帰宅したらクレードルにポンとセットすれば、自動的に家庭内で利用できるようになる。

 別売りで3000円前後となるため、購入を躊躇するかもしれないが、個人的には充電も楽にできるので、ぜひ一緒に購入しておくことをおすすめする。

実用性バツグンのモバイルルーター

 以上、NECアクセステクニカの「AtermWM3500R」を実際に使ってみたが、この製品の魅力は、何と言っても、その強烈なバッテリー動作時間にある。ほぼ一日中使えるので、スマートフォンの3G回線代わりとしても十分に活用できる。

 サイズもコンパクトなうえ、使ってみた限りでは発熱などもまったく気にならない。クレードルによる充電の手軽さなども考えると、かなりおすすめできる製品と言えるだろう。

 なお、発売当初のロットでは、オンラインサインアップ時の不具合があったようだが、これは現行のファームウェアですでに改善されている。また、筆者がテストした1.02のバージョンでは、充電容量の表示に問題があるが、これも12月末にリリース予定のファームで修正予定となっている。

 このほか、同12月リリース予定のファームでは、ESS-IDステルス機能にも対応予定となっているが、将来的なアップデートによって、現状は実装されていないマルチSSIDやネットワーク分離機能なども、今後、搭載予定となっている。もちろん、ファームウェアのアップデートは本体のボタンで手軽に可能だ。あらゆる点で、非常に実用性の高いモバイルルーターと言えるだろう。


関連情報


2010/12/14 00:00


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 7」ほか多数の著書がある。自身のブログはコチラ