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第429回:国内投入が待ち望まれるビジネス版Pogoplug〜Cloud Engines社「Pogoplug Biz」


 国内での販売が開始され、高い注目を集めているCloud Engines社の「Pogoplug」。そのビジネス向け製品として米国、欧州で販売されているのが「Pogoplug Biz」だ。海外版の製品を入手できたので、その実力を検証してみた。

欲しかったのは「Biz」

 Pogoplugの国内発売で、個人的にもっとも残念だったこと。それは、国内導入されるモデルが無印の「Pogoplug」のみだったことだ。

 これまで、個人的に購入した米国版のPogoplugを利用していたが、転送速度が低い、送ったファイルがダウンロードされのかを確認できない、取引先のユーザーを管理者権限でしか追加できないなど、いくつかの不満があった。

 今回の国内導入で、速度面の問題は完全にクリアされたが(詳細は後述)、残りは無印のPogoplugでは機能的にサポートされておらず、上位版の「Pogoplug Biz」を利用する必要があった。このため、国内導入を期待していたのだが、今回は残念ながらそれがかなわなかったことになる。

左から米国版Pogoplug、日本版Pogoplug、米国版Pogoplug Biz

 というわけで、再び先行して使ってしまおうということで、海外の友人から送ってもらったのが、今回紹介する「Pogoplug Biz」だ。299ドルと、無印の3倍もの値段が付けられているが、マルチユーザー対応、ユーザーインターフェイスのカスタマイズ、統計情報や監査機能、表示のみが可能なWebベースの共有など、ビジネスシーンであると便利な各種機能が搭載されている。

 オンラインサービスであれば、これらをオプションの有料サービスとして提供するのが一般的かもしれないが、ハードウェアとして販売するというあたりが、あくまでも「買い切り」モデルにこだわる同社ならではといったところだ。

 もちろん、ほぼ同じハードウェアに対して、価格が3倍になるという点に抵抗を感じる人もいるかもしれないが、強化された機能のコストを毎月の利用料ではなく、一括で負担すると考えれば悪くない選択だ。こういった点でも、Bizは面白い存在の製品と言えるのではないだろうか。

正面 側面 背面

国内サーバーの威力

 実際にBizの機能を紹介する前に、ひとつだけ注意点を紹介しておく。国内でのPogoplugの販売が開始された今、機能的な評価目的以外で、海外版Pogoplugを購入することは推奨できない(国内で販売されているマゼンダ色の輸入版も含む)。

今回ご紹介する日本未発売のBizモデルはもちろん、鮮やかなピンク色のPogoplug海外モデル(写真)は、海外サーバー接続となるので注意

 というのは、以前の本コラムでのインタビューでも紹介したが、海外版の製品は海外のサーバーに接続されるため、ファイルの転送などが海外経由となり、速度がかなり低くなってしまうからだ。

 実際、今回取り上げる海外版のBizと国内版の無印Pogoplugの速度を比較したのが以下のグラフだ。20MBのZIPファイルをウェブブラウザー経由、およびPC用ユーティリティによってマウントされたドライブ経由で読み書きした際の時間を計測し、それをMbpsに換算した結果だ。


Mbps
WAN環境
(インターネット経由)
Web UI BIZ(海外版) 上り 0.6 286.4
下り 0.9 189.7
POGO(国内版) 上り 13.3 12.2
下り 33.8 4.8
仮想ドライブ BIZ(海外版) 上り 1.01 161.5
下り 2.5 65.3
POGO(国内版) 上り 12.8 12.6
下り 32.4 5.0
LAN環境 Web UI BIZ(海外版) 上り 138.1 56.5
下り 198.9 39.2
POGO(国内版) 上り 85.4 91.3
下り 174.8 44.6
仮想ドライブ BIZ(海外版) 上り 128.5 60.7
下り 203.6 38.3
POGO(国内版) 上り 132.2 59
下り 195.4 39.9
※インターネット経由:PCはフレッツ光ネクスト(下り200/上り100Mbps)、Pogoはauひかり(上下1Gbps)に設置
※インターネット経由、LAN環境とも、上りはPC→POGO、下りはPOGO→PCのアクセスを示す
※LAN環境:PC、Pogoともに1000BASE-Tのローカルに接続(PogoはauひかりでWAN接続)
※PC:ThinkPad X200(Core2Duo P8600/RAM8GB/OCZ Vertex 120GB/Windows 7 Ultimate 64bit)
※テスト方法:20.3MBのZIPファイルをコピーし、その時間を計測。ファイル容量からMbpsを計算した
※USB接続の640GB HDD(SiliconPower Armor A80使用)

 同一LAN上に存在する場合、その差はほとんどないが、インターネット経由のアクセスでは海外サーバーを経由するPogoplug Bizは極端に速度が低下する。特にPogoplugのサイトにログインして利用する、ウェブブラウザー経由でのファイルのアップロード、ダウンロードは非常に遅く、転送画面の表示も20〜200KB/sあたりでかなりバラついていた。100MB以上のファイルのやり取りには向いていないと言えるだろう。

 これに対して、国内販売版のPogolugは、もちろん利用する回線にもよるが、インターネット経由でも非常に高速で、オンラインストレージサービスなどと比べても十分なアドバンテージのある速度を実現できるようになっている。

 Cloud Engines社によると、海外版を国内サーバーに接続することは技術的には可能とのことだが、この変更はユーザーにはできない。Cloud Engines社で1台ずつ設定変更を行う必要があるが、もともと北米向けのPogoplugなどでは日本は出荷対象外エリアとなっていたことから、Cloud Engines社による設定変更のサポートはあまり期待しない方がいいかもしれない。国内版が販売されている現在、これから海外版を購入するのは避けた方がいいだろう。

 なお、Pogoplugは、NASというよりはオンラインストレージに近い製品と言えるが、NAS的に使った場合でも十分な製品を発揮する製品となっている。以下は、国内版のPogoplugと今回紹介する海外版Pogoplug BizのCrystalDiskMark 3.0.1の結果だ。1000MBのシーケンシャルで28MB/s、512Kのランダムでも9〜12MB/sと、悪くない結果だ。

 最新の60MB/sオーバーを実現する高速NASに比べれば物足りないが、省電力のハードウェアとUSB接続のHDDとの組み合わせであることを考えると優秀な値で、中堅から下位モデルのNASと肩を並べる性能と言ってよい。個人での利用、少人数での共有といった用途なら、快適に使えると考えて良いだろう。

CrystalDiskMark3.0.1の結果(左が無印Pogoplug、右がBiz)

アクティブ・コピーによる拠点間複製を試す

 すでに長くなってしまったが、もう1つ、前置きを紹介しておこう。今回、Pogoplug Bizを含め、複数台のPogoplugを用意することができたので、アクティブ・コピーの機能を試してみた。

 Pogoplugでは、PCとPogoplug間のファイルの同期やPogoplugに接続したストレージ間のファイルの同期を「アクティブ・コピー」と呼んでいるが、この機能はWAN経由でも利用することができるようになっている。つまり、拠点Aと拠点Bに、それぞれPogoplugを設置することで、特定のフォルダーをA→Bで同期させることができるわけだ。

アクティブ・コピーによる同期のイメージ

 今回は、2台のPogoplugをフレッツ光ネクストとauひかりのそれぞれの回線に接続し、USB HDD上のフォルダーを同期させてみた。国内版のPogoplugを利用した場合、このアクティブ・コピーもかなり快適だ。

 同期設定したコピー元のフォルダーに2MBのBMPファイルをPCからコピーすると、コピー完了後、7秒後に転送先のフォルダーにファイルが表示され、さらに9秒後(合計16秒後)にファイルが完全に同期された。

 もちろん、複数のファイルを同期させれば、それだけ時間はかかるが、ほぼリアルタイムにファイルが同期されるため、拠点間で同一のデータを保持したいという場合に非常に重宝する。

 国内版Pogoplugの場合、WAN上のHDDにもシームレスに、しかも高速にアクセスできるので、共通の文書にもWAN経由でアクセスするようにしてもかまわないが、頻繁に利用するファイルは同期によってローカルに転送しておいた方が利便性は高いだろう。

 なお、アクティブ・コピーは基本的に片方向での同期のみが設定可能となっている。このため、A→Bの設定後、フォルダーを入れ替えてB→Aという設定を追加しようとすると警告が表示されて設定が拒否される。

 なお、3つのフォルダーを利用して、A→B、B→C、C→Aという設定は可能だが、この場合、ファイルのコピーが無限ループに陥ってしまうため、間違っても設定しない方が良いだろう。複数拠点で同期させる場合は、ツリー上のルートをうまく構成し、ループしないように注意しよう(A→B、A→Cという二股のルートは設定可能)。

アクティブ・コピーで別の拠点にあるPogoplugのフォルダーを設定すると拠点間でファイルを同期できる 二股の設定は可能だが、双方向の設定は不可。3組で最終的にコピー元に戻る設定など無限にループしてしまう構成もNG

マルチユーザーを使って「仮想Pogo」を実現する

 前置きで、すでに普段の連載の文量をオーバーしてしまったが、本題に入ろう。

 Bizで、まず注目したいのはマルチユーザーの機能だ。この機能は、誤解を恐れずに言えば、第三者に仮想Pogoを提供する機能と言って良い。

 無印のPogoplugの場合、取引先などとファイルを共有したい場合、ファイルやフォルダのリンクを送信するのが一般的だが、この場合、標準ではファイルの表示とダウンロードしか相手には許可されない。相手にフルアクセスの権限を付与し、さらに相手がメールアドレスを登録してログインしてくれればファイルのアップロードまで可能になるが、そのファイルをさらに第三者に転送することなどはできない。

 もちろん、相手のメールアドレスを自分のPogoplugに管理者として登録すれば、すべての機能を使ってもらうことができるが、この場合、個人的なフォルダまですべて相手に見えてしまうことになる。

 この問題を解決できるのがマルチユーザーだ。マルチユーザーでは、特定のフォルダーにのみ管理者権限を持つアカウントを作成することができる。たとえば、プロジェクトで共同作業をする相手がいる場合、その人のメールアドレスをBizの「複数ユーザーの管理」に追加する。その後、ユーザーに対して特定のフォルダーを割りあてると、該当ユーザーは、このフォルダーのみが参照できる管理者権限を得ることになる。

メールアドレスを登録後、利用可能なフォルダーを割りあてると、そのユーザーアカウントでPogoplugを利用できる 追加したユーザーでアクセスすると、デバイス部分に割りあてられたフォルダーが表示され、あたかも自分専用のPogoのように利用できる(全体に影響する設定はNG)

 このユーザーでログインすると、ウェブブラウザーで管理者から共有設定されたフォルダーのみが表示される。この場合、招待されたユーザーはPogoplug接続ドライブへのアクセスが限られることを除くと、その他の設定はすべて、新品のPogoplugを使い始めたばかりのときと同じものが表示される。

 イメージとしては、元の管理者が自宅に設置したPogoplugのHDD上にある1つのフォルダーのみを第三者に貸し出すというか、ホスティングサービスのVPSのような仮想的なPogo環境を第三者に提供しているような機能と言える。

マルチユーザーのイメージ

 もちろん、社内で複数のユーザーでPogoを使う場合にも便利だ。それぞれ個人専用のフォルダーを作成し、それに対して各社員のメールアドレスを登録しておけば、ハードウェアとHDDは1台のみだが、あたかも各ユーザーがそれぞれ自分専用のPogoplugを社内に設置しているかのように利用することができる。

 なお。このようにマルチユーザーで追加されたユーザーが、すでにPogoplugを所有するユーザーであった場合、自分のPogoplugの設定画面のドライブ一覧に、マルチユーザーで追加されたフォルダーが追加される。

 このユーザーは、ウェブブラウザー経由やユーティリティから、自宅の自分のPogo、会社から割りあてられたPogoを、それぞれの場所をまったく意識することなく、完全にシームレスに利用することができる。よって、良し悪しは別にして、自宅のPCのデータを会社から割りあてられたPogoのフォルダーにバックアップしたり、会社のPogoのフォルダーのデータをアクティブ・コピーで自宅のPogoに同期させる、などということもできる。

 考えようによってはセキュリティホールにもなりかねないので、運用は慎重に行うべきだが、こんな使い方までできてしまうことには脱帽だ。

他人のPogoplug Bizにアカウントを作成してもらうと、自分のPogoplug Bizのデバイスと同様に他人のPogoplug Biz上のフォルダーを利用できる

期待していた監査は若干物足りない印象

 個人的に、Bizで最も期待していたのはAuditと表記されている監査機能だった。

 個人的な趣味で使うのであれば別だが、仕事でPogo使うとなると、データを相手が確実に受け取ったか? それはいつか? 何度アクセスしたか? こちらが意図しない相手がファイルにアクセスしていないか? といった点に注意を払う必要がある。

 現状の無印Pogoでは、これがまったくできないため、相手がファイルを受け取ったという返信を送ってくれた場合のみ、受け渡しが無事に完了したことを認識でき、そのファイルを削除することができた。

 このような相手次第の対応では、データ受け渡しの確実性や安全性が担保されないため、アクセス履歴をこちら側で把握したかったというわけだ。

 Bizでは、この機能が「ある程度」提供される。ファイルを共有後、WebUIの「共有しているファイル」で「統計情報」を参照すると、各ファイルのダウンロード数、視聴数、ストリームの回数が統計データとして表示される。

 そして、各ファイルのリンクをたどると、個別の情報が表示され、アクセスしたユーザーのメールアドレスとダウンロードの回数などが表示されるのだ。

統計情報からファイルのダウンロード数などを確認可能 ファイルごとにダウンロードしたユーザーのメールアドレスも表示可能。複数人にファイルを転送したときに、誰がダウンロードしていないのかなどがわかる

 悪くはない機能なのだが、結論から言うと、少々物足りない。まず、この統計がどうも当てにならない。実際にファイルをダウンロードしても「0」と表示されることがあたり、統計データ上はダウンロード回数がカウントされていても、ファイルの詳細を参照すると「0」となっている場合がある。

 そもそも、統計データというのはパブリックに公開する場合は意味があるが、個人的なデータのやり取りではあまり意味がない。むしろ、アクセスしたユーザーのIPアドレス、時間など、詳細なログを記録しておいてくれた方がありがたい。

 特に情報の扱いに対して厳しい対処が要求される現状を考えると、この機能では「Audit(監査)」と呼ぶのはちょっと抵抗がある。何もトラックできない無印Pogoよりはマシだが、もう少し、詳細な情報を記録できるようにして欲しい。

 どこにリクエストしていいか迷うところだが、もしも、国内での法人展開をソフトバンクBBが担うのであれば、この点は、ぜひCloudEngines社側に要望し、機能として実装してから法人展開してほしいところだ。でないと、企業の規模やポリシーによっては、残念ながらPogoplugの導入をあきらめざるを得ないことになってしまうだろう。

自社サイトのようにカスタマイズ可能

 最後に、カスタマイズの機能を紹介しよう。Pogoplug Bizでは、ファイルを共有したときに相手に送信されるメール、相手がメールのリンクをクリックしてアクセスするWeb UIのデザインをある程度変更することが可能となっている。

 まずは、メールだが、無印Pogoでは、Pogoのロゴと共に「xxxxがxxxxx(ファイル名)をあなたと共有しました」という味気ないメッセージのメールが送られる。もちろん、送信時にメッセージを追加することもできるが、毎回、メッセージを入力するのも面倒だ。

 これに対して、Bizでは、Web UI上でメッセージのHTMLを編集することが可能となっており、「お世話になっております。清水です」のような定型文をあらかじめ追加しておいたり、メッセージの配置やフォントを変更、さらにロゴを自社のマークなどオリジナルのものに変更することもできる。

メールのカスタマイズ画面。定型的なメッセージや署名などをあらかじめ仕込んでおくことが可能。変数も利用できる

 これはとても楽で、前述したような挨拶や自分の名前、さらには署名などを入れておけば、次回以降、カスタムメッセージを追加する手間は不要。ファイルを選んで、相手のメールアドレスを追加するだけで、すぐに相手にファイルを転送できるようになる。

 個人的には、過去、何度か、送信したメールが相手側で迷惑メールとしてフィルタされてしまった経験があるため、タイトルや差出人など、もっとカスタマイズできるようにしてほしかったが、これだけでも、だいぶメールでファイルを共有する際の手間は軽減された印象だ。

 一方、ユーザーインターフェイスのカスタマイズは、前述したメールにも使われるロゴファイルの変更、ロゴをクリックしたときに移動するリンク先URL、背景色やイメージなどを変更できる。このほか、自社ドメインを運用している場合は、CNAMEで「my.pogoplug.com」を別名定義しておくこともできる。うまくカスタマイズすると、あたかも自社のサービスのように見せることも可能なので、こういったところも法人向けにはありがたいところだ。

UIのカスタマイズも可能 ロゴなどを自社のものに置き換えることができる

 以上、海外版のPogoplug Bizを実際に試してみたが、筆者のようなSOHO環境、小規模な事務所などでは、これらBizの機能が使えるのは非常に大きなメリットと言える。Pogoplugは、個人的に利用するのであればスマートフォン(主にiOS)から使えるストレージとして活用するのが面白いが、複数のユーザーで共有すると、これはまた違った活用の仕方ができそうで、法人向けに提案のし甲斐のある製品と言える。

 先日のインタビューで、NASとの違いについてCEOのダニエルが「発想が違う」という点を強調していたが、Bizを使うとその意味がよくわかる。NASのリモート機能はLANの拡張に過ぎないが、Pogoはもっと広い範囲の機器と人を結ぶ世界を想定している。こういったあたりが「クラウド」と謳う所以でもあるのだろう。

 とにかく、自宅、会社、取引先、あらゆる場所にあるPogoのフォルダーがシームレスにマイコンピューター(スマートフォン)に表示される。この不思議で、便利な感覚をぜひ一度味わって欲しい。


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2011/2/22 06:00


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 7」ほか多数の著書がある。自身のブログはコチラ