Windows Storage Server 2008 R2搭載でより高速に
アイ・オー・データ機器「HDL-Z2WSA」


 アイ・オー・データ機器から、Windows Storage Server 2008 R2を搭載したNAS「HDL-Z2WSA」シリーズが登場した。最新OSの搭載によって、より速く、高機能になったのが特徴だ。その実力を検証してみた。

R2で熟成した“青ナス”

 Windows Storage Server 2008 R2の搭載で、かなり実用性が高くなったと言っていいだろう。アイ・オー・データ機器の「HDL-Z2WSA」は、Windowsベースのストレージを求める法人ユーザーにとって、かなり魅力的な製品となりそうだ。

 通称“青ナス”と呼ばれているメタリック調の青いフロントパネルなど、外観などのハードウェアは、従来モデルとなるHDL-Z2WSシリーズと共通だが、今回の新モデルからは、搭載されるOSがWindows Storage Server 2008 R2(以下WSS 2008 R2)へとバージョンアップされている。

 わずかな変更のようにも思えるが、この効果は大きい。最新のファイル共有プロトコルである「SMB2.1」のサポートにより、Windows 7との組み合わせでパフォーマンスが向上したうえ、従来は上位エディションのみだったiSCSIがエディションを問わず利用可能になり、ファイルの分類管理等の機能強化も図られている。言わば、熟成した“青ナス”とでも言ったところだ。

アイ・オー・データ機器のWindows Storage Server 2008R2搭載NAS「HDL-Z2WS1.0A」

 もちろん、現状、多くのNASがOSにlinuxを採用していることを考えると、WSS 2008 R2は少数派と言えるが、ActiveDirectory環境での利用に適している点やHyper-V環境との親和性の高さ、そして前述した特徴を考慮するとWSS 2008 R2を採用する本製品のメリットも見えてくる。

 もちろん、はじめての導入にもおすすめできるが、現状、何らかの形でWindows Serverとの連携が必要な場合に適している製品と言えそうだ。

お買い得な2ベイモデル

 では、早速製品について見ていこう。今回試用したのは2つのベイを搭載し、500GBの3.5インチHDDを2台搭載した小規模環境向けのモデル「HDL-Z2WS1.0A」だ。

 WSS 2008 R2を搭載したモデルは、本製品以外に、同じ2ベイ筐体で2.5インチのHDDを搭載する省電力モデル「HDL-Z2WSLP」、4ベイモデルの「HDL-Z4WSA」が存在するが、今回のWSS 2008 R2搭載モデルでは2ベイモデルのお買い得感が比較的高い。

正面側面背面

 というのも、従来のWindows Storage Server 2008搭載モデル(HDL-ZWSシリーズ)では、2ベイモデルに搭載されるOSのエディションがWindows Storage Server 2008 Basicとなっており、iSCSIターゲット機能がサポートされていないなどの機能的な制約があった(4ベイモデルはiSCSIサポート)。

 これに対して、今回のモデルでは、2ベイモデル、4ベイモデルのいずれにもWindows Storage Server 2008R2 Workgroupが搭載されている。現時点でのエディション構成と機能の違いについては、マイクロソフトの製品情報サイトを参照して欲しいが、Workgroupの場合、接続ユーザー数が25、ディスク数が6という制限があるものの、iSCSIターゲットサポート、分散ファイルシステムレプリケーション、ファイルサーバーリソースマネージャーなど主な機能がしっかりとサポートされている。

 さらに、この「HDL-Z2WSA」シリーズでは、アイ・オー・データ機器がMicrosoft社と個別に契約を結ぶことで接続ユーザー上限数が50まで拡張されている。50ユーザーまで利用できれば、小規模オフィスであれば十分ビジネスに利用できるだろう。

 つまり、低価格の2ベイモデルでも幅広い用途に活用できるようになったわけだ。価格的にも参考価格は1TBモデルで10万9800円と、実売であれば10万円以下も視野に入るため、小規模オフィスや部門単位での決済がしやすい。CPUやメモリなどの基本となるハードウェア構成も4ベイモデルと同等なため、個人的には2ベイモデルをおすすめしたいところだ。

抜群のパフォーマンス

 本製品の最大の特長は、何と言っても、その高いパフォーマンスだろう。個人的には、一定期間アクセスがないファイルを検索して移動するなど、自動的にファイルの管理が可能な「分類管理」なども便利だと思うが、とにかくアクセス速度が速いのは大きな魅力だ。

 以下の画面は、1000BASE-Tで接続したWindows 7クライアント(ThinkPad X200:Core 2 Duo P8600/RAM8GB/OCX Vertex 120GB/Intel82567LM)から、HDL-Z2WSA上の共有フォルダーに対してCrystalDiskMark3.0.1を実行した結果だ。

HDL-Z2WS1.0A(3.5インチモデル)の結果HDL-Z2WS1.0LP(2.5インチモデル)の結果

 2.5インチモデルは若干速度が劣るが、それでもシーケンシャルリードで70MB/s以上、3.5インチモデルでは100MB/sをオーバーした。bit/secに換算すれば800Mbps越えとなり、ほぼ1000BASE-Tの上限に近い値をマークできた。

 出荷時の設定で、HDDがミラーリング(OSのミラーセットを利用)されていことから、書き込みは66MB/s程度となっているものの、それでも値としては優秀だ。実際に使っていても、ファイルの読み書きが非常に速く、大容量のファイルもさほど待つことなく処理できる。

 また、同時接続に関しても、50台までの同時接続をメーカーで検証済みで、前述した、Microsoft社との個別契約により拡張した50ユーザーに対応している形だ。

 ハードウェアのスペックとしても、Atom D510 1.66GHz(デュアルコア)、メモリ2GBと比較的高いが、やはりWindows 7との親和性の高いWSS 2008 R2の恩恵が大きいと言えそうだ。

 なお、消費電力についてだが、ワットチェッカーによって計測してみたところ、3.5インチモデルはアイドル時28ワット/負荷時33ワット、2.5インチモデルはアイドル時20ワット/負荷時26ワットとなった。パフォーマンス面では3.5インチモデルが圧倒的に優位だが、実用的な速度が得られることを考えると、消費電力の少ない2.5インチモデルを選ぶメリットもありそうだ。

消費電力が低い2.5インチモデル。パフォーマンス的にも決して低くないので、こちらを選ぶメリットも大きい

iSCSIを利用可能に

 続いて、今回、2ベイモデルでも利用可能になったiSCSIを利用してみた。

 一般的なWindows Serverの管理と同様に、リモートデスクトップを利用してサーバーにアクセス後、「サーバーマネージャ」を利用してiSCSIターゲットを作成する。「役割」や「機能」ではなく、「記憶域」に設定項目があることに気づきにくいが、設定自体はウィザードを使ってターゲット名、IQN識別子などを設定していくだけと簡単だ。

iSCSIターゲットの作成はサーバーマネージャの「記憶域」から行う設定はウィザード形式で簡単。ターゲット名やIQN識別子などを設定するターゲットに割りあてるデバイスはVHDを利用。本製品の場合Dドライブがデータ領域となるのでそこにVHDを作成する

 IQN識別子は接続側サーバーやクライアントのIPアドレスやMacアドレスを指定することもできるが、iSCSIイニシエータから一旦接続を試みると、サーバー側から一覧を確認できるようになるので、そこから設定するのが楽だろう。

 領域として利用するデバイスは基本的にVHDとなる。前述したように、本製品では2台のHDDがミラーリングされており、システム用のCドライブとして50GB、データ領域用のDドライブとして残り(416GB程度)が確保されている。このDドライブ側に仮想ハードディスク(VHD)を作成し、iSCSIターゲットのデバイスとして利用することになる。

 このように作成したiSCSIターゲットは、サーバーのディスク領域拡張や仮想環境での利用などが想定されるが、とりあえず、Windows 7クライアントに接続して速度を計測してみた。

HDL-Z2WS1.0A(3.5インチモデル)のiSCSI接続時の結果HDL-Z2WS1.0LP(2.5インチモデル)のiSCSI接続時の結果

 Linux系のNASなどでは、SMBよりもiSCSIの方が高速なケースが多いのだが、今回の製品では、若干、iSCSIの方が遅いものの、ほぼ同等の結果となった。iSCSIが遅いというよりは、SMBがやたらと速いという印象だ。

 ちなみに、WSS 2008 R2では、iSCSI Software Target 3.3 のサポートにって、Hyper-V の共有ディスク、ホットプラグ/ホットリムーブ機能がサポートされている。Hyper-Vによる仮想環境のストレージとしてHDL-ZWSAシリーズを利用するのも良さそうだ。

ウイルス対策も可能

 このほか、専用の管理ツール「ZWS Manager」がインストールされており、RAIDの構成やメール通知設定、さらに本体前面の「Func」ボタン設定などを変更できるようになっている。

 面白いのはFuncボタンで、コマンドベースのスクリプトを記述しておくことで、これをボタン一発で起動できるようになる。たとえば、バックアップ後、自動的にシャットダウンするといったコマンドを記述しておき、会社の退出時に最後の人がボタンを押すとか、遠隔地のバックアップや停電対策などの際に利用するといった運用が可能だ。

Funcボタンにコマンドを割り当てることが可能。運用管理に活用できるMicrosoft Security Essentialsをインストール可能。小規模ビジネスであれば利用できる

 また、個人的にありがたいと感じたのはウイルス対策が手軽にできる点だ。Windows Serverベースの製品なので、サーバー向けのウイルス対策ソフトを導入することができるのだが、試してみたところ「Microsoft Security Essentials」も問題なくインストールすることができた。

 「Microsoft Security Essentials」は、PCが10台までの在宅スモールビジネスでの使用が許可されており、ライセンス上、法人での利用はできないが、筆者のような個人事業主の場合は、これを利用することで低コストでファイルサーバーのウイルス対策までもが可能になるというわけだ。

 以上、アイ・オー・データ機器のWindows Storage Server 2008R2搭載NAS「HDL-ZWSA」シリーズを実際に使ってみたが、パフォーマンスにしろ機能にしろ、とにかく非常に満足度の高い製品となっている。

 今回はiSCSIターゲットなど簡単な機能しか紹介しなかったが、前述した分類管理など、WSS 2008 R2ならではの豊富な機能が搭載されており、単純なファイルサーバーとしてだけでなく、もうワンランク上の文書管理的な使い方までも可能になっている。中小規模のビジネスシーンでの利用に最適なNASと言えそうだ。

 

(編集部注)記事公開後、本製品のユーザー数については、Microsoft社と個別契約を結ぶことで50ユーザーまで拡張しているとメーカーのアイ・オー・データ機器より情報をいただいたため、当該部分をWorkgroupの標準の25から50に変更しました。

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2011/2/15 06:00


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。