INTERNET Watch 30周年

【2023年のINTERNET Watch】「Wi-Fi 7」解禁や「IOWN 1.0」始動で通信が進化、コロナ禍の行動制限も大幅に緩和へ

2023年の出来事

 2023年(令和5年)は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染症法上の位置づけが「5類」へと移行されたことに伴い、約3年間続いた行動制限や水際対策が大幅に緩和された。マスクの着用も個人の判断に委ねられるようになるなど、社会経済活動や日常生活をコロナ禍前のものに戻していく大きな転換点となった。

 2年の延期の後、3月に開催されたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)では、日本代表が3大会ぶり3回目の優勝を果たした。また、プロ野球では阪神タイガースが38年ぶりの日本一に輝き、岡田彰布監督が選手にプレッシャーを与えないよう「優勝」の代わりに使用していた言葉にちなむチームスローガン「アレ(A.R.E.)」が新語・流行語大賞の年間大賞を受賞した。さらに将棋界では、10月に藤井聡太氏が史上初となる八冠独占を達成するなど、明るい話題が続いた。

 その一方で、10月には中東でイスラエルとパレスチナのイスラム組織ハマスによる大規模な軍事衝突が発生し、国際情勢は緊迫度を増した。また、夏には日本のみならず世界で過酷な猛暑となり、国連のグテーレス事務総長が「地球温暖化の時代は終わり、地球沸騰の時代が到来した」と警告し、気候変動による最悪の事態の回避を訴えた。

 また、前年に登場した「ChatGPT」をはじめとする生成AIの普及が急速に進んだ。新語・流行語大賞のトップテンに「生成AI」が選出されるなど、ビジネスから日常生活に至るまで、社会全体に大きな影響を与えた1年となった。

2026年2月に30周年を迎えたINTERNET Watchは、1996年2月に有料メールマガジンとして創刊し、1997年1月にウェブサイトを開設した。ここでは2026年の視点から2023年の話題を10本取り上げ、当時を振り返る。(1996年からの振り返り一覧

1. Wi-Fi 7が日本国内で利用可能になる

「Wi-Fi 7」いよいよ解禁、320MHz幅およびIEEE 802.11beが国内で利用可能に

 総務省は、総務省告示第426号および同第427号を公布・施行し、日本国内で320MHzの帯域幅の利用と、Wi-Fi 7(IEEE 802.11be)による通信が利用可能になった。

 Wi-Fi 7では、帯域幅が最大320MHzへと拡張され、複数の周波数帯を同時に使用するMLO(Multi-Link Operation)や、柔軟に通信リソースを割り当てるMulti-RU(Multi-Resource Unit)などにより、最大通信速度や接続の安定性を向上させている。

2. NTT東西、次世代光ネットワーク「IOWN 1.0」を提供開始

NTT東西、「IOWN1.0」を3月16日提供開始。低遅延&ゆらぎゼロの“オールフォトニクスネットワーク”

 NTT東西は、ネットワークの全区間で光波長を専有するオールフォトニクスネットワーク(All-Photonics Network:APN)による通信サービス「IOWN1.0」のサービスを開始した。NTTグループが提唱する「IOWN」の第1弾サービスとして提供されるもので、「低消費電力」「大容量・高品質」「低遅延」を特徴としている。

 大阪・関西万博での会場内ネットワークとして使用されていたほか、現在も建設重機の遠隔操作や、データセンター同士の通信など、幅広い分野での実験が行われている。また、2025年10月には「IOWN 2.0」についての発表も行われ、新たな光電融合スイッチの製品化による省電力化などについて紹介された。

3. パスキーの普及が進む

パスワードレス認証「パスキー」対応のアカウント総数は70億以上に、FIDOアライアンスが発表

 パスワードを使用せず認証を行う「パスキー」の普及が進んだ。

 2022年10月にPayPalとNTTドコモが世界で初めてパスキーに対応し、そこから急速に普及が始まった。2023年5月には全てのGoogleアカウントでパスキーを登録できるようになり、2023年12月にはパスキーを登録できるアカウントの総数が70億以上に上ると発表された。

 パスキーを推進する業界団体・FIDOアライアンスのアンドリュー・シキア氏は記者説明会で、「2023年はパスキーの年と言って過言ではない」と語った。

4. Twitterがサービス名を「X」に変更、長年親しまれた「青い鳥」が消滅

青い鳥よ永遠に……消滅するTwitterのロゴ素材を記念にダウンロードするユーザー相次ぐ

 2022年にTwitterを買収したイーロン・マスク氏は、7月23日にTwitterブランドの廃止およびロゴの刷新を発表した。翌日には黒を基調とした新ブランド名「X」のロゴが発表され、新ブランドおよびロゴへの置き換えが進んだ。

 これに合わせて機能の改称も実施され、「ツイート」が「ポスト」、「リツイート」が「リポスト」へと変更された。

5. Metaが「Threads」のサービスを開始する

今度こそ!? MetaのTwitter対抗サービス「Threads, an Instagram app」が7月6日配信予定

 Metaは、テキストベースの新たなSNS「Threads」(スレッズ)の提供を開始した。

 Twitter(現X)の仕様変更による混乱が広がるタイミングでリリースされたことに加え、Instagramアカウントとの連携の手軽さも相まって、サービス開始から5日でユーザー数が1億人を超えた。

6. 大手キャリア各社が「副回線サービス」を開始

auとソフトバンクが「副回線サービス」提供、4月12日より互いの回線に切り替えて通話・通信が可能に

 2022年に発生したKDDI(au)の大規模通信障害を受け、auとソフトバンク、NTTドコモとauが互いの回線をバックアップとして提供する「副回線サービス」を開始した。

 なお、災害時や通信障害時などに他社回線を一時的に利用できる「JAPANローミング」が2026年4月に開始したことや、災害用公衆Wi-Fi「00000JAPAN」が普及したことから、個人向けの副回線サービスは2026年春ごろから新規受付を終了し、順次サービスを終了する予定。

7. インボイス制度が開始する

インボイス制度スタート! そもそも消費税とは

 10月1日から「インボイス制度(適格請求書等保存方式)」が開始された。

 フリーランスや個人事業主への影響が大きく懸念されたほか、各種会計ソフトや請求管理ツールの対応など、多くの企業やクリエイターが対応に追われた。

8. 映画「Winny」が公開される

映画化された「Winny」はどんな事件を引き起こしたか〜本誌記事で振り返る当時の衝撃

 ファイル共有ソフト「Winny」の開発者である金子勇氏の逮捕・裁判について描いた映画「Winny」が公開された。

 Winnyは金子氏が開発し、2002年に公開されたファイル共有ソフト。匿名掲示板「2ちゃんねる」上で公開されると、映画、音楽、ゲームソフトなどが違法に共有されたほか、PC内のファイルをWinnyに流出させてしまうマルウェアも出現していた。

 こうした中、2004年5月に金子氏は著作権法違反ほう助の疑いで逮捕されたが、罪に対する正当性についての議論が起こっていた。その後裁判が続き、2011年12月には最高裁で無罪が確定した。INTERNET Watchでは、映画「Winny」の公開を記念して、当時の出来事をまとめた記事を公開している。

 映画「Winny」は、NetflixやU-NEXTなどの各種動画配信サービスで配信中だ。

9. 「清水理史の『イニシャルB』」が、連載1000回を迎える

光回線の検証に「一戸建てを買うしかなかった」20年前~今では合計13Gbpsが自宅に

 2001年から続く本誌連載「清水理史の『イニシャルB』」が、連載1000回を迎えた。イニシャルBの連載は「Broadband Watch」の創刊とともに開始し、2010年にBroadband WatchがINTERNET Watchに統合された後は、INTERNET Watchの連載として継続している。

 初回のタイトルは「Windows XPのブロードバンド度をチェック・1」で、Windows XPが標準でサポートしているPPPoEについて解説する内容になっている。

10. 「Wi-Fiルーター見直しの日」が記念日として登録される

家のWi-Fiルーター、何年も“置きっぱなし”にしていませんか? 年に一度は「見直し」を
「11月11日」は記念日が3番目に多い日!ポッキーやうまい棒を見たら「Wi-Fiルーター」も思い出してください

 警視庁サイバー攻撃対策センターが2023年3月に、家庭で使っているWi-Fiルーターが、インターネット回線側から侵入し悪用され、第三者である企業へのサイバー攻撃に用いられる事例があったため、設定を定期的に確認するなどしてほしいと注意喚起した。

 Wi-Fiルーターを踏み台にしたサイバー攻撃は、ソフトウェアの脆弱性、ネットワーク設定の不十分さ、サポートの切れた機器・ソフトウェアなどを突いて侵入し、設定を書き換えることで行われている。

 こうした背景からINTERNET Watchでは、11月11日を「Wi-Fiルーター見直しの日」として制定し、年に一度、設定の見直しや買い替えなどを実施するように提案している。ちなみに、11月11日に制定しているのは、Wi-Fiルーターの外部アンテナが立っている様子のイメージにちなんでいる。