清水理史の「イニシャルB」

NFC設定と中継機能を搭載した11ac対応機
NECアクセステクニカ「AtermWF1200HP」

 NECアクセステクニカからIEEE 802.11ac準拠の無線LANルーター「AtermWF1200HP」が発売された。価格的に同程度となるAtermWG1400HPとの違い、そして新たに搭載されたNFCによる設定機能について検証してみた。

2.4GHzと有線をどこまで重視するか

 新製品となるWF1200HPにすべきか、それとも同程度の実売価格で従来から販売されてきたWG1400HPにすべきか? 規格が正式策定され買いやすくなったIEEE 802.11ac対応機の候補をAtermシリーズに絞り込んだ場合、この2機種の選択で悩む人も少なくないことだろう。

Aterm WG1400HP(左)と新たに登場したAtermWF1200HP(右)

 NECアクセステクニカのラインナップの中で、ミドルレンジに位置づけられる両製品は、どちらも1万円前後という購入しやすい価格帯を実現しながら、微妙にスペックに違いが設けられており、甲乙付けがたい存在となっている。

 まずはスペックを比べてみよう。主な点のみをピックアップすると、両社の違いは以下のようになる。

 

【スペック比較】
AtermWF1200HP AtermWG1400HP
5GHz(11ac/11n) 867Mbps/300Mbps 867Mbps/300Mbps
2.4GHz(11n) 300Mbps 450Mbps
WAN 100Mbps×1 1000Mbps×1
LAN 100Mbps×3 1000Mbps×4
USB - 2.0×1
IPv6トンネル対応アダプタ機能 ×
Wi-Fi中継機能 ○(高速/TVモード) ×
アンテナ(5GHz/2.4GHz) 2x2/2x2 2x2/3x3
実売価格(yodobashi.com 2014/2/17現在) 1万980円 1万800円

 まずは、無線LANの部分だが、IEEE 802.11acの部分に関してはどちらも同じだ。HT80による80MHz幅の利用と2ストリームMIMOによる多重化によって5GHz帯の最大速度はいずれも867Mbpsを実現している。

 AtermWG1800HPなどの1300Mbps対応機に比べると最大速度は劣るが、実質的にPCに内蔵されている無線LANが867Mbps止まりということを考えると、実用的な製品で、現時点では良い選択肢と言える。

 無線LAN部分で大きな違いとなるのは、2.4GHz帯の対応だ。今回登場したAtermWF1200HPはHT40と2ストリームMIMOの組み合わせで最大300Mbpsとなるが、AtermWG1400HPはHT40+3ストリームMIMOで最大450Mbpsを実現する。

 2.4GHz帯の混雑状況や標準で20/40MHz自動選択(ほぼ20MHzで接続)となっている両製品の設定を考えると、実質的な速度はWF1200HPが144Mbps、WG1400HPが216Mbps前後となるため、スペック上で150Mbps、実質的な速度差で72Mbpsという違いをどう考えるかが、最初のポイントとなる。

 すでにPCよりもスマートフォンを中心に11ac(ほとんどは433Mbps対応)となっていることを考えると、2.4GHz帯で、しかも3ストリームMIMO対応の製品があり、その端末で少しでも速度を稼ぎたいという場合はWG1400HP、そこまで2.4GHz帯にこだわる必要がないならWF1200HPを選ぶといいだろう。

 なお、上記の表にも記載してあるが、5GHz帯に関しては両製品ともアンテナが2本の2ストリームMIMO対応となるため、11nに関してはどちらも300Mbps対応となる。WG1400HPの11nで450Mbpsというのはあくまでも2.4GHz帯のみの話だ。

 続いてのポイントは有線となる。型番の「G」と「F」の違いでも明らかなように、有線の速度はWG1400HPはGigabitEthernet対応の1000Mbps、WF1200HPはFastEthernet対応の100Mbpsとなる。

 個人的には、安定してつなぎたいものは絶対に有線と考えていることもあり、100Mbps対応のWF1200HPは選びにくい製品ではあるのだが、一般的には、「どうせ無線LANルーターを導入するなら、なるべくケーブルをなくしたい」という考え方の方が主流となる。

 このため、インターネット接続環境が100Mbps以下で、どうしても有線でつながなければならない機器がレコーダーなど一部のみという場合は、WF1200HPでも十分ということになるだろう。

正面
背面
側面
付属品は、台座とACアダプタ、LANケーブル、マニュアル類、さらにセットアップ用のNFCシートが同梱される

中継モードを利用可能なWF1200HP

 続いて、機能面での違いを見ていこう。まずは、USBポートの対応だ。WG1400HPではUSBポートが搭載されており、USBストレージを装着してLAN内で共有することなどができるが、WF1200HPではUSBポートそのものが省略されている。この機能については、あくまでも付加的な機能なので、特に無くても困るというものではないだろう。

 むしろ注目したいのは中継機能の有無だろう。WG1400HPは、LANポートに接続したPCなどを無線化するコンバーターモード、つまり有線→無線の機能は搭載しているが、無線→無線の中継機能は搭載していない。これに対して、WF1200HPは親機と子機の間で電波を中継する中継機としても利用可能になっている。

 この機能は、距離や遮蔽物などの関係で、電波が届きにくい環境に適している。たとえば、3階建ての住宅などで、1階の親機から3階の子機まで電波が届きにくい場合、2階に中継モードに設定したAtermWF1200HPを設置することで、1階の親機→2階のAtermWF1200HP→3階の子機というように、無線の電波を中継することが可能になる。

 同様の機能は、ハイエンドモデルのAtermWG1800HPにも搭載されているが、AtermWG1800HPが5GHz−2.4GHzの中継となる高速モードのみの対応に対して、WF1200HPは5GHz−2.4GHzの高速モードに加え、新たに5GHz−5GHzのTVモードを搭載した。イメージとしては、以下のようになる。

 【1F】親機――[5GHz / 867Mbps]――【2F】WF1200HP(中継機)――[5GHz / 867Mbps]――【3F】子機

 親機-中継機、中継機-子機、それぞれの間の最大通信速度はWF1200HPの5GHz帯の最大速度となる867Mbpsとなるが、無線LANの電波は同一空間上に同一周波数を使ってやり取りできないため(あらかじめ多重化を前提としたMIMOは別)、WF1200HPは親機との通信と子機との通信を時分割で実施する。このため、実質的な速度は867Mbpsの半分の433Mbpsで親機-子機の間が無線でつながることになる。

 もちろん、AtermWF1200HPでも、高速モードを利用すれば、以下のような接続が可能だ。

 【1F】親機――[5GHz / 867Mbps]――【2F】WF1200HP(中継機)――[2.4GHz / 300Mbps]――【3F】子機

 この場合、親機側と子機側で利用する周波数が異なるため、中継機は同時通信が可能だが、2.4GHz側の最大速度が300Mbpsとなるため、親機-子機間の速度は最大300Mbpsとなってしまう。中継機での時分割というロスはあるものの、安定した5GHz帯を親機側でも子機側でも使えること、300Mbpsより高速な11acの867Mbpsの半分の433Mbpsで通信できることが、TVモードの中継機能のメリットというわけだ。

 実際のパフォーマンスについては、以下の通りだ。LANポートが100Mbpsに固定されるため上限速度は抑え気味だが、3階でも1階とほぼ変わらないスピードを実現できている。

 一方、中継機能を利用した場合だが、3階では200Mbps越えと良好な結果が得られたものの2階は前述した理由でむしろスピードは落ち込んでしまった。中継の場合、中間的な距離で親機単体の構成と速度が逆転してしまうケースもあるので、明らかに距離や遮蔽物で速度が出にくい環境での利用に限定すべきだろう。

 

【WF122HP・WG1400HP・WG1400HP+WF1200HP中継の比較】
親機 子機 1F 2F 3F
AtermWF1200HP MacBook Air 11(867Mbps/300Mbps) 5GHz 94.7 94.7 94.6
2.4GHz 88.2 68.9 51.4
AtermWG1400HP MacBook Air 11(867Mbps/300Mbps) 5GHz 527 456 149
AtermWG1400HP+WF1200HP中継 MacBook Air 11(867Mbps/300Mbps) 5GHz 534 183 204

NFCを含め多彩な設定方法に対応

 このように、中継機能に特徴を持つAtermWF1200HPだが、もう1つの特徴として、NFCを利用した新たな設定方法に対応している点も見逃せない。

 本体のパッケージには、「Wi-Fi設定シート」と呼ばれるNFCタグが埋め込まれたシールが添付されており、ここにNFCに対応したAndroid端末(Android 4.4/4.3/4.2/4.1/4.0)をかざすことで、無線LANの設定ができるように工夫されている。

NFC対応のスマートフォンでは付属のシートにかざすことで接続設定ができる

 具体的な手順としては、以下のようになる。

   STEP1 端末のNFC機能を有効化
   STEP2 Wi-Fi設定シートに端末をかざす
   STEP3 読み取ったURLにブラウザでアクセス
   STEP4 Atermらくらく「かざして」スタートページでダウンロードをタップ
   STEP5 Google Playでアプリをダウンロード
   STEP6 アプリを起動
   STEP7 再度、Wi-Fi設定シートにかざす
   STEP8 設定が適用され自動接続

 NFCに対応した端末でしか利用できないが、QRコードに比べて情報の読み取りが簡単かつ確実であること、一度の設定で2.4GHz側と5GHz側の両方のSSIDの接続情報をまとめて設定できる点が特徴となる。

 もちろん、QRコードを使った方法での接続もサポートされるうえ、WPSやらくらく無線スタートによるプッシュボタンによる接続にも対応する。さらには、auの端末でサポートされているカメラによる文字認識方式(無線LANルーター背面のラベルを撮影し、そこに記載されているSSIDなどの文字を自動認識して設定)にも対応している。

 各方式の流れをまとめると以下のようになる。

 

【設定フロー比較】
らくらく「かざして」セットアップ らくらくQRスタート WPSプッシュボタン au Wi-Fi接続ツール
STEP1 NFCオン(1) http://qr.aterm.jp(2) Wi-Fi設定画面 au Wi-Fi接続ツール起動(3)
STEP2 Wi-Fi設定シートにかざす アプリダウンロード メニューキーからWPSプッシュボタン かんたん接続
STEP3 URLにアクセス らくらくQRスタートで設定 らくらくスタートボタン長押し かんたん接続開始
STEP4 Atermらくらく「かざして」スタートページでダウンロード カメラで背面撮影 設定適用され自動接続 メーカー選択
STEP5 Google Playからアプリダウンロード 設定完了 ラベル撮影
STEP6 アプリ起動 ウィジェットから接続 画像送信
STEP7 Wi-Fi設定シートにかざす サーバーで解析
STEP8 設定適用され自動接続 設定適用され接続(4)
STEP9 家族にメールやLINEで送信
  • (1)HOME-設定−その他ネットワーク-NFC-Reader/Writer、P2Pオン
  • (2)docomo端末はdocomo Wi-Fiかんたん接続から設定
  • (3)docomo端末でもhttp://qr.aterm.jp、http://nepital.kddi.comから利用可能
  • (4)iPhoneではプロファイル自動生成されるのでインストール

 利用できる端末はAndroidと限られるが、アプリも不要なうえ、もっとも少ないステップで設定できるのは、WPSによるプッシュボタン方式だ。iOS端末も含めると、らくらくQRスタートが使いやすいので、この方式が依然として主流と考えた方がよさそうだが、NFCによる「かざして」は、最初にかざしてスタートする手軽さと、その後のフローがきれいな流れで構成されているのが特徴だ。

WPSによる接続がサポートされた端末ならこれがステップ数は一番少ない
らくらくQRスタートは万能で設定も簡単。NTTドコモの端末ならdocomo Wi-Fi接続ツールから実行可能

 注意点は、工場出荷時のSSIDと暗号キーしか設定できない点だろう(QRスタートは変更したQRコードをWebで自動生成できる)。ただし、一般的には、標準設定の暗号キーやSSIDをそのまま使うケースが多いので、あまり気にする必要はないだろう。

 ちなみに、これは余談だが、上記の表にまとめたauの接続方式は、なかなか興味深い設定方法と言える。画像の認識精度があまり高くないので、環境によっては何度も写真の再撮影が必要になるのだが、Web上で設定が完結する上(なのでau端末以外でも使える)、設定完了後に家族に同じ設定をメールやLINEで通知できる。

 iPhoneの場合、プロファイルが自動生成されるのだが、このダウンロードURLをメールやLINEで家族に送信すれば、一発で無線LANの設定ができるしくみだ。これは非常に斬新かつ、効率的な設定方法だ。

 この最後の通知というフローは、今回のAtermシリーズだけでなく、各無線LANルーターベンダーにぜひマネをしていただきたい機能と言える。

auのスマートフォンでは機器背面のラベルを撮影することで、画像から文字を認識して設定ができる
認識精度はあまり高くないが、iOS用のプロファイルを自動生成したり、認識した設定を家族にメールやLINEで伝えられるのが秀逸

中継機としてのみ購入するのも手

 以上、NECアクセステクニカから新たに登場したAtermWF1200HPを実際に使ってみたが、売れ筋の価格帯のミドルレンジ製品として、かなり完成度の高い製品と言える。有線が100Mbpsである点さえ納得できれば、最大867Mbpsの11ac機として実用性が高い上、NFCを含めさまざまな方法で手軽に設定でき、しかも中継機としての活用までできる。

 通常は、既存の無線LANルーターの置き換えとして適した製品と言えるが、すでにAtermWG1400HPを購入したユーザーが、中継機として追加購入するのも良さそうだ。

 冒頭でも触れた通り、すでにIEEE 802.11acは正式な規格として策定済みとなっている。スマートフォンやタブレット、PCを快適にインターネット接続するためにも、本製品の購入を検討してみてはいかがだろうか。

清水 理史

製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8」ほか多数の著書がある。自身のブログはコチラ