清水理史の「イニシャルB」

スマホの写真バックアップやストリーム向けに ASUSTOR「AS1002T」をスマホだけで設定・利用する

 ASUSTORから、新型のエントリー向けNAS「AS1002T」が発売された。店頭予想価格2万4800円とリーズナブルながら、高速かつ高機能な製品で、スマートフォンからの利用に適している。初期設定からリモートアクセス、写真の自動バックアップなど、なるべくスマートフォンのみで設定・利用してみた。

ダイヤモンドプレート加工を採用

 ASUSの製品だとひと目でわかる――。

 斜めに刻まれたラインによって、フロントパネルに浮かび上がるダイヤのデザインに、既視感を覚えた人も少なくないことだろう。

 「ダイヤモンドプレート加工」と名付けられた、この独特の模様は、すでに市場で高い評価を得ているASUSのルーター「RT-AC」シリーズと共通のデザイン。

 ストレージの「ASUSTOR」とは、製品カテゴリもブランドも異なるものの、高速かつ多機能なことで定評がある既存製品とイメージを共通化することによって、一種の「安心感」のようなものを演出しているあたり、なかなか巧みな戦術と言えそうだ。

 今回、ASUSTORから登場した「AS1002T」は、同社のラインナップの中ではエントリー向けとなる製品。Braswell世代のインテルプロセッサを搭載する上位製品「AS61/62シリーズ」など、既存のモデルが脱着式のHDDベイを搭載する中、本製品はケースを開けて内部にHDDを装着する形態を採用。

 フロントにベイがなくなったことで、前述したダイヤモンドプレート加工による独特のデザインを実現している。

ASUSTORの新型NAS「AS1002T」

 仕様的には、Marvell ARMADA-385 1GHz(Dual Core)とメモリ512MBが搭載されており、エントリークラスのモデルとしては一般的。価格も店頭予想価格で2万4800円とリーズナブルな設定になっている。

 ただし、性能的な妥協はなく、公称のアクセス速度は読み込み110MB/s、書き込み96MB/sと有線の性能を使い切るだけの能力を備えているうえ、ハードウェア暗号化エンジンの搭載によってハードディスク(HDD)を暗号化した場合でも読み込み39MB/s、書き込み31MB/sを発揮することが可能。

 実際、有線LANで接続したPCから計測した結果でも以下のように高速な値が得られており、エントリーモデルとはいえ十分な性能を備えている。

 インターフェイスはシンプルで、前面にはUSB 3.0×1、背面にはUSB 3.0×1、Gigabit対応のLANポート×1を搭載する。また、電源ボタンも背面に搭載されている。NASの場合、基本的に電源オンのまま運用するため、あまり電源ボタンを操作することはないが、ほかの多くの製品と違う位置に電源ボタンがあっため、最初に電源を入れるときに戸惑ってしまった。

正面
側面
背面

スマートフォンのみで初期設定してみる

 今回のAS1002Tは、リーズナブルなエントリーモデルということで、家庭などでの導入を検討している人も多いと考えられる。このため、今回は、家庭でのメインの用途となるスマートフォンからの使い勝手を中心に検証してみた。

 それでは設定していこう。まずは、HDDを装着する。本製品には、ストレージ用のHDDが標準では搭載されていないため、市販のHDDを購入し装着する必要がある。

 前述したように、フロントにHDD用のベイは存在しないため、ケースを開けてHDDを装着するのだが、本体やHDDの固定には「つまみネジ」が採用されているため、ドライバーなどのツールを使わずに作業することも可能だ(とは言え出荷時は固く締められているのでドライバーの利用を推奨)。

 背面のネジを2本外し、ケースを前後にスライドさせるように開け、内部のベイにHDDを装着。付属のつまみネジで固定すればいい。

 初期設定は、PCから実行するのが一般的だが、スマートフォンからも実行可能だ(今回はiPhoneを利用)。あらかじめスマートフォンに「AiMaster」というアプリをダウンロードし、NASと同じネットワーク上のWi-Fiに接続した状態で、このアプリを起動すると、自動的にネットワーク上のAS1002Tが検出され、初期設定が可能となる。

 「initialize」を実行後、管理者パスワードやHDDの構成方法を設定し、最後にASUSTOR IDを登録するだけと簡単だ。

 唯一、注意が必要なのは、HDDの構成方法で、「最大容量」を選ぶとRAID0で、「バランスが取れている」を選択するとRAID1(2台のHDDに同じデータを保存)で構成される。標準では最大容量が選択されているので、「バランスが取れている」に変更して、HDDの故障に備えるべきだろう。

AiMasterを利用することでスマートフォンから初期設定が可能
RAID1で構成する場合は「バランスが取れている」を選択
最後にASUSTOR IDを登録すれば設定は完了

スマートフォンの写真を自動バックアップする

 初期設定が完了したら、スマートフォンからNAS上のファイルを参照できるようにしてみよう。

 まずは、本体にユーザーを追加する。先に紹介したAiMasterを利用してユーザーを追加する。1人で使うなら標準のadminを使ってファイルにアクセスすることも可能だが、セキュリティ上、このアカウントを常用することは推奨できない。

AiMasterを利用して各種管理が可能
ユーザーを追加することで家族それぞれが自分の領域を利用できる

 本体側の準備ができたらスマートフォン側で設定する。スマートフォンに「AiData」アプリをインストールし、「自動検出」でネットワーク上のAS1002Tを登録。追加したユーザーを設定すると、NAS上の共有フォルダーをスマートフォンから参照できるようになる。

AiDataを利用してNASのデータにアクセス可能。自動検出で同一LAN上のNASを検出して登録できる
追加したアカウントでアクセスする。HTTPSでも接続できる
NAS上の共有フォルダーをスマートフォンから参照できる

 続いて、スマートフォンで撮影した写真をバックアップしてみよう。前述したAiDataを使って共有フォルダーに手動でアップロードすることもできるが、AiFotoというアプリを利用すると、スマートフォンに保存されている写真を自動的にAS1002Tにアップロードすることができる。

 AiFotoを利用するには、まず本体側に「Photo Gallery」アプリをインストールする必要がある。とは言っても、まだPCは必要ない。管理用アプリのAiMasterは、アドオン的にオンラインから提供されるアプリのインストールにも対応しているため、スマートフォンから簡単にインストールを実行できる。

 本体側の準備ができたら、スマートフォンにAiFotoをインストールして起動する。初回設定でネットワーク上のAS1002Tを自動検出で登録するところまではAiDataと共通だ。

 写真を自動的にアップロードするには、設定画面で「カメラロール即時アップロード」をオンにする。設定画面が表示されるので、アップロード先のアルバムを指定すると、写真が自動的にアップロードされるようになる。

 この機能でのポイントはアップロード先アルバムの許可設定だ。標準の「Public」のままだとアップロードした写真をほかのユーザーも閲覧できてしまうので、必ずPrivateでアクセスできるユーザーを制限するか、Passwordでパスワードを設定しておこう(それでもadminアカウントからは閲覧できてしまう点に注意。adminはセキュリティ的にもプライバシー的にも常用は避ける)。

AiMasterからアプリを追加可能。AiFotoの利用にはPhoto Galleryが必要
AiFotoからも同様に自動検出で簡単にAS1002Tを登録可能
カメラロール即時アップロードで、写真を自動的にアップロードできる
特定のWi-Fiに接続しているときのみアップロードすることなども可能
プライバシーを守るためにはアップロード先のフォルダーはPrivateかPasswordを選択しておく
アップロードされた写真は、AiFotoから参照できる

 なお、AiFotoでは、アップロードのタイミングに特定のWi-Fiを指定することが可能になっている。自宅のWi-Fiを登録しておけば、自宅に戻ったときだけアップロードするように設定可能だ。

 また、同期ではなく、アップロードとなるため、バックアップ的に利用することもできる。AS1002Tに写真をアップロード後、同じ写真をスマートフォンから削除してもAS1002T上の写真は削除されない。本体ストレージの空き容量が少ない場合は、写真をAS1002Tに退避後に本体から削除して、空き容量を確保するという使い方も可能だ。

 このほか、動画の再生も同様の方法で設定可能だ。動画の場合はLooksGoodアプリを利用するため、AiMasterから本体側にLooksGoodをインストールし、スマートフォンに追加したAiVideoアプリを使って接続すればAS1002T上の動画をスマートフォンで再生できる。

動画の閲覧にはLooksGoodが必要
AiVideoを利用してスマートフォンからNAS上の動画を再生できる

外出先からのアクセスにはPCからの設定が必要

 ここまで見事にPCレスで設定できたAS1002Tだが、残念ながら外出先からのアクセス環境を整えるときはPCからの設定が必要になる。

 AS1002Tでは、外出先からのアクセス設定を自動的に実行できるクラウドID、ルーターのポートフォワードなどの設定を自動的に実行するEz-Routerという機能が搭載されているのだが、この機能はiPhoneのSafariからは一部の設定が実行できなかった。

 PCでブラウザを起動し、「設定」の「簡単アクセス」にある「クラウド接続」で、あらかじめルーターの設定をEZ-Routerで設定後、外出先から接続するときに指定するクラウドIDを登録すればいい。

EZ-Routerでルーターを設定
クラウドIDを登録することで、外出先からアクセス可能になる

 ここまで設定できれば、スマートフォン側の設定は不要だ。AiMasterなどのアプリで自動検出で設定された接続先は「192.168.1.xxx」などとなっているが、クラウド接続をセットアップ後はアプリ側で設定を変更しなくても、そのまま外出先からAS1002Tに接続することができる(シリアル番号などで接続先が自動的に判断されていると予想される)。ユーザーに余計な再設定の手間を与えないあたりはよくできている。

AiMasterを使ってLTE経由でAS1002Tにアクセスしたところ。表示はローカルIPとなるが外出先からアクセス可能

 ただし、AiFotoを外出先から利用する場合は注意が必要だ。AiFotoのアクセス先となるPhoto Galleryアプリは標準でポート80を利用する。このため、ルーター自身やほかの機器など向けにルーター側で80のポートフォワードなどが設定済みの場合、そのままでは外出先からAiFotoが利用できない。

 設定画面でWebサーバーのポートを8088など別のポートに変更し、このポートに対してルーター側で通信を転送するための設定をEZ-Routerに適用しておくといいだろう。

AiFotoに外出先からアクセスできない場合はポートの設定を確認。必要に応じてWebサーバーのポートを変更
EZ-Routerで変更したWebサーバーへのポートフォワードをルーターに登録する
LTE経由でAiFotoで写真を参照している様子

OneDriveの同期も可能

 最後に、既存のクラウドサービスをAS1002Tと統合してみよう。ASUSTORのNASは、現状、数少ないOneDriveの同期に対応したNASだ。

 「DataSync for Microsoft OneDrive」というアプリを追加することによって、OneDriveのデータをAS1002T上の特定のフォルダーと同期させることができる。OneDriveのデータをバックアップしたり、使用頻度の低いデータをAS1002Tに退避させてOneDriveの容量を節約するといった使い方が可能となる。

 設定は、こちらもPCを利用する。App Centralから「DataSync for Microsoft OneDrive」をインストール後、設定したいユーザーで設定画面にログインし直し、デスクトップ上の「DataSync for Microsoft OneDrive」で同期の設定を開始。

 ウィザード形式で、Microsoftアカウントを登録し、同期するフォルダーを選択すれば、自動的にクラウド上のデータがAS1002Tにダウンロードされる(同期方向を設定可能)。もちろん、AiDataを使えばスマートフォンからAS1002T上のOneDriveのデータにアクセス可能だ。

 なお、AiDataアプリは、AS1002Tへの接続に加えて、Dropbox、Box、Googleドライブにも対応している。これらのサービスに関しては、AS1002Tとの同期ではなく、アプリ側から直接ファイルを操作することが可能となっている。

DataSync for Microsoft OneDriveでOneDriveとデータを同期可能
同期したフォルダーはAiDataから参照できる
DropboxやBox、GoogleドライブはAiDataから直接接続できる

スマートフォンでもNASを使う時代に

 以上、ASUSTORのエントリー向け2ベイNAS「AS1002T」をスマートフォンを中心に使ってみたが、初期設定から基本的な使い方まで、一部を除き、基本的にスマートフォンのみで操作が完結するため、スマートフォンからのデータ参照や写真のバックアップ、動画のストリーミングなどに適したNASと言えそうだ。

 もちろん、PCからの利用も快適なうえ、さまざまなアプリが利用できるため業務利用にも十分に対応できる。HDD故障時の交換が若干面倒だが、ドライバーを使わなくても作業できる点は、ほかのエントリーNASと比べてもアドバンテージがある。初めて導入するNASとしては、賢い選択肢と言ってよさそうだ。

清水 理史

製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できる Windows 10 活用編」ほか多数の著書がある。