清水理史の「イニシャルB」

4K再生もHyper-Transcodeも暗号化にも対応
3万円台で購入できる高性能NAS「ASUSTOR AS3102T」

 ASUSTORから、実売3万円台中程のリーズナブルな価格ながら、Celeron N3050を搭載した高性能NAS「AS3102T」が登場した。HDMI出力による4K再生やハードウェアトランスコード、同じくハードウェア暗号化にも対応するコストパフォーマンスの高い一台を実際に使ってみた。

コスパはかなり高い

 前回も触れたが、ASUSTORのNASを使うのであれば、ある程度の割り切りが必要だ。

 標準でインストールされるアプリは最低限となるうえ、設定もある程度の慣れが必要だし、一部機能は動作環境が限られるなど、ユーザー自身に「自分でなんとかする力」がある程度求められる。

 しかし、そんな点を差し引いても、魅力的に感じられる製品を投入してくるあたりは、さすがといったところだ。

 特に、今回登場したAS3102Tは、2015年12月時点の実売で、3万6000円前後で購入可能となっており、Celeronを搭載した比較的性能の高い2ベイのNASとしてはかなりリーズナブルな価格設定となっている。

ASUSTOR AS3102T。パフォーマンスの高いCeleron搭載2ベイNASながら、実売で3万円台とリーズナブルな製品

 他社製のNASの場合、Celeron搭載機はミドルレンジ以上のラインナップとなっており、実売価格で5万円を超えることもある。搭載されるCPUが異なるなど、他社製品と横並びで比較することはできないが、Celeron/Core iシリーズ搭載NASならではの特徴となる高速なスループットや動画のハードウェアトランスコード、AES-NIによるハードウェア暗号化などの機能を使えることを考えると、実売3万円台というAS3102Tのコストパフォーマンスは間違いなく高い。

 もちろん、いわゆるコストパフォーマンスだけを考えて購入すると、導入時にちょっと苦労するかもしれないが、ほんの少し、勉強する時間と手間をかけ、それを楽しむ余裕があれば、この製品に魅力を感じることができるだろう。

ケースを開けてHDDを搭載

 それでは、製品を見ていこう。前述した通り、本体は2ベイタイプのNASとなっており、小型で設置場所を気にしなくて済むサイズになっている。

 ケースは樹脂製だが、前面には、ASUSのルーターなどでもおなじみのダイヤモンドプレート加工が施されており、シンプルながらもスタイリッシュな印象があるデザインとなっている。

正面
側面
背面

 スペックは以下の通りだが、注目はCPUとメモリだろう。前述した通り、このレンジのNASとしては珍しくCeleronを搭載しているほか、メモリも標準で2GBも搭載しており、しかも2スロットを利用したデュアルチャネル構成となっている。

 ここまでするなら、個人的にはLANポートも2つ欲しかったが、そうでなくとも十分過ぎるほどのスペックだ。

CPU Intel Celeron 1.6GHz Dual-Core (burst up to 2.16GHz) Processor
RAM 2GB(Dual-Channel構成)
ハードウェア暗号化 ○(CPU)
ハードウェアトランスコード ○(CPU)
ベイ 2
最大容量 16TB(8TB×2)
USB 3.0 2
LAN 1000BASE-T
HDMI
消費電力 13.7W(動作時)

 HDDは、本体ケースを開けて内部に搭載するタイプとなっているが、ドライバーレスで開け閉めできるネジが採用されており、簡単に装着できる。このタイプは、HDDの故障時の交換が面倒だが、最近のHDDは耐久性も上がっているので、あまり頻繁に開け閉めすることもないだろう。

指で開け閉めできるネジを採用しているため本体を開けるのは楽
HDDを搭載したところ。こちらも同じネジだが、念のためドライバーでしっかり固定しておく方がいい

 初期設定は、付属のCDを利用した方法が標準となっているが、ネットワーク経由でもセットアップが可能。と言っても、AS3102Tを起動後、「http://start.asus.com」にアクセスしてユーティリティをダウンロードする方法となるため、実質的にはあまり変わらない(直接、AS3102Tの設定画面を表示してセットアップすることも可能)。

 設定そのものはウィザードを進めていくだけと簡単だが、1点注意が必要なのはRAIDの構成。標準でRAID0(最大容量)の構成となっているため、冗長性を考えるとRAID1(バランスが取れている)に変更しておきたい。わかりにくい文言を含め、ここはぜひ改善を検討していただきたいポイントとなる。

付録のCDからユーティリティを使ってNASを発見し、そこからセットアップする方式
若干、わかりにくいが、RAID1で使うなら「バランスが取れている」を選択する必要がある。標準は最大容量なので要注意

最初にインストールしておくべきアプリはこれ

 初期設定が完了すれば、ファイル共有など最低限の機能が利用可能になるが、もちろん、そこで終わってしまっては、せっかくのAS3102Tの性能を生かすことができない。本製品の特徴の1つでもある4K動画の再生や動画のトランスコードなどの機能を使うには、アプリの追加が必要だ。

 ASUSTORのNASでは、標準で最低限のアプリしか導入されておらず、メディア再生など、ほとんどの機能はアプリを追加しないと利用できない。ブラウザで設定画面にアクセス後、「App Central」を起動するとアプリを参照できるので、必要なアプリをインストールしておこう。

セットアップが完了すればファイル共有などにすぐ利用できるが、インストールされるアプリは最低限

 個人的には、取りあえず以下のアプリをインストールしておくことをオススメする。

・AVAST
  ただし、無料ライセンスは1年のみなので注意
・ASUSTOR Portal
  HDMI出力で画面を表示するために必要
・KODI
  HDMI出力した際にNAS上のメディアを再生するために必要
・DataSync for Microsoft OneDrive
  OneDriveとの同期(必要に応じてdropbox/GoogleDriveも)
・LooksGood
  動画の再生やトランスコードに必要
・UPnP v2
  DLNA対応テレビからNAS上のメディアを再生するのに必要
・PhotoGallery
  写真の管理に必要

 ここまでインストールしておけば、大抵の用途には対応できるはずだ。なお、上記アプリをインストールすると、JAVAやFFmpegなど依存関係にあるアプリも自動的にインストールされる。さすがに、そこまで要求されるわけではないので安心してほしい。

アプリは「App Central」からインストールする。少なくとも上記リストのアプリはインストールしておきたい

動画再生機能をテスト

 それでは、本製品の特徴である動画関連機能を試してみよう。まずは、4K動画のローカル再生だが、前述したアプリのうちASUSTOR PortalとKODIをインストールすることで利用可能になる。

 ASUSTOR Portalをインストールすると、背面のHDMIからテレビやディスプレイに画面が出力されるようになり、KODIによってNAS上のメディアを再生することが可能になる。

HDMI経由でテレビに画面を表示し、メディアを再生することが可能

 テストとして、4K動画をいくつか再生してみたが、H.265に関しては若干スムーズさに欠ける印象があったが、H.264の動画に関しては何の問題もなくスムーズに再生することができた。

 KODIのリリースノートを見ると、「HEVC (H.265) is used for software transcoding playback」と記載があるので、現状のKODIでは処理が追いついていない印象だ。再生したい形式に注意が必要と言えそうだ。

 続いて、注目のトランスコード機能を試してみよう。アプリの紹介でも触れたが、動画のトランスコードはLooksGoodと呼ばれるアプリを利用する。

 設定画面からLooksGoodを起動すると、TV録画、メディアエクスプローラー、メディアコンバーターという3つの機能が表示される。TV録画は別途TV受信用ドングルが必要で、国内では対応できないため、実質的には後者2つの機能を利用することになる。

 メディアエクスプローラーはNAS上の動画を表示してブラウザ上で再生できる機能だ。再生にVLCを利用する仕様となっており、そのプラグインが動作する環境でしか利用できないため(EdgeやChromeなどの最新のブラウザはこういったプラグインが排除される傾向にある)、サポートされるのは現状Firefoxのみとなっているが、手軽にメディアを再生することが可能だ。

 なお、LooksGoodをインストールしておけば、スマートフォンなどからも「AiVideo」アプリを利用して動画を再生することが可能だ。ここまでいろいろな機能から使うのであれば、「初期設定時にでも自動的にインストールしてくれればいいのに……」とも思えてしまう。

動画関連の機能を利用するには「LooksGood」が必要
スマートフォン用アプリ「AiVideo」で動画を再生可能。これにもLooksGoodが必要になる

 肝心のトランスコード機能だが、LooksGoodの「メディアコンバーター」からファイルを指定して追加するか、「メディアエクスプローラー」からファイルを選択して変換タスクに追加するか、いずれかの方法で利用できる。

 実際に、4GBほどのMEPG2TS動画(30分、フルHD)を480Pに変換してみたところ、変換にかかった時間は約27分と、若干ながら実再生時間よりも短い結果が得られた。ソフトウェアのみでのトランスコードでは、数時間かかってしまうケースもあるので、やはりこの恩恵は大きいと言えそうだ。

 この機能は、Hyper-Transcodingと呼ばれ、Intel CPUのハードウェアアクセラレーションを活用するものの、その実装にはASUSTOR独自の機能が採用されている。最大で通常の変換時間の10分の1にまで短縮できるとされているので、大量の動画を保有していおり、それをスマートフォン向けなどに変換したい場合などは重宝するだろう。

CPUのアクセラレーションを利用して動画を高速に変換可能

フォルダーを暗号化しても高速

 もう1つ、Intel CPUを採用したことで恩恵があるのは、セキュリティのために暗号化したフォルダーに対しても、高速にアクセスできる点だ。

 そもそも、フォルダー単位で気軽に暗号化を利用できる点もASUSTORのストレージの特徴の1つではあるが、この機能を利用してもアクセス速度の低下に悩まされずに済む。

 通常、NASには、HDDが盗難された場合などに備えて、ボリュームやフォルダーを暗号化しておく機能が搭載されているが、この機能はNASのスループットを大幅に低下させる場合がある。もともとのNASの性能にもよるが、特別なアクセラレーションがない状態では、AESによる暗号化による負荷が高くなるため、10数MB/s前後にまでスループットが落ち込む場合もある。

 これに対して、AS3102Tでは、Intel CPUで採用されているAES暗号化アクセラレーション機能のAES-NIを利用可能になっており、大幅にスループットを向上させることができる。

フォルダー単位で暗号化を設定可能

 実際、暗号化なしのフォルダーと暗号化したフォルダーのスループットを比較したのが以下の画面だ。暗号化なしでシーケンシャルで110MB/sを超える速度もこの価格帯のNASとしては考えられないほど高速だが、暗号化ありでもシーケンシャルのリードはほぼ同じ110MB/s越えを実現し、ランダムリードとライト全般が若干低下している程度に抑えられてる。

CrystalDiskMarkによる測定結果。暗号化なしの結果(左)と暗号化ありの結果(右)

 もともとパフォーマンスの高さが特徴の製品ではあるが、実測もそれを裏切らない見事な値となっている。コストパフォーマンスの高さは、まさに一級品だ。

 マイナンバーなど、重要な情報を保存する可能性があることを考えると、ビジネスシーンで利用するなら、こういった暗号化対応のNASを積極的に選ぶべきだろう。

 以上、ASUSTORのAS3102Tを実際にテストしてみたが、同社らしい自作感はあるものの、非常に高いパフォーマンスを実現するNASと言える。この性能が3万円台で購入できるのであれば、確かにお買い得だ。HDMI出力でメディアの再生にも利用できるため、テレビの横などに設置しておくメディアプレーヤー兼NASとして高い利用価値があると言えそうだ。

清水 理史

製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できる Windows 10 活用編」ほか多数の著書がある。