清水理史の「イニシャルB」
ハードウェアRAID搭載で高速化されたTeraStation WSH5610DNS2
(2016/4/11 06:00)
Buffaloから法人向けNASの新製品「TeraStation WSH5610DNS2」シリーズが登場した。従来製品に比べ、パフォーマンスと信頼性が大幅に向上した上位モデルだ。国産NASならではのメリットも含め、その特徴に迫ってみた。
信頼の国産NAS
HDD、それもNAS向けHDD(WD red)が標準搭載されるうえ、そのHDDも含めた保障が3年もあり、サポートや各種情報収集にも困らない。
低価格で高性能な海外製のNASがいくら話題になっても、国産NASの優位性はまだまだ変わらない。
そんな中、Buffaloから登場したのが、今回取り上げる法人向けNASの新製品「TeraStation WSH5610DNS2」シリーズだ(以下WSH5610DNS2)。6ベイのデスクトップタイプの筐体を採用したNASで、OSとしてWindows Storage Server 2012 R2 Standardを搭載した製品となっている。
同社では、同じく6ベイのWindows Storage Server 2012 R2 Standard搭載製品として、これまで「WS5600DNS2」シリーズを提供してきたが、今回のWSH5610DNS2は、その上位に位置するトップレンジモデル。
従来モデルとの大きな違いは、ハードウェアの刷新。CPUがデュアルコアのAtomからクアッドコアのCeleronに変更されているうえ、RAIDの方式が従来のソフトウェアからハードウェアへと変更されている点だ。
国産NASならではの安心感はそのままに、ハードウェアの刷新によって、より高いパフォーマンスを実現することに成功している。
WSH5610DNS2 | WS5600DNS2 | |
CPU | Intel Celeron J1900クアッドコア 2.42GHz | Intel Atom デュアルコア2.13GHz |
メモリ | DDR3 4GB | DDR3 4GB |
OS | Windows Storage Server 2012 R2 Standard | Windows Storage Server 2012 R2 Standard |
RAID | ハードウェア | ソフトウェア |
LAN | 1GbE×2 | 1GbE×2 |
USB | USB 3.0×1/USB 2.0×2 | USB 3.0×2/USB 2.0×2 |
UPS | D-SUB9pin×1 | D-SUB9pin×1 |
eSATA | 1 | × |
HDMI | 1 | × |
ハードウェアRAIDを採用
それでは、製品を見ていこう。
HDDを横方法へと並べる海外製のNASと異なり、本製品は縦に積み上げる方式となっていることから、サイズ感としては、どちらかというと縦長の印象。と言っても、サイズは幅170×高さ260×奥行き230mmと十分にコンパクトで、設置場所に困ることはない。
筐体も法人向けモデルらしく、堅牢なつくりで、不快な振動や音の原因になりそうな立て付けの悪さなどは一切見られない緻密さが感じられる。HDDを収納するベイもロック付きのフロントカバーで閉じられており、セキュリティ面にも配慮されている。
デザインは、一見、従来のWS5600DNS2シリーズと同じに見えるが、前述したスペックのように背面のインターフェイスが一部異なるうえ、全面に搭載されているディスプレイのバックライトも従来の青系から白系に変更され、非常に見やすくなった。
ハードウェア面での最大の注目は、やはりハードウェアRAIDの採用だ。製品情報サイトによると「国内開発」されたとされるハードウェアRAIDチップが新たに搭載されており、バックアップやウイルスチェックなどのソフトウェアの実行時、CPU負荷を約半分ほどに低減されたほか、バックアップ時間を約半分(1TBで約12時間が6時間以下)まで短くできることなどが紹介されている。
実際にストレージのパフォーマンスを、ソフトウェアRAIDの従来モデル(WS5600DNS2)と比較してみると確かに速い。
まずは、ローカルでのパフォーマンスを計測してみた。
リードはシーケンシャルランダムともに従来モデルのWS5600DNS2が有利だったが、ライトはWSH5610DNS2がシーケンシャルで200MB/sを楽々超えており、WS5600DNS2の2~5倍と大差をつけた圧勝となっている。
テスト時のCPU負荷についても明確に差がある。WSH5610DNS2は、テスト中でもCPU負荷が一桁台で済んでいるのに対して、WS5600DN2は30%前後も負荷がかかっている。
ここまで差があると、製品情報サイトの情報通り、バックアップやウイルスチェック時、RAIDのリビルド時のパフォーマンスやCPU負荷が優秀なのも納得できるところだ。
続いて、ネットワーク経由でのパフォーマンスを計測してみた。
通常の共有フォルダに対してのアクセスに関しては、ネットワークがボトルネックになるため、ほぼ同等と言えるが、若干ながらWSH5610DNS2のほうが書き込みが高速となる。大容量ファイルの書き込みやバックアップなどは、やはりWSH5610DNS2が有利と言っていいだろう。
ネットワーク経由のアクセスで、大きな差が表れるのは、暗号化フォルダに対してのアクセスだ。
こちらは、CPU性能の違いも大きく影響しているが、WSH5610DNS2が暗号化フォルダに対しても通常フォルダと大差ない速度でアクセスできているのに対して、WS5600DNS2は値を大きく落としている。
マイナンバーの取り扱いも開始され、法人用途では暗号化されたデータを取り使う機会が増えている。こういった点を考えると、高速化されたWSH5610DNS2のメリットは大きいと言える。場合によっては、WS5600DNS2からの買い替えを検討してもいいほどだ。
RAID6を使える
このように、パフォーマンス面で大きな改善がなされたWSH5610DNS2だが、ハードウェアRAIDの採用によって、信頼性という面でも大きく進化している。具体的にはRAID6の採用だ。
従来のRAID5では、1台のHDDが故障したとしてもデータを保護することができたが、2台同時に故障した場合には対応することができなかった。もちろん、2台同時にHDDが故障する確率は高くないが、1台のHDDが故障し、そのリビルド中に他のHDDに負荷がかかり、それがきっかけとなって別のHDDが故障するケースは意外に多い。
対してRAID6であれば、最大2台のHDDが同時に故障したとしても対応することができる。RAID5のようなリビルド中の悲劇を回避できるのは大きなメリットと言っていいだろう。
なお、上記画面を見てもわかる通り、WSH5610DNS2では、ディスクの使い方も大きく変わっている。従来モデルは、フロントベイに装着された6台のHDDをシステムパーティションとデータパーティションに分割していたが、WSH5610DNS2ではフロントベイのHDDはすべてデータ領域として確保し、システム用には別途120GBほどのSSDが搭載されている。
この結果、フロントベイのHDDの容量を余すことなくデータ領域に使えるようになったうえ、起動やOSの動作もSSDによって大幅に高速化された。
既存システムとの連携させやすい
以上、Buffaloの新型NAS「WSH5610DNS2」シリーズを実際に使ってみたが、従来モデルからかなり良くなっている印象だ。
海外勢のLinux搭載NASと異なり、Windows Storage Server 2012 R2が搭載されている点も国内の法人市場ではメリットが大きい。Active Directoryと連携させたり、既存のWindows Server搭載ファイルサーバーからのリプレイスも容易だ。価格は12TBモデルで40万円超えと、さすがに高いが、充実したサポート含め、こういった安心感は他に代えがたいメリットだ。
中小規模といっても比較的大規模よりの環境からエンタープライズまで、比較的ハイエンドの環境に適した製品と言えそうだ。