第154回:迷惑メール対策&メール管理にオススメ
文章の内容でメールを自動振り分けする「POPFile」
日々増え続ける迷惑メールにうんざりしている人にオススメしたいのが、メールの自動振り分けツール「POPFile」というソフトウェアだ。驚異的な「賢さ」で、迷惑メールだけでなく、用途ごとにメールを的確に振り分けられる。その使い方を紹介しよう。
●迷惑メール対策に有効なPOPFile
迷惑メール対策は、ウイルス対策ソフトやメールソフトで実施できるが、個人的な感想としては、どれもいまひとつ使いにくい印象がある。動作速度が遅くてメールを受信するたびにイライラすることがあったり、迷惑メールがフィルタ設定をすり抜けて受信トレイに入っていることも多かった。
そんな中、筆者が有効な迷惑メール対策と感じているのが、今回取り上げる「POPFile」だ。迷惑メール対策だけでなく、メールをさまざまな設定に従って自動的に振り分けることができるツールだが、その的確な判断力に非常に高い評価を受けている。
実際の使い方を紹介する前に、その実力のほどを紹介しておこう。筆者はPOPFileを使うようになって4カ月ほどが経過するが、今では限りなく100%に近い精度で迷惑メールを自動的に排除できるようになった。POPFileもほかの迷惑メール対策同様、導入当初は迷惑メールと通常のメールを判断させるためのトレーニングが必要だが、1週間も使えば、90%近い精度で迷惑メールと普通のメールを的確に判断できるようになる。
筆者宅で実際に使用しているPOPFileの精度。4カ月ほど経過した時点での精度は97.82%。トレーニングをきちんと行なえば限りなく100%に近い精度での分類が可能 |
これにより、今では届いた迷惑メールは目に触れることなく、受信と同時に「ごみ箱」へと移動されるようになった。なお、ごみ箱への移動はメールソフト側の設定を併用して、自分で振り分けを行なっている。
もちろん、POPFileも完全とは言えず、まれに受信トレイにすり抜けてくる迷惑メールもあるのだが、その頻度は月に1通あるかないかだ。ほかの迷惑メール対策では、検出ミスの度に学習させるのが面倒だが、POPFileの場合、そもそも検出ミスが少ないので、学習させる行為も楽に感じる。
筆者が外部に公開しているメールアドレスに届いた迷惑メール。POPFileのおかげで、最近ではほとんど目に触れずにごみ箱へと直行するようになった |
●分類によってメールを効率的に管理できる
個人的にPOPFileで気に入っているのは、前述した迷惑メール対策だけでなく、用途によってメールをさまざまなカテゴリ(POPFileではバケツと呼ぶ)に分類できる点だ。
たとえば、筆者は友人から届いたメール向けの「personal」、仕事のメール向けの「work」、買物やID通知のメール向けの「shopping」、広告メール向けの「advertise」、迷惑メール向けの「spam」、そのほか分類が難しいメール向けの「other」という6つのバケツを作成して、POPFileでメールを分類している。
POPFileでは、メールを分類するカテゴリを「バケツ」と呼ぶ。分類したい用途ごとにバケツを作成しておけば、それに従って受信メールを分類できる |
このように分類したメールは、件名の前に「[work]」などとバケツ名を付け加えることもできるが、「X-Text-Classification:work」といったように、ヘッダに分類情報を付加することも可能だ。これを利用してメールソフト側で用途ごとにメールを分類すると、件名に余計な文字を追加することなくメールを効率的に管理できる。
件名にバケツ名を表示することも可能だが、返信するときなどに「Re:[work]」などとなるため、ヘッダ情報で分類するのが現実的 |
筆者の場合、POPFileで分類したメールをフォルダに自動分類すると見落とす可能性があるので、Thunderbirdのラベル機能を利用して、用途ごとにメールを色分けするという使い方をしている。具体的には、広告メールなど重要度の低いメールをグレーに設定し、仕事のメールをブルーに、買物のメールをピンクで表示するように設定している。こうすると、見ても見なくてもいいメールはグレーであまり目立たなくなり、仕事のメールや買物のメールといった重要なメールが受信トレイの中でひと目でわかるようになる。
POPFileで分類されたメールをThunderbirdのラベル機能を利用して色分け。こうすると、仕事などの大切なメールが目立つようになり、メールの処理が非常に楽になる |
実は、POPFileを利用して初めて気がついたのだが、筆者の場合、仕事で利用しているメールアドレスにはあまり迷惑メールは届かない(外部に公開しているアドレスは迷惑メールだらけだが……)。どちらかというと、ショッピングサイトからの広告、メーカーからのニュース、各種ニュースサイトからのダイジェストメールなどが圧倒的に多い。
ほかの迷惑メール対策の場合、メールを迷惑メールか普通のメールかという二者択一でしか判断できないため、こういった広告、お知らせ系のメールをどのように判断させるかが難しい。迷惑メールとして削除するわけにもいかないし、かといって受信トレイに大量にあふれかえると肝心の仕事のメールなどが埋もれてしまうことになる。
しかし、POPFileとThunderbirdの色分けを併用すれば、メールを用途ごと的確に分類し、それを見やすく整理することがカンタンに可能だ。メールの処理に1日のうちのかなりの時間が費やされることも珍しくないが、このような使い方をしてから、メールの処理が楽になり、さらに後で返事をしようと思っていた仕事のメールを探すことなども簡単にできるようになった。
●設定は簡単とは言えない
このように、非常に高い精度で迷惑メールを判断し、さらに用途ごとにメールを的確に分類できるPOPFileだが、欠点もいくつかある。まずは、導入が決して簡単とは言えない点だ。
もちろん、POPFileのインストール自体はさほど難しくない。POPFileのホームページから、ファイルをダウンロードし、インストールするだけでいい。日本語のドキュメントも用意されている上、言語で「Nihongo」を選択すればプログラム自体も日本語で利用することができる。
問題はインストール後の設定だ。ウィルス対策ソフトやメールソフトの迷惑メール対策機能と異なり、POPFileの場合、バケツの設定やメールソフトの設定などをすべて手動で行なう必要がある。まずは、「http://127.0.0.1:8080」にアクセスしてバケツの設定を行なう。前述したように筆者は6つのバケツを用意したが、用途に応じてバケツを登録しておこう。
ただし、バケツの数が多くなるほど、トレーニングに時間がかかり、検出ミスも多くなる。たとえば、筆者の場合、メーカーからのニュースリリースが多く届くが、これを広告/お知らせメール用の「advertise」に分類するか、仕事用の「work」に分類するかは微妙な判断だ。バケツが多ければ多いほど、細かな分類が可能だが、それをPOPFileに判断させる(POPFileではメール内に含まれる単語によってメールをバケツに分類する)ためのトレーニングはきちんと行なう必要がある点に注意しよう。
POPFile側の設定が完了したら、メールソフトの設定を変更する。POPFileでメールを分類するためには、POPFile経由でPOPサーバーにアクセスする必要がある。このため、メールアカウントの設定で、サーバーに「127.0.0.1(ローカルホスト)」を指定し、アカウントも「xxxxx.ne.jp:username:apop」のように変更する必要がある(apopを利用しない場合は最後の「:apop」は不要)。
POPFileを利用する場合、メールソフトからPOPFile経由でPOPサーバーにアクセスするように設定する必要がある。メールサーバーやメールアカウントをPOPFile用に変更しておく必要がある |
ここまでできれば、POPFileを利用したメールの分類が可能だ。メールソフトでメールを受信すれば、POPFile経由でメールを受信し、設定したバケツにメールが分類される。これも前述したように導入後1週間程度は検出ミスが多いので、「http://127.0.0.1:8080」にアクセスして、間違った分類をした場合は正しいバケツを指定してトレーニングしていく必要がある。
トレーニングは、POPFileの設定ページ(http://127.0.0.1:8080)から行なう。受信したメールの一覧が表示されるので、間違ったバケツに分類されたメールを正しいバケツへと分類し直す |
●使い込めば欠点が気にならないほど便利になる
このほか、動作速度が遅いのも気になる点だ。POPFileはPerlで記述されたプログラムであり、複数アカウントや大量のメールを受信をしようとすると、それなりに時間がかかる。がまんできないほどではないが、メールの受信を開始してから、ワンテンポ遅れてメールが受信されるようなイメージで、決して軽快とは言えない。
とは言え、迷惑メールから解放され、さらにメールを効率的に管理できることを考えると、このような欠点もさほど気にならなくなる。使い込めば使い込むほど便利になるソフトウェアと言えるので、迷惑メールやメールの処理を効率的に行ないたい場合は利用を検討してみるといいだろう。
関連情報
2005/7/5 10:53
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