第180回:DLNAガイドライン製品に対応したテラ容量のLAN接続型HDD
バッファローの「HS-D1.0TGL/R5」



 バッファローから発売されているRAID5対応の大容量LAN接続ハードディスク「TeraStation」に、DLNAガイドライン製品に対応した新モデル「HS-D1.0TGL/R5」が登場した。1TBという大容量とメディアサーバー機能を活かして、さまざまなメディアを手軽に共有できる点が特徴だ。早速、その機能を検証してみよう。





従来製品をベースにメディアサーバー機能を搭載

HS-D1.0TGL/R5

 バッファローから新たに発売された「HS-D1.0TGL/R5」は、RAID5に対応したLAN接続ハードディスクだ。同様の製品は「TeraStation」シリーズとして従来から発売されていたが、今回の製品は「HD-H1.0TGL/R5」をベースとし、DLNAガイドライン機器からのアクセスを可能にするメディアサーバー機能が搭載されているのが特徴だ。Linkstationシリーズの「HD-HGLAN」に対する「HS-DGL」のような位置付けの製品と考えて良いだろう。

 このため、メディアサーバー機能以外の点については、基本的には従来のTeraStationシリーズと同等だ。本体内部に250GBのハードディスクが4台内蔵されており、これをRAID構成(標準ではRAID5)で利用することで、合計1TB(RAID5の場合、実質的に利用可能な容量は750GB)の大容量を実現し、万が一の障害の際でもデータの復旧が可能となっている。このほかの仕様も、ギガビットイーサネットへの対応、4ポートのUSBなど大きな違いはない。

 なお、TeraStationシリーズには、フロントベイからのハードディスク交換に対応した高信頼設計モデルの「TS-TGL/R5」も存在するが、今回のHS-D1.0TGL/R5は通常のTeraStationシリーズとほぼ同じ筐体を採用しており、ハードディスクの交換の際はケースを開けて内部へアクセスする必要がある。ビジネスシーンでの短時間での障害復旧は難しいため、本製品は家庭向け、それもハイエンドホームユーザー向けの製品と考えて良いだろう。





メディアサーバー機能でDLNAクライアントからアクセス可能

 では、肝心のメディアサーバー機能について見ていこう。設定画面の構成に若干の違いはあるものの、基本的な機能はLinkstationの「HS-DGL」シリーズとまったく同じだ。PCからブラウザを利用してHS-D1.0TGL/R5の設定画面にアクセス、「PCast」という項目を選ぶことでメディアサーバーの設定が可能になる。


メディアサーバーの設定画面。機能を有効にし、公開するフォルダとアクセス制限機能を設定すればDLNAクライアントからのアクセスが可能になる

 メディアサーバーで他の機器に公開するフォルダを選択し、DLNAクライアントからのアクセス制限機能を無効、もしくは有効にして接続する機器を選択すれば、DLNAガイドラインに対応したメディアプレーヤーなどからフォルダ内の画像、音楽、映像データをネットワーク経由で参照できる。

 今回、テストとしてデジオンの「DiXiM Media Client」と富士通製のノートPCに搭載されてた「MyMedia(DiXiMベース)」を利用してアクセスしたが、問題なくHS-D1.0TGL/R5をサーバーとして認識し、メディアファイルを再生できた。パフォーマンス的にも問題なく、試しに3台のクライアントから接続し、それぞれ別の映像(8Mbpsで録画したテレビ番組)を同時に再生してみたが、どのクライアントも映像がコマ落ちすることなどなく、スムーズに再生できた。


DiXiM Media Client(左)とMyMedia(右)。どちらからも問題なくサーバーを参照でき、各種メディアファイルを再生することができた

 ただし、共有できるデータは、クライアントの種類によって異なる。今回利用したDiXiM Media ClientやMyMediaは比較的多くのメディアに対応しており、MPEG-2、WMV、AVI、ASFなどの映像(ASFはMyMediaのみ対応)、JPEG画像、リニアPCM(WAVE)、MP3、WMA形式の音楽と、ほとんどのメディアファイルを再生できたが、これ以外のソフトウェアやハードウェアをクライアントとして利用した場合、ファイル形式によっては再生できない場合もある。どのクライアントがどのようなファイルの再生に対応しているかは、バッファローの製品情報ページで公開されているので、事前によく確認しておくと良いだろう。





TVキャプチャユニットを4台まで接続可能

 とは言え、ここまでの使い方であれば、Linkstation「HS-DGL」シリーズでも同様に可能で、使い勝手にさほど大きな違いはない。では、HS-D1.0TGL/R5を選ぶ理由はどこにあるのだろうか?

 ひとつはもちろんハードディスクの容量だ。前述したように、HS-D1.0TGL/R5では1TB(750GB)という大容量を実現しており、1ファイル2~3GBにもなるような映像データも空き容量を気にせず、次々に放り込んでおくことができる。複数のユーザーによるファイル共有にも使うことを考えても、この大容量は心強いだろう。

 また、本体にUSBが4ポート搭載されており、同社製のTVキャプチャユニット(PC-MV7DX/U2、PC-MV71DX/U2、PC-MV51DX/U2、PC-MV52DX/U2)を最大4台まで接続し、4番組の同時録画ができるのもHS-D1.0TGL/R5ならではのメリットと言える。これにより、複数テレビ番組の録画と公開をPCレスで1台で完結できる。

 個人的には4台接続する必要性はあまり感じないのだが、2台のTVキャプチャを接続し、さらにバックアップ用のUSBハードディスク、プリンタの共有という使い方ができるのは、なかなか実用的と言えるだろう。





RAID5ならではのパフォーマンス特性

 ちなみに、ファイルサーバーとして利用したときのパフォーマンスだが、RAID5ならではの特性が若干ながら表れている。テストとして、PCから約2GBのファイルをコピーしてみたのが以下のグラフだ。

製品アクセス方法時間(分)
LinkStation読み込み02:39.4
書き込み03:31.3
TeraStation読み込み02:15.3
書き込み03:46.4
クライアントにはAthlon64 X2 3800+、RAM1GB、HDD300GB(S-ATA)搭載PCを使用
※copyコマンドとtimeコマンドを利用したバッチファイルを作成し、1.88GBのMPEG2ファイルコピーに要した時間を計測


 比較対象として、個人的に利用しているHS-D250GLでも同じテストをしてみたが、ファイルの読み込みはHS-D1.0TGL/R5の方が若干高速なものの、書き込みに関してはHS-D250GLの方が速いという結果になった。おそらく、データの冗長性を確保するためにパリティの計算やその書き込みなどがボトルネックになっているからであろう。

 ただし、前述したように録画したテレビ番組などの大サイズのデータは、USB接続したTVキャプチャユニットによってローカルで完結するため、PCから転送する機会はあまりない。文書や画像などといったサイズの小さなデータであれば、書き込みの速度差も小さくなるので、むしろデータの読み込みが速いというメリットが活きてくるだろう。

 なお、HS-D250GLではメディアサーバーで公開しているフォルダに対してデータを書き込むと極端に書き込みが遅くなることを、以前にも本コラムで指摘したが、今回のHS-D1.0TGL/R5では、少なくとも今回のテスト中はこのような現象は発生しなかった。たまたま発生しなかったのか、ファームウェアなどの改善によるものなのかは判断できないが、比較的安定したアクセスができたのは好印象であった。

 また、今回試用した製品は評価用の製品となるため、一部、製品版と仕様が異なる。このため、上記の結果はあくまで参考として考えて欲しい。





コストパフォーマンスは高いがあくまでハイエンドユーザー向け

 このように、HS-D1.0TGL/R5は大容量と高い信頼性を備えながら、さらにメディアサーバー機能の搭載で使いやすさまでも兼ね備えたLAN接続型ハードディスクと言える。ただし、やはり価格を考えると手軽に購入できるというものでもない。

 HS-D1.0TGL/R5の価格は、108,400円(参考価格)と10万円を越えてしまう。確かに容量を考えれば、HD-DGLシリーズの250GBモデル(33,800円)を4台購入するよりお得なので、コストパフォーマンスは優れているのは確かなのだが、なかなか手が出せる金額ではないだろう。

 また、動作音も若干気になった。ファンの音などはかなり静かになっているのだが、さすがにハードディスクが4台搭載されていることから、振動と低い共鳴音が気になってしまう。万人向けというよりも、あくまでも1TBという容量と3台以上の複数チューナーを利用する必要があるハイエンドユーザー向けと言えるだろう。


関連情報

2006/1/17 10:54


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。