第209回:どこでも「03」番号を使える電話の新形態
プラネックスの電話機能搭載無線LANルータ「通話王(BLW-54VP)」



 「通話王」という個性的なネーミングが特徴のプラネックスの無線LANルータ「BLW-54VP」。その名の通り電話機能を搭載しており、アナログポートに接続した電話機で03番号の電話機能を手軽に利用できるのが特徴だ。持ち運びができるようにも工夫されており、どこでも03番号が使える面白い製品だ。





わかりやすいネーミングで親しみやすくなったプラネックス製品

通話王(BLW-54VP)

 「電波王」に「動画王」、そして今回の「通話王」と、ここ最近、個性的なネーミングの製品を次々とリリースしているプラネックス。以前は、どちらかというと堅いイメージがあったメーカーだが、よりコンシューマーを意識した方向性と言おうか、ハードウェアとサービスを融合させた方向性と言おうか、新たな方向性へと変化しつつあるようだ。

 ここ数年で一般的な家庭でもFTTHのような高速なインフラの整備が急速に進み、ルータや無線LANなどの機器がレンタルで提供されるようになった今、コンシューマーユーザーがネットワーク機器に何らかの興味を示すには、その製品にしかない特徴が必要になってくる。もともとネットワーク機器の機能は一般ユーザーに理解されにくい技術的なものが多かったが、このようにキャッチーなネーミングで、何ができるのかを明確にした製品が登場したことは歓迎すべきことだろう。

 そういった意味では、今回発売された「通話王」も何ができるのかが非常にわかりやすい製品だ。基本的にはIEEE 802.11b/gに準拠した無線LANルータだが、インターネット電話機能を搭載しており、アナログポートに接続した電話機で03番号を利用したインターネット電話が利用可能となっている。電話機能を搭載したルータはヤマハやアイコムからも発売されているが、企業向けがほとんどでコンシューマー向けの製品は珍しいだろう。


本体サイズをタバコで比較。背面にはLAN/WANポート、電話機/電話回線ポートを搭載




同社の「CyberGate Phone」サービスを利用

 それでは電話機能についてもう少し詳しく見ていこう。電話機能を利用するには、まずサービスへの加入が必要だが、基本的には同社が提供している「CyberGate Phone」と呼ばれるインターネット電話サービスを利用する。

 このCyberGate Phoneは、ソフトフォンで利用するタイプのサービスとしてすでに提供が開始されており、エムトゥエックスのサービスを利用することで03番号が利用できる。ユーエフネットの「G-LEX」、フュージョン・コミュニケーションズの「FUSIONフォンP'」など、最近ではインターネット経由で電話番号を使えるサービスが増えてきているが、これらCyberGate Phoneも仕組み的には同様のサービスとなる。

 このため、通話王で電話機能を利用するにはあらかじめCyberGate Phoneへの登録が必要になる。ホームページから無料プラン(内線番号のみの会員間通話サービス)に登録後、オプションサービスの「どこでも03従量通話オプション」の契約を行なう(初期費用1,000円、基本料500円/月、国内8.4円/3分)。これで「03」から始まる番号が割り当てられ、一般加入電話などとの間の発着信が可能となる。


プラネックスが提供しているIP電話サービス「CyberGate Phone」。オプションサービスを申し込むことで「03」番号を利用した発着信が可能。もともとはソフトフォンを利用したサービスとなっており、PC上でも利用できる

プラネックスが提供しているIP電話サービス「CyberGate Phone」。オプションサービスを申し込むことで「03」番号を利用した発着信が可能。もともとはソフトフォンを利用したサービスとなっており、PC上でも利用できる

 CyberGate Phoneの契約が完了したら、このユーザー情報を通話王に設定する。ルーターの設定ページを表示後、VoIPサービスの設定画面を表示し、指定されたSIPサーバーのアドレスやユーザーID、パスワードなどを登録する。詳細な設定方法についてはCyberGate Phoneのホームページに掲載されているので、これを参考に設定すると良いだろう。


申し込み後に割り当てられるユーザーID(内線番号)や03番号、パスワードなどを通話王に登録。これで、アナログポートに接続した電話機で03番号を利用可能となる

 これでアナログポートに接続した電話機で03番号を利用した電話が使えることになる。実際にテストしてみたが、一般加入電話や携帯電話との間の発着信が問題なく行なえたほか、音質も問題ないと感じられた。SIPサーバーなどの情報を設定するのが若干面倒な印象があるが、一度設定してしまえばあとは快適だ。

 なお、今回はCyberGate Phoneのサービスを利用したが、設定を変更すれば、汎用的な050番号サービス、他のインターネット電話サービスでの利用も可能だ。ただし、他のサービスを利用する場合はサーバー名などの設定情報が公開されている場合に限られる。また、SIPの細かな設定の問題などでうまく接続できない場合などもあるので、必ずしもすべてのサービスで利用できるとは限らない。基本的には、やはりCyberGate Phoneで利用するためのものと考えるべきだろう。





持ち運びを前提にした工夫

 このように通話王を利用することで、インターネット接続、無線LANの利用、そして03番号を使った電話が利用できるわけだが、通話王の最大の特徴は、これらの環境を持ち運べる点にある。

 通話王の筐体は非常にコンパクトな設計で、まさに手のひらに収まるほどのサイズとなっている。このため、家庭内に設置してインターネット接続やIP電話に利用するという使い方はもちろんのこと、通話王を持ち運んで外出先で利用することも可能だ出張時などに「通話王」を持ち運び、ホテルなどインターネット回線に接続することで、ノートパソコンから有線/無線でインターネットに接続できるようにしたり、前述したCyberGate Phoneを利用して03番号の電話を利用することが可能となる。

 アナログポートに接続する電話機も必要なことを考えるとソフトフォンを使った方が便利だが、長期の滞在などというケースでは通話王の方が快適だろう。また、通話王には海外で利用するためのACアダプタのコンセント(付け替え式)やポーチも付属しており、持ち運びを前提とした仕様になっている。


持ち運びや海外での利用が考慮されており、ポーチや電源コネクタ、USB給電用のアダプタなどが付属する。まさに至れり尽くせりといった印象だ

 また、最近ではSOHOや起業家向けのレンタルオフィスが多く存在するが、このようなオフィスでの利用も便利そうだ。通常レンタルオフィスではインターネット接続は基本料に含まれているものの、電話の敷設に別料金が必要となる(さらに個室の契約が必要なケースも多い)。しかし、通話王を利用すれば、インターネットにさえ接続すれば03番号の電話を手軽に利用可能となる。インターネットカフェのような場所でも電話を使えるだろう。

 ちなみに、通話王はルータや無線LANの動作モードを変更することが可能になっているため、さまざまな形態でのインターネット接続、電話接続が可能になっている。たとえば、標準では無線LANルータモードとなっているが、これを無線AP(アクセスポイント)モードに変更することで、すでにルータが存在する環境向けでも使えるようになる。また、コンバータモードも搭載しており、通話王を既存の無線LANアクセスポイントの子機として利用したり、無線で電話機能を利用(電話機の接続はアナログケーブルが必要)することができるようになっている。


ルータモード、無線APモード、コンバータモードの3種類の動作モードをサポート。利用シーンによって使い方を変えることができる

前述したように外出先で利用する場合などに、出張先のホテルが無線LANでの接続しか提供していないという場合でも、ブリッジモードに変更することで問題なくインターネット接続やIP電話を利用することが可能だ(公衆無線LANなどの認証が必要な場合のケースは除く)。



移動が多いユーザーに最適

 このように通話王は、03番号のIP電話サービスを手軽に利用できるだけでなく、その環境を手軽に持ち運べるというなかなか画期的な製品だ。インターネットに接続できる場所さえ確保すれば、どこでも事務所のように利用することができるため、出張が多い個人事業主のようなユーザーにうってつけの製品と言える。

 冒頭でも触れたが、これからは企業向けならまだしも、コンシューマーに対してネットワーク機器を単体で販売することは困難な時代と言える。これに対して、通話王は、ニッチではあるがソリューションがきちんと提案されており、ユーザーのニーズにきちんと答えている。正直、製品を使う前はネーミングによる話題性と企画先行の製品だろうと考えていたが、実際に使ってみると便利で、前述したコンセントやポーチなどが付属するなど、製品企画者がユーザーにどう使ってほしいのかという意図が明確に伝わってくる製品だ。

 ただし、本当にこの製品を必要としている人に対して、製品の魅力をアピールするには、もう少しわかりやすく、しかも具体的な事例の紹介が必要だと思われる。実際に使ってみると便利なのがわかるが、ネーミングだけでなく、その便利さがユーザーに伝わるような工夫をすれば、さらに広くユーザーからの支持を受けられることだろう。


関連情報

2006/8/29 10:52


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。