第233回:iTunesサーバーやAVサーバーを搭載した多機能自作NASキット
プリンストンテクノロジー「デジ蔵(PEC-NAV)」
プリンストンテクノロジーから、LAN接続型のHDDケース「デジ蔵(PEC-NAV)」が登場した。いわゆる自作NASキットだが、iTunesサーバーやDLNAガイドライン準拠のAVサーバー機能を搭載するなど豊富な機能を持ちつつ、手軽に使えるのが特徴だ。その実力を検証した。
●HDDを接続するだけの簡単設計
自作NASキットと言っても、ずいぶんカンタンになったものだ。プリンストンテクノロジーから登場した「デジ蔵(PEC-NAV)」を使った第一印象はこのようなものだった。
プリンストンテクノロジーの「デジ蔵(PEC-NAV)」。3.5インチのHDDを内蔵することで、NASとして利用できる。店頭予想価格は18,800円前後 |
自作NASキットと言うと、玄人志向の「玄箱」や挑戦者の「LAN Tank」などを思い浮かべる人も少なくないだろうが、これらの製品に比べて「デジ蔵」は、はるかに簡単に利用できる点が特徴だ。同様の製品はプラネックスなどからも発売されているが、本製品には内蔵メモリにあらかじめOSがインストールされているため、HDDを接続するだけで利用可能となっている。これまでの自作NASキットで必要だった、あらかじめPCにハードディスクを接続してOSをインストールしておくといった作業は不要というわけだ。
実際に組み立てたところ、作業そのものはほんの10分程度で完了した。背面のパネルを固定しているネジを4本取り外し、ケースをずらすようにして取り外す。その後、3.5インチのHDDを内部にネジで固定し、再びケースを取り付ければ完了だ。NASというよりは、USBなどの外付けハードディスクケースに近い手軽さだ。
デジ蔵の内部。非常にシンプルな構造で、組み立てもネジを数本外してHDDを装着するだけと簡単だ |
もちろん、組み立ててすぐに利用できるわけではなく、内蔵したハードディスクのフォーマット、ネットワークの設定などが必要になる。しかしながら、これも非常に簡単だ。PCとデジ蔵を有線LANで直結すると、一時的にデジ蔵がDHCPサーバーとして動作し、PCに「192.168.1.x」のIPアドレスを割り当てる。この状態でブラウザを利用し、デジ蔵の設定ページにアクセス(標準ではhttp://192.168.1.1)すれば設定を行なうことができる。
はじめて設定画面にアクセスすると、ディスクユーティリティの設定画面が自動的に表示されるので、まずは画面上のメッセージに従ってハードディスクをフォーマットする。フォーマットが完了すると、設定ウィザードが続けて起動するので、必要に応じてネットワークの設定などをしておけば設定は完了だ。一般的な使い方で構わなければ、ウィザードの設定も変更する必要はないので、最低限必要な設定はフォーマットのみというわけだ。
デジ蔵の設定画面。はじめて利用する場合は、装着したハードディスクをフォーマットする必要があるが、主な設定はこれだけ。初心者でも手軽に利用できるのがメリットだ |
●多機能で本格的に利用できる
低価格NASキットということで機能やパフォーマンスが気になるかもしれないが、このあたりも心配する必要はない。ファイルサーバーやプリントサーバー、FTPサーバーとしてはもちろんのこと、AVサーバー(DiXiM Media Server)やiTunesサーバーとしての機能も搭載しており、単純なファイルの共有だけでなく、画像や音楽、動画の共有といった用途にも利用可能となっている。
ファイル共有に関しては、標準で「guest-share」「public」「admin」の3つのフォルダが作成されている。デジ蔵では共有フォルダへのアクセス権をユーザーとグループによって管理することが可能となっており、最初の「guest-share」が誰もが自由にアクセス可能に、続いての「public」が登録ユーザー(標準ではadminのみ)のみがアクセス可能に、最後の「admin」がadminユーザーのみがアクセス可能に設定されている。もちろん、共有フォルダは自由に追加でき、、アクセス権の設定も変更可能だ。一般的な家庭で使う分には必要十分だろう。
共有フォルダの設定画面。標準で設定済みとなっているため、特に設定しなくても利用できる。ユーザーとグループでのアクセス権設定なども可能で一般的な利用には必要十分 |
続いて、AVサーバーとしての機能だが、今回試用した試用版では付属のCD-ROMを利用し、DiXiM Media Serverのアップデートが必要であった。製品版、もしくは将来的に発売されるバージョンでは、この作業が不要となる可能性もあるが、このあたりは若干面倒な印象だ。
アップデート完了後、メディアサーバー機能を有効にするとDLNAガイドライン対応機器からサーバーとして認識可能となる。「public」にある「media-content」フォルダに画像や音楽、動画などのファイルを保存しておけば、クライアントからネットワーク経由で再生可能だ。
AVサーバー、iTunesサーバーとしても利用可能。DiXiM Media Clientから画像や映像を再生でき、iTunesからもサーバーを認識して音楽を再生できる |
一方、iTunesサーバーとして利用する場合は、設定画面から機能を有効にするだけで構わない。同様に「public」フォルダに「music」フォルダが作成されるので、音楽ファイルを保存しておくことで、iTunesからネットワーク経由で音楽を再生できる。
ただし、いずれの機能も、詳細な使い方が付属CDのPDFマニュアルにしか記載されていないため、最初、どこに音楽や映像などのファイルを保存すれば良いのかがわからなかった。設定画面で機能を有効にするのだから、一言でいいので、どこにデータを保存すればいいのかを記載してくれるとありがたいところだ。
●パフォーマンスは良好、動作音も気にならないレベル
このように、デジ蔵は2万円を切る低価格でありながら、ファイルサーバーとしてはもちろんのこと、DLNAガイドラインとiTunesのサーバーとして利用できるお得な製品だ。今回評価したのは開発中の試用版のため、参考程度にとどめていただきたいが、HDBENCHによる計測で読み込み6MB/s、書き込み4.3MB/sと、市販のNASに匹敵するパフォーマンスも実現できている。
動作音もさほど気にならない。背面のファンは温度が高くなったときのみ動作し、普段は停止する仕様になっている。製品版では動作タイミングがさらに最適化されるとのことだが、現在の試用版でもファンが回る機会はあまりなく、ファンが回転したとしてもその音はさほど気にならない印象だ。大型のケースを採用し、電源も外付け(ACアダプタ)になっているのが功を奏している印象だ。
以上、製品の完成度としてはかなり高いレベルと言えるが、個人的には、もう少しメンテナンス系の機能が充実してくれるとうれしいところだ。現状のバージョンではデータのバックアップ機能は搭載されておらず、最近のNASでは搭載されることが多くなってきたスケジュールによる起動や終了にも対応していない。
NASの弱点は、故障したときの被害が大きいことと、基本的に起動させたままで運用するため電気代が気になることの2点が挙げられる。これを解決できるような機能が搭載されるとうれしいところだ。また、本製品に内蔵できるハードディスクはIDEとなっているが、最近ではSATAのハードディスクが手元に余る機会のほうが多い。SATA対応で、しかもRAIDでの運用が可能な製品が将来的に登場してくれることを期待したいところだ。
関連情報
2007/2/20 10:56
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