第287回:2.5インチHDD採用で「手の平サイズ」を実現
小型ながらも多機能なバッファローの新型NAS「LinkStation Mini」



 バッファローから、まさに手のひらサイズとも言える小型NAS「LinkStation Mini」が登場した。小型かつファンレスでありながら1TBの容量を実現した注目の製品だ。





待ち望んでいたNASの姿

LinkStation Mini

 「大きい」「うるさい」なんてもう言わせない。バッファローから登場した新型NAS「LinkStation Mini LS-WS1.0TGL/R1)は、そんな開発者の意気込みが聞こえてくるかのような意欲作だ。

 本体は、一見PLCアダプタか? と思えるほど小型で、サイズはわずか40×135×80mm(幅×奥行き×高さ)。重量は約500gほどあるのでずっしり感はあるが、片手で軽く持てるまさに手のひらサイズだ。

 小型化を実現できた要因は、LinkStation Miniで採用されているHDDにある。通常のNASは容量とコストパフォーマンス重視で3.5インチHDDが採用されているのが一般的だが、本製品で採用されているHDDは2.5インチだ。500GBの2.5インチHDDを2台搭載することにより、物理的なサイズはもちろんのこと、大幅に消費電力を押さえることに成功し、小型化、さらにはファンレスまでも実現しているというわけだ。

 HDDの大容量化、低価格化も手伝って、現在のNASのトレンドはRAID対応の高機能製品にシフトしつつあるが、既存の製品は小型化を目指しつつあるものの、まだまだサイズが大きく、動作音がうるさく、消費電力も決して低くはないというのが悩みのタネであった。

 特に、家庭での利用では常時鳴り響くファンの風切り音、うねるように響くHDDのうなり音は動作音の問題は深刻で、これがNASの家庭への普及を難しくしている要因の1つでもあったが、今回のLinkStation Miniではこの問題が見事に解消されている(詳細は後述)。

 個人的には、小さくて静かなNASというのが1つの理想型だったのだが、よもやこんなに早く理想NASが登場するとは思わなかった。


缶コーヒーとサイズ比較本体上部にFUNCTIONボタン

本体背面横置きも可能




LinkStationならではの手軽さはそのまま

 小さいからと言って、機能が省略されているのかというと、まったくそんなことはない。

 まず、ハードウェア面だが、前述したように容量は1TB。しかも、これはRAID対応となっており、RAID 0のストライピング、もしくはRAID 1のミラーリング(容量500GB)を選択できるようになっている。


標準ではRAID0で構成されているが、障害などに対応できるようにしたい場合はRAID1を選択することもできる
搭載されているハードディスクはHGST製の「HTS545050KTA300」。12.5mmの500GBモデルとなっている

 インターフェイスに関しても、LANポートは1000BASE-Tのギガビットイーサネット対応(Junbo Frameも設定可)となっており、小さいからと言って100BASE-Tなどに妥協していない点は高く評価できる。もちろん、USBポート(1ポート)も搭載しており、USBハードディスクの増設、USBメモリからのデータコピー(ボタンでの自動コピーも可)にも対応している。


LANポートは1000BASE-T対応。JumboFrameの設定も可能で、高速な転送ができる

 一方、ソフトウェア面でも、ユーザー・グループでのアクセス制限機能やActiveDirectoryドメイン参加機能を備えた通常のファイル共有機能に加え、FTPサーバー、DLNAサーバー機能、スケジュール対応のバックアップ機能、UPS連動機能、PC連動電源ON/OFF機能と、通常のLinkstationシリーズと同等の機能を搭載している。


通常のLinkStationと機能は同等。ファイル共有の設定も手軽にできるうえ、ユーザーやグループによるアクセス制限も可能

 同社では、3.5インチのHDDを2台搭載したRAID対応製品として「LS-W1.0TGL/R1」を発売しているが、機能や構成としては、この製品とほぼ同等だ。LS-W1.0TGL/R1を2.5インチ化して、全体的にサイズをグッと小さくした製品だと考えるとわかりやすいだろう。

 セットアップの手軽さも従来のLinkStationの良さを踏襲している。付属のCD-ROMからユーティリティを起動すると、本体のつなぎ方や電源の入れ方などが画像でわかりやすくナビゲートされ、ユーティリティなどがインストールされ使える状態にほぼ自動的にセットアップされる。

 もちろん、ユーザー認証などを利用したいなら、設定画面から詳細な設定を行なう必要があるが、一般的な家庭などででは難しい設定を意識せずに、外付けHDDと同じイメージで使えるのは同社製品ならではの特徴だろう。





求めていた理想の無音環境を実現

 実際に使ってみてまず驚くのは、その静かさだ。

 さすがに電源を入れた直後のHDDが回転を開始する音、起動時やアクセス中のアクセス音は聞こえるが、これとて耳を澄ませば聞こえるという程度で、普段はほぼ無音、動作しているのかも前面のLEDを見なければ確認できないほどの静かさだ。

 HDDの回転による振動もほとんど感じることはない。本体を手に持てば、その回転を感じることはできるが、床や棚に置いても振動が伝わってくることはまずない。NASの場合、ファンの回転音も耳障りだが、どちらかというと「ヴォーン」という感じで定期的に聞こえてくるうなり音の方が耳障りなケースがある。しかし、本製品では、こういった耳障りな音や振動は一切ない。この点に関してはすばらしいと言う以外、表現のしようがない。

 ファンレスということで発熱も気になるところだが、まだ涼しい季節ということもあり、1日連続稼働させて普通に利用した場合でも、本体がほんのり暖かくなる程度だ。真夏に日当たりのいい場所に置いて置く、ということさえしなえれば、動作にはほとんど影響はないのではないだろうか。





パフォーマンスも良好

 今回のテストでもう1つ感心したのは、設定画面のレスポンスの良さだ。あまり利用する機会があるわけではないので、通常の利用にさほど意味はないだろうが、とにかくキビキビとした操作感が心地いい。

 NAS製品は設定画面の動作がいわゆる「もっさり」している製品が多く、ユーザーアカウントを登録したり、共有フォルダを作ったりという初期設定に時間がかかってうんざりすることがあるのだが、こういったストレスを感じさせない点にも感心した。

 パフォーマンスに関しては、今回は製品版一歩手前の試用版ということで、あくまでも参考値と考えて欲しい。そういった意味で他製品との比較も避けているが、結果としてはなかなか良好な値が得られた。

転送方法GET(LS→PC)PUT(PC→LS)
FTP(Mbps)208.34Mbps229.04Mbps
ファイルコピー(秒)79.05秒80.56秒
※クライアントにはCore2Duo T7500、RAM3GB、Intel PRO1000を搭載したノートPCを利用。OSはWindows Vista SP1
※FTPはWindows Vistaのコマンドプロンプトを利用。50MBのファイルを転送した際の値を計測
※ファイルコピーでは1GBのWMVファイルをドラッグアンドドロップでコピーしたときの時間をストップウォッチで計測

 PC+Windows Server 2003などで構成したファイルサーバーなどと比べるとさすがにパフォーマスは劣るが、3.5インチHDDを4台搭載したRAID5対応のNASなどと比較しても読み込みはほぼ同等、書き込みなどはRAID0だけにLinkStation Miniの方が高速という印象だ。設定画面のレスポンスの良さにも現われているが、性能的にはなかなか高いポテンシャルを秘めていると言えそうだ。

 ちなみに、DLNAサーバー機能を利用し、保存したビデオ(MPEG-2)をネットワーク経由でPS3で再生してみたが、問題なくファイルが認識され、スムーズに映像が再生された。再生機器との相性やファイルの種類などには注意が必要だが、実用面やパフォーマンス面では、この点も問題なさそうだ。


DLNAサーバー機能を搭載。PS3で映像や音楽を再生してみたが、問題なく再生することができた

 個人的には、パフォーマンスが小ささや静かさの交換条件になっているのではないかと想像していたのだが、実際には小さいことに対して、ほとんど何も犠牲にしていない点は高く評価したいポイントだ。





+3万円の価値は十分にある

 以上、バッファローのLinkStation Mini LS-WS1.0TGL/R1を実際に利用してみたが、既存のNASの不満点が見事に解消されている非常に完成度の高い製品だ。個人的には、現状のNAS製品の中ではお世辞抜きにお勧めできる。

 実際の購入となると、おそらく89,250円という価格がネックになると思われるが、これも考え方次第だろう。ほぼRAID0/1対応、1TBというほぼ同等のクラスのNASが標準価格ベースで5万円前後となることを考えると、+3万円で静かさという付加価値を手に入れられることになる。

 おそらく、現状、NASの音に不満を感じているユーザーであれば、この3万円は決して高くはないと感じるだろう。それくらい、うるさいNASというのは不快なものなのだ。

 東芝製のテレビ(REGZA Zシリーズ)など、NASに番組を録画できる家電製品が登場しつつあるが、このような連携によってNAS、もしくはホームサーバーのような機器が家庭のリビングに進出していくためには、省スペース、省電力、静音性というのは欠かせない条件と言える。

 その理想型を具現化したのが、今回のLinkStation Miniだと言える。現在、NASの購入を検討しているのであれば、ぜひその候補に加えることをお勧めしたい。


関連情報

2008/3/25 11:00


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。