第288回:安価になった500GB HDDでTB容量のNASを手に入れる
BitTorrentにも対応したプラネックスのNASケース「DigiJuke」



 500GBクラスの大容量HDDが手頃な価格になってきた。PCのドライブとして利用するのも悪くはないが、この機会にNASの利用を検討してみてはいかがだろうか。





手頃になった500GB HDD

プラネックスのNASケース「Digi Juke(MZK-NAS02SG)」

 僚紙PC WatchのHDD相場情報によると、500GBのHDDがついに8,000円割れとなり、1GB単価にすると過去最安の15円となったとのことだ。

 多忙からPCの自作に時間を割けなくなって久しいが、さすがにこの値段になると「ちょっと買っておこうか」という気にもなる。2台買って1TBにしても16,000円なら、用途はさておき、手元にあっても損はないだろう。

 とは言え、使わずに眠らせておくのはもったいない。普通にPCに装着して利用しても良いのだが、自作のNASケースも増えてきたので、この組み合わせで利用するのも悪くない。というわけで、購入したのがプラネックスのNASケース「Digi Juke(MZK-NAS02SG)」だ。

 MZK-NAS02SGは、RAID0/1に対応したNASケースで、2台のHDDを搭載できるのが特徴の製品だ。標準価格は34,800円だが、こちらも発売後に価格が下がり、3月末時点の実売価格で25,000円前後で購入できるようになった。前述した500GB HDD 2台と合わせれば4万円強という価格で1TBのNAS環境が手に入ることになる。


本体前面本体側面本体背面




マウンターでHDD装着は簡単

 初期のNASケースは、言わば小型のPCケースのようなもので、HDDを装着するために本体を分解し、内部の配線をつなぐなどといったように少々手間がかかるのが難点だった。

 これに対して最近のNASケースは、SATA対応が進んだことと、トラブル時のHDD交換なども考慮されるようになったため、比較的楽にHDDを装着できるようになった。今回のMZK-NAS02SGも、マウンターを利用して背面に手軽にHDDを装着できるのが特徴となっている。

 背面のマウンターのスライドを押し下げるとロックが解除され、マウンターが外部に出てくる。これを引き出すようにすればマウンターを完全に引き出すことができる。あとは3.5インチのHDDをネジ止めして、再び背面に戻せば装着は完了だ。時間にしても10分もあれば十分という手軽さだ。


背面のマウンターは、スライドを押し下げて引き抜く感じで取り外すことができる
マウンターにHDDを搭載したところ。側面から4本のネジで固定する

 個人的には、PC用に発売されているSATA用HDD交換トレイのように、マウンターなしでHDDをそのまま装着できて欲しかったところだが、頻繁に交換するわけではなく、基本的に故障時の対応となるので、これくらいの手間なら十分楽な方だろう。

 ハードウェア面での特徴としては、このほか前面に1、背面に1のUSBポートが用意されており、HDDの増設やUSBメモリからのデータコピーに対応できる。また、1000BASE-T対応のLANポートも2ポート搭載されているが、ルータのように片方がWANポートなどということもなく、両方とも同じLANポートとなっている。

 取扱説明書にもLAN2としか記載されていないので用途は不明だが、IPアドレスの設定も個別にできるわけでなく共通なので、予備のポートのような位置づけと考えると良いだろう。正直なところ実質的に2ポートあるメリットはあまりなさそうだ。


背面にはLANポートが2つ搭載されている。設定は共通となるためどちらを使っても構わない

 このほか、背面からHDDを装着する関係で、ファンの位置が底面にあるというのも本製品の特徴だろう。底面の中央部にくびれるような感じでスペースが確保されているので、そのままでも排気に問題はないが、効率的な排気を考えるなら付属の台座を利用して少し底上げしてやらないと熱がこもりそうだ。


背面からHDDを装着するため、冷却用のファンは底面に装備されている
ファンの排気効率を考えると付属の台座で底上げしておく必要がある

 音に関しては、ファンや内部を通る風切り音がそれなりに耳に付く。HDDのアクセス音はあまり気にならないが(ドライブに依る)、あまり静かな製品というわけではないだろう。





パフォーマンスは一般的なレベル

 セットアップに関しては、完成品のNASではないのでそれなりに手間はかかる。RAIDで利用するなら、RAID0のストライプか、RAID1のミラーリングかを選択してフォーマットしなければならず、共有フォルダに関しても基本的に自分で作成する必要がある。


RAIDの設定。RAID0のストライプか、RAID1のミラーリングを選択できる
ファイル共有は、フォルダの作成と共有設定を個別に行なう仕様になっている

 家庭などでアクセス権を設定する必要がないなら、ユーザー設定が必要ないためにさほど難しくはないが、フォーマット、共有フォルダ作成という基本的な流れの設定は必要になる。はじめてだと取扱説明書(CD-ROM)を見ながらでないと戸惑うかもしれないが、すでにNASを利用したことがあるなら、基本は同じなので迷わず設定できるだろう。

 気になるパフォーマンスはというと、筆者宅で計測した値は以下のグラフの通りだ。比較対象としてWindows Home Serverの値を掲載しておいたが、PCサーバーと比べるとやはり厳しい。ただし、ギガビットイーサーネット対応NASとしては一般的なレベルで、実際のファイルコピーなどでも、さほど遅いという印象はない。サイズの小さなファイルを頻繁にやり取りするという使い方なら十分実用範囲だろう。

測定方法DigiJuke MZK-NAS02SGWindows HomeServer
FTP(Mbps)GET(NAS→PC)130.88352.02
PUT(PC→NAS)111.83217.87
ファイルコピー(秒)GET(NAS→PC)108.126.98
PUT(PC→NAS)71.558.74
※クライアントにはCore2Duo T7500、RAM3GB、Intel PRO1000を搭載したノートPCを利用。OSはWindows Vista SP1
※FTPはWindows Vistaのコマンドプロンプトを利用。50MBのファイルを転送した際の値を計測
※ファイルコピーでは1GBのWMVファイルをドラッグアンドドロップでコピーしたときの時間をストップウォッチで計測
※Windows Home Serverには、AMD Sempron 2600+/RAM2GB/400GB HDD搭載期を使用


 なお、最近のNASにはもはやほぼ標準機能と言えるが、本製品でもiTunesサーバーやDLNAガイドライン 1.0に準拠したメディアサーバ機能が搭載されている。ただし、筆者宅の環境ではSONY製のテレビ(BRAVIA)からはサーバーは見えるもののコンテンツにアクセスできなかったり、PS3からはサーバーが見えなかったりと、若干動作が不安定だったことを付け加えておく。





BitTorrentやHTTP/FTPダウンロードに対応

 このように手軽にNASとして利用できるMZK-NAS02SGだが、本製品の真骨頂は何と言ってもダウンロード機能を搭載している点だ。

 BitTorrent、およびWeb(HTTP)/FTPダウンロード機能を搭載しており、TorrentファイルやHTTPやFTPのアドレスでダウンロード対象のファイルをNASに登録しておくと、自動的にダウンロードして共有フォルダに保存しておいてくれる。


ダウンロード機能を搭載しており、HTTPやFTPのダウンロードをNAS単独で実行可能。URLさえしらべておけば、SP1のダウンロードなども手軽BitTorrentを利用する場合は、NAS、もしくはPC上のtorrentファイルを指定してダウンロードを行なう

 LinuxのディストリビューションをBitTorrentでダウンロードする場合や、最近ではWindows VistaのService Pack1をダウンロードする場合などに利用すると便利だ。通常、ダウンロード中はPCを起動させたままにしておく必要があるが、ダウンロードをセットして実行すれば、あとは放っておくだけで自動的にターゲットのファイルがダウンロードされる。

 ただし、HTTPやFTPの場合はURLがわからないとダウンロードできない。最近では直接リンクなどを避けるために、ダウンロードボタンをクリックしてダウンロード用のページをポップアップさせることで、URLがわからないようになっている場合が多いので、通常の方法では利用できないケースもある。

 たとえばブラウザからの情報をNASに自動的に送ってダウンロードに登録するといったようなアプリケーションでも提供してくれるありがたいところだ。このあたりは、せっかくダウンロード機能を特徴としているのだから、もう一工夫あっても良さそうだ。





HDD活用の用途の1つとして検討の価値あり

 以上、プラネックスのMZK-NAS02SGを実際に利用してみたが、安くなったHDDの使い道としてはなかなか面白い製品なのではないかと感じた。NASとして手軽に利用でき、ダウンロード機能を利用した活用もできる。各機能およびユーザーインターフェイスがもう一歩ブラッシュアップされることを期待したいが、割り切って使うには悪くない製品だ。

 ただし、実は1TBクラスのNASということで純粋に比較すればバッファローの製品(LinkStation LS-W1.0TGL/R1)のように3万円台の製品も存在し、1万円以下のシングルHDD対応NASケースを2台買って個別に運用するという手もある。このため、コストパフォーマンスで純粋に比較すると、若干、分が悪い。

 よって、やはりMZK-NAS02SGならではのダウンロード機能にいかに魅力を見いだせるかが、ユーザーの選択基準としてはもちろんのこと、売る側のメーカーにとっても重要なポイントとなりそうだ。


関連情報

2008/4/1 00:00


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。