第380回:高速化され実用性がアップしたRAID 0/1対応NAS
バッファロー「LS-WXL/R1シリーズ」
バッファローの「LS-WXL/R1シリーズ」は、3.5インチのHDDを2台搭載したRAID 0/1対応のNASだ。CPUの性能向上で従来製品から高速化された実力を検証してみた。
●ちょうど良いNAS
「LS-WXL/R1シリーズ」は、いろいろな意味で“ちょうど良い”NAS製品だ。サイズや性能、機能、信頼性、価格など、さまざまな点でハイエンド機ほどリッチではないが、入門機よりは充実しており、家庭での利用はもちろんのこと、オフィスなどでも活用できるオールマイティな製品となっている。
バッファローの「LS-WXL/R1シリーズ」。3.5インチのHDDを2台搭載したNASでRAID 0/1に対応。1000BASE-Tと高速CPUを搭載し、コンパクトなのに高い性能を持っている |
製品としては、3.5インチのHDDを2台搭載したRAID 0/1対応のNASとなっている。今回試用したモデルはWestern Digital製の500GBのHDD(WD500AAKS)が2台搭載され、トータルで1TB容量の「LS-WX1.0TL/R1」になる。
本体サイズは、86×204×127mm(幅×奥行×高)と比較的コンパクトだ。バッファローの製品で、RAID 0/1に対応するNASとして従来モデル「LS-WHGL/R1シリーズ」という製品が存在するが、ちょうどこれよりも一回り小さくなっている。
HDDを2台搭載可能なNASとしては、場所を取らずにどこにでも置きやすい。NASというのは、どこに設置するかが結構悩みどころだが、本製品であれば目立たない場所に置くこともできるだろう。
本体側面 | 背面 |
サイズが小さくなった一方で、性能や機能は向上している。具体的には、搭載するCPUが高速化されたことで転送速度が向上した。また、ファイル共有やFTP、Webアクセス、メディア共有などの基本機能に加え、新たにBitTorrent機能とDTCP-IPにも対応した。
標準価格は従来モデルと同等に設定されており、実売価格も1TBモデルで3万円を切る程度となっている。シングルドライブのNASが2万円強となっていることを考えると、プラス数千円でRAID環境が手に入るのは魅力と言えるだろう。
●40MB/sの転送速度を実現
まずは、最大の特徴とも言えるパフォーマンスをチェックしていこう。LS-WXL/R1シリーズは、出荷時状態ではRAID 0で構成されているが、これをRAID 1、通常モード(500GB×2ドライブで利用)のそれぞれで転送速度を計測してみた。
RAID 0構成での結果 | RAID 1構成での結果 |
通常モードでの結果 | Windows Home Server(ATOM230搭載/1000BASE-T)環境の参考値 |
■ベンチ環境 CPU:Intel Core i7 860(2.8GHz) マザーボード:ASUS P7P55D(Intel P55) メモリ:ノーブランド(DDR3 SDRAM 4GB×2) ビデオカード:SAPPHIRE VAPOR-X HD5770 1G GDDR5 PCIE DUAL-DVI-I/HDMI/DP(ATI RADEON HD5770) HDD:SAMSUNG HD321KJ(Serial ATA 3.5、7,200rpm、320GB) OS:Windows 7 Home Premium 32bit |
結果を見ると、確かに高速化されてはいるが、少々物足りない印象も感じる。RAID 0構成時の転送速度で40MB/s弱と、ほぼカタログスペック通りのパフォーマンスを実現しているのだが、参考値として掲載したATOM230ベースのWindows Home Serverと比べて数値は下回っている。また、過去に取り上げたバッファローの高性能モデル「LS-XHLシリーズ」(最大66MB/s)などと比べても、結果は若干下回る。
ただ、これは考え方次第と言えそうだ。バッファローの高速モデルとなる「LS-XHLシリーズ」は確かに高速なNASだが、シングルドライブ構成となるためRAIDによる冗長性は確保できない。これに対して、「LS-WXL/R1シリーズ」はRAID 1構成が可能で、詳しくは後述するが、万が一のHDD故障の際も交換が容易にできるよう工夫されている。
RAID 1(ミラーリング)構成のパフォーマンスも、書き込みが若干低下するが、転送速度としては決して遅くないので実用性もじゅうぶんだ。家庭やSOHOなどではRAID 5までは必要ないが、やはりデータの最低限の信頼性を確保しつつ、それでいて高いパフォーマンスが欲しいというケースがある。これまでのRAID 0/1対応NASは、いかんせんパフォーマンスに欠点があったが、これが改善されたメリットは大きいと言えるだろう。
●HDD交換は容易
本体側面のフロントパネル固定位置を親指で押す。フロントパネルの片側が開き簡単に取り外せる |
先にも少々触れたように、「LS-WXL/R1シリーズ」はHDD交換が容易にできるようになっている。標準のRAID 0ではあまり意味がないが、RAID 1構成の場合は、これにより物理的なHDD故障の際でも交換とリビルドが容易にできるようになっている。
実際のHDD交換作業は非常に簡単だ。サイドパネルを親指で押さえると、フロントパネルを固定しているツメが外れてフロントパネルが取り外すことができる。すると、リング状になったHDD取り外し用の金具が見えるので、これを引っ張ると3.5インチHDDがSATAと電源コネクターから取り外されるので、あとは引き抜くだけだ。
ドライバーなどの工具は一切必要なく、時間も数分もあれば交換することができるようになっている。この手軽さはありがたいところだ。なお、市販の3.5インチHDDを装着することは物理的には可能だが、装着しただけではNASが起動しない仕様になっている。
フロントパネルを取り外した様子。HDDのツメを押し下げながら、上にある金具に指を入れて引っ張るとHDDが取り外せる | 取り外した様子。HDDはWestern Digital製の500GB。内部は非常にシンプルな構成だ |
このほか、ケースに関しては振動と音が若干気になるという印象だ。搭載されるHDDのモデルやロットによっても変わる可能性があるが、今回試用した製品では床などに直接設置すると「ヴーン」という共鳴音と振動が感じられることがあった。また、背面のファンの音も決してうるさくはないのだが、常に低い感じで風切り音が聞こえていた。
筐体がプラスチック製のシンプルなものに変更されたことや取り外しの容易さを求めた結果、HDDの固定が完全でないのか、その理由はわからないが、家庭で使うならもう少し静音性と振動対策が欲しかったところだ。
●ムーブはできるが、現時点では再生環境に難があるDTCP-IP
REGZAからのダビングはOK。ただし、再生ができない |
機能的な面では、WebアクセスやDLNAなどかなり充実しているが、やはり注目したいのはDTCP-IPだろう。
ただし、現状のDTCP-IP対応に関しては、3月以降にアップデートで対応予定の「スカパー!HD」の録画用途という位置付けになっており、汎用的な機能とはなっていないようだ。バッファローが発売する他のDTCP-IPに対応するNAS製品では、東芝の液晶テレビ「REGZA」など対応機種や機能が明記されているが、本製品に関してはRAGZA対応なども明記されていなかった。
試しに、筆者宅の「RAGZA 46ZH500」との組み合わせで利用してみたところ、USB接続型HDDに録画した地上デジタル放送番組を本製品にムーブすることは可能だった。一方、ムーブした番組をREGZAから再生しようとしても「再生できないコンテンツです」と表示されて再生はできなかった(PS3などからも現状は同様に再生不可)。
「スカパー!HD」対応のファームウェアでどこまでサポートするかはわからないが、現状はDTCP-IPの互換性が十分に確保できているわけではなさそうなので、この機能を目当てに購入するのであれば、次のファームウェア公開まで待った方が良さそうだ。
●ビジネス用途も利用可能。家庭利用は次のファーム待ちか
以上、バッファローの「LS-WXL/R1シリーズ」を実際に利用してきたが、単純にNASとして利用するのであれば、パフォーマンスが向上したこともあり、非常に使いやすい製品となっている。
ファイルの共有はもちろんのこと、Webアクセスによる外出先からのファイルの利用もできるなども快適にできる。そして、RAID 1に限られるが、信頼性も確保できるのだから、小規模なオフィスなどビジネスでの利用におすすめしたいところだ。
ただし、家庭で使うとなると、やはり前述したDTCP-IP対応が1つのポイントとなる。現状は、とりあえず機能は搭載されているが、使い道がない、もしくは非常に環境が限られるので、これは次のファームウェアを待った方が良い。価格を考慮すれば、製品としてはお買い得だと言えるが、DTCP-IT対応機器との組み合わせを考えている場合には買いどきはもう少し先だろう。
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2010/2/23 06:00
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