生まれ変わったWindows Live

第7回:無償ソフトの枠を越える多彩な機能「Windows Live Photo Gallery 2011」


 Windows Live Photo Gallery 2011(以下Photo Gallery 2011)は、写真や動画などを管理するライブラリ機能と写真を編集するフォトレタッチ機能を持ったソフトだ。Photo Gallery 2011は、SkydriveやFacebook、YouTubeなどのSNSへのアップロード機能もサポートされている。

 Windows Vistaでは、Windows Photo Galleryという名称でOSにバンドルされていた。しかし、2009年に正式リリースされたWindows Live Essentials(当時は『おすすめパック』という名称だった)に同梱されるようになり、名前もWindows Live Photo Galleryに改められた。

 実際、Windows 7では、写真などを扱うソフトは、OSにはバンドルされていない。マイクロソフトでは、Windows Live Essentials 2011にバンドルされているPhoto Gallery 2011を利用してほしいと話している。

 無償で提供されるPhoto Gallery 2011だが、個人が利用するには、十分すぎる機能を持っている。

写真の修正が簡単・きれいになった2011版

 Photo Gallery 2011では、写真の修正機能が強化されている。以前のバージョンでも、人物の赤目修正機能、傾きの調整、ノイズ除去などの機能は搭載されていた。

 しかし、人物の顔のシミや、風景写真の中にゴミが写っていたりした場合には、修正するのが非常に大変だった。たとえば人物の顔であれば、ブラシに周辺の肌色と同じような色を設定して、クマやシミを消すという根気のいる作業が必要だった。

 今回追加された「修正」機能では、修正したい部分を選択すれば、Photo Gallery 2011が周りのイメージや色を参考にして、大きな色差や明暗の差がある部分、つまりシミやゴミなどを周囲と違和感のない形で除去してくれる。

 たとえば、道に落ちているゴミを修正する場合、ゴミを消した後で単に塗りつぶすのではなく、周りのイメージから計算して、補完するようなイメージを自動生成してくれる。このため、ゴミがはじめから写っていなかったかのような自然な修正ができる。人物の顔から、シミやそばかす、顔のテカリなどを修正できるため、フラッシュによるテカリなどが気になった時には重宝する機能だ。今後、プリクラのように美肌機能や小顔機能などのプラグインがリリースされると面白いかもしれない。

 Photo Gallery 2011で便利なのは、こうして修正した写真を、いつでもオリジナルの写真に戻せる機能だ。

 多くのフォトレタッチソフトでは、アンドゥ機能により、写真を編集中は、いつでも元の写真に戻すことはできる。しかし、いったん編集中の写真を保存してしまうと、オリジナル写真は上書きされて、編集履歴は失われてしまう。

 このため筆者は、編集中の写真を別のファイル名で保存して、オリジナル写真は残しておくことにしているが、この方法を使うと、編集途中の写真のコピーがどんどん増えていくことになる。手動管理のため、何度も処理した画像では、どのファイルが最新のモノかわからなくなってしまうこともある。

 Photo Gallery 2011では、写真を修正したり、変更した過程がすべて記録されている。写真をディスクに保存しても、この記録は別に保存されている。このため、Photo Gallary 2011から「最初の状態に戻す」というボタンを押せば、一番最初のオリジナル写真に戻すことができる。この機能は、同じ写真を何回保存しても、一番最初のオリジナル写真に戻すことができる。

 ただし、「最初の状態に戻す」というボタンだけなので、5つ前の写真に戻すなどの機能はない。「元に戻す」ボタンを使えば、編集中の修正を1つずつ戻すことはできるのだが、いったん写真を保存してしまうと、作業履歴は消去されてしまうため、修正作業の過程を1つずつ逆戻りすることはできなくなる。この場合でも、一番最初のオリジナル写真に戻す「最初の状態に戻す」ボタンを押せば編集前のオリジナル写真を復元することは可能だ。

石畳の道に、タバコの吸い殻が落ちている。修正機能を使えば、綺麗に消すことができる。消したい場所をマウスで選択する。この時、出来るだけ、消したい部分だけを選択すること。
Windows Live Photo Gallery 2011が、タバコの吸い殻を消し、消した部分を周りのイメージから類推して合成している。じっと見ても、修正したことはわからない。ゴミを消した写真。修正したモノとは、まったくわからないだろう

 ユーザーインターフェイス面では、Photo Gallery 2011では、Office 2007で採用されたリボンUIが全面的に採用されている。使い勝手に関しては、好き嫌いもあるが、利用できる機能だけが表示されるため、初心者ユーザーにはわかりやすいと言われている。

 筆者がリボンUIになって使いやすいと感じたのは、色や露出を修正する時だ。Photo Gallery 2011では、リボンUIにセピア色、モノクロなどのテンプレートが用意されており、この色を選択するだけで、セピア写真にするなどフィルター処理をしてくれる。

 そのほか、利用できる機能だけがクリックできる仕様になっているのは初心者ユーザーにとってはプルダウンメニューよりも使いやすいと思われる。

メニューがリボンUIに変わっているトリミングもサイズがメニューに表示されるので、変なサイズでトリミングしなくて済む
色を変えたり、トリミングをしたりしても、「最初の状態に戻す」ボタンで、オリジナルの写真に戻すことが出来る。これは、写真を何度保存しても、元に戻すことができるライブラリのサムネイルにマウスをあわせると、写真が大きく表示される。写真を確認するには便利

集合写真の合成も可能

 Windows Live Photo Gallery 2011において最大の特徴といえるのが、写真の合成機能だ。

 たとえば、集合写真などを撮影すると、人の数が多くなればなるほど、それぞれの人が横を向いたり、俯いていたり、目をつぶっていたりと、いいショットを撮るのが難しい。結局、何枚か同じショットを撮影して、その中から、比較的ましな画をアルバムに使うことになる。

 Windows Live Photo Gallery 2011では、複数の集合写真から、正面を向いている人物だけ切り抜いて集め、綺麗に合成して、ベストな集合写真を作成できる。この機能を使えば、どんな集合写真でも、何枚か撮影しておけば、後でベストショットに合成することができる。

 集合写真で首から上だけを合成するとした時に、胴体と首が綺麗につながるかということだ。うまくいかないと、みっともない画になってしまう。Windows Live Photo Gallery 2011の合成写真を試してみると、入れ替える写真の部分の色を判断して、うまく位置合わせしたり、境目の色をうまく合わせたりしてくれる。この機能により、合成写真を作っても、ほとんど違和感のない写真に仕上がる。

 合成写真機能は、集合写真だけでしか使えないわけではない。たとえば街角の風景写真で、手前に走ってきた車が写ってしまった場合でも、そこで何枚か撮影しておけば、あとで写真を合成して、車のいない風景写真が作成できる。ただし、撮影した視点が変わると、Photo Gallery 2011が同じ写真として認識できないため、合成写真は作成できないので注意しよう。合成には、同じ位置・同じ画角で撮影した写真が複数枚必要になる。

 そのほか、従来版Photo Galleryのパノラマ写真作成機能も引き続き搭載されている。

合成写真では、複数の集合写真を合わせて、ベストショットのパーツを集めて、綺麗な集合写真を作成する。合成したモノは、全く判らない。
複数の写真をつなぎ合わせて、パノラマ写真を合成する作成されたパノラマ写真トリミングして、綺麗な写真に仕上げる。中央に黒い部分があるのは、重なり合う写真が無かったため、欠け落ちた部分だ。パノラマ写真を撮るときは、できるだけ、撮りのこしが無いように、重なりあうように写真を撮っておく

豊富なタグ情報と人物タグの自動認識

 Photo Gallery 2011では、写真にさまざまなタグ情報を付けることができる。いろいろなタグ情報を付けることで、検索や写真の管理がやりやすくなる。

 Windows Live Photo Gallery 2011で使用できるタグとしては、位置情報タグ、説明タグ、人物タグなどがある。

 位置情報タグは、撮影した写真の場所の情報だ。位置情報タグは、米国での住所表記に従っているため、地区名、都市名、州名、国名といったように、日本とは逆のパターンになっている。ただし、マイクロソフトの検索エンジンBingと連動しているため、六本木と入力すれば、六本木という地名を日本全国から検索してリスト表示してくれる。ユーザーは、ここから選択すればOKだ。

 説明タグは、旧来からあるフリーキーワードを入力しておくタグだ。

 なかでも今回、機能が強化されたのが人物タグだ。従来版Photo Galleryでも、人物の顔を認識して人物タグの入力を促す機能はあったが、今回のPhoto Gallery 2011では、人物の顔に一度人物タグを打てば、ソフト側がライブラリに登録されている写真の中から同一人物と思われる顔を見つけてきて、自動的に人物タグを打つ機能が用意されている。

 自動認識といっても、やはり誤認識があるため、ユーザーが確認して違うものは修正することになる。こうして、写真が追加されるたびに人物の自動認識と修正を繰り返すことでどんどん認識の精度がアップして、誤認識もずっと少なくなる仕組みだ。

 また、人物タグはWindows Liveのアドレス帳とも連携しているため、登録されているアドレス帳から人物を選択することができる。これらのタグ情報を写真に入力しておくことで、膨大な写真を登録したライブラリからでも、タグで検索して簡単に写真を見つけ出すことができる。

 たとえば、従来版では撮影した年月などでしか検索ができなかった。しかし、タグ情報をうまく使えば、ある友人と自分の2人が写っているロンドン旅行の写真、といった検索も簡単にできるようになるのだ。

 そのほかにも、ファイル名、フォルダー別、メディア別、インターネットへアップロードしたかどうか、ユーザーの評価(星)などを検索項目として利用することができる。

 また、検索には利用できないが、写真1枚ずつにキャプションを入力することもできる。キャプションを入力しておけば、どんな写真なのかが、簡単に思い出せる。

 さらに、日付や人物タグなどでフィルタリングした場合、各条件の項目にマウスカーソルを乗せただけでフィルター結果がプレビュー表示されるようになった。

人物に人物タグを入力することができる。人物タグは、Windows Liveに登録されているアドレス帳にリンクしている。Windows Live Photo Gallery 2011では、自動的に人物の顔を認識して、人物タグを簡単に入れることが出来る。

SNSのアップロード機能をサポート

 Photo Gallery 2011は、写真や動画をSkyDriveのフォトアルバム、FaceBook、Flickr、Windows Liveグループ、YouTubeなどにアップロードする機能を持つ。この機能を利用すれば、Windows Live Photo Gallery 2011から写真を選択して、直接SNSなどにアップロードが可能だ。

 また、プラグイン追加によって、上に挙げた以外の新しいSNSにも写真や動画をアップロードできるようになる。現状では、公開されているプラグインは、Picasaなど米国で展開しているサービスばかりだ。

 Photo Gallery 2011のSDKは一般に公開されているため、国内のSNSなどでも、WebサービスのAPIが公開されていれば、Windows Live Photo Gallery 2011用のプラグインを開発可能だ。

 マイクロソフトが今後、mixiなどの国内のSNSに向けてプラグインを提供してくれれば、国内SNSユーザーにとって、Photo Gallery 2011ははるかに使う価値のあるサービスになるだろう。

写真の分類にアップロードしかどうかの選択がある。これなら、SNSにアップロードしていない写真があるかどうか、簡単にチェックできる。Windows Live Photo Gallery 2011から、直接SkyDriveに写真をアップロードできる。同じように、Facebookなどにもアップ可能。写真がキチンとアップロードされたか、ブラウザーで確認。
Windows Live Photo Gallery 2011から、Skydriveに写真をアルバムとしてアップするフォトメールか、メールに写真を添付するのか、2種類のメールが選択可能。フォトメールなら、10GBまでの写真がアップできるフォトメールでは、アルバムのデザインも簡単に変更できるアルバムでは、写真の順番も変更可能
フォトメールは、HTMLメールで送信されるため、HTMLメールが表示できるメールソフトならキチンと表示できるフォトメールには、写真のサムネイルが表示されている。写真を表示するには、スライドショーをクリック。Silverlightベースのスライドショーで写真が確認可能

オートムービー機能も強化

 Windows Live Movie Maker 2011(以下Movie Maker 2011)は、ムービーを簡単に作成できるツールだ。Windows Live Movie Maker 2011は、プロが利用する本格的なビデオ編集ソフトというわけではない。しかし、複数のムービーや写真などを組み合わせて、初心者が簡単にムービーを作成することができる。

 ほとんどの機能は、従来版のMovie Makerと変わらない。相違点として挙げられるのは、追加した写真やムービーなどの素材をもとに自動的にムービーを作成する「オートムービー機能」にテーマが用意されていることだ。

 テーマを選択するだけで、さまざまなビデオエフェクトやタイトルなどを入れたムービーが完成する。便利なのは、Office 2010などで採用されているライブプレビュー機能により、テーマにマウスを重ねるだけで、そのテーマを適用したムービーが確認できる。ユーザーにとっては、いちいちテーマを適用してみなくても、ライブプレビューで事前にムービーを確認できるので便利だ。

 さらに、完成したムービーをPhoto Gallery 2011と同じように、SkyDriveやYouTubeなどのSNSにアップロードすることができる。特にSkyDriveにアップロードしたムービーは、Silverlightを使って、ブラウザー上で再生することも可能だ。

Windows Live Movie Maker 2011では、写真を集めて、ムービーにすることができる。ビデオ編集も出来るが、本格的なビデオ編集ソフトまでの機能はない。写真やビデオのカットを集めて、1本のムービーを作ることに徹しているリボンUIとライブプレビューが、これほど便利だと感じたことは無かった。いろいろなエフェクトが、その場で確認できる作成したムービーは、SkyDriveやYouTubなどにWindows Live Movie Maker 2011からアップロードすることができる。ここでは、SkyDriveにアップしてみた
ムービーの作成とアップロードが自動的に行われるSkyDriveにアップしたムービーは、ブラウザー上で再生できる。以前のようにダウンロードする必要はない。Silverlightを使っているため、ムービーもスムーズに再生可能

関連情報


(山本 雅史)

2010/9/1 06:00