イベントレポート
Google Cloud Next ’17 in Tokyo
ファミリーマート、機械学習でおむすびの発注を改善、「Google Cloud」で企業改革
「スーパーマリオラン」「メルカリ」でもGCP利用
2017年6月15日 19:35
6月14日・15日に開催されたGoogleの年次イベント「Google Cloud Next '17 in Tokyo」。その初日の基調講演では、「Google Cloud」の顧客企業のビジネスにかかわる内容が語られたほか、今週発表されたKDDIとの協業やソフトバンクのGCP(Google Cloud Platform)パートナー認定取得についても紹介された。
さらに新発表として、ファミリーマートが「働き方改革」でGoogleと提携したことや、NTTコミュニケーションズが新たにGoogle Cloudのパートナーとなったことも明らかにされた。そのほか、「スーパーマリオラン」や「メルカリ」でのGCP利用事例について各社の担当者が登壇して語った。
ファミリーマート、Googleの力を借りて企業改革
基調講演の前半(関連記事『業務時間における生産的な業務の割合は5%――「働き方改革」のツール「G Suite」で“生産的ではない95%”を減らす』参照)では、Google Japan専務執行役員CMO・アジア太平洋地域マネージングディレクターの岩村水樹氏が、Googleでビジネスリーダーが取り組むべきとしている「文化」「ツール」「プロセス」の3つを挙げ、そのうちの「文化」「ツール」について語ったが、後半ではGoogle Cloudのカスタマー部門プレジデントのタリク・シャウカット氏が「どう変革を進めるかというプロセスの話も重要だ」と話し、改めて働き方改革について語った。
そして、Googleは、新しいアプリケーションをクラウドに移すときや、既存のオンプレミスからクラウドに移るときなどにガイドになり、企業文化の変革を助けると語った。
ここで、ファミリーマート代表取締役社長の澤田貴司氏がステージに現れ、Googleのサポートにより働き方改革を進めていることを明らかにした。
澤田氏はファミリーマートが目指すものとして「『お客さまの一番近い存在』になること」として、「できていないことがまだまだある」と語った。
問題として、レジだけでなく発注や宅配便、ATMなど業務がどんどん多く複雑になっていく一方で、人手不足なことから、現場に負担がかかっていることを澤田氏は説明した。そのために、技術を導入し、企業文化を変えていく必要があるという。
そこでGoogleと、「Clutural Transformation(文化の変革)」と「Retail(小売業)におけるGoogle Cloudの応用」の2つの分野で提携したと澤田氏は発表した。
「Clutural Transformation」は、働き方改革を実行できる企業文化を作るためのもので、「コミュニケーション」「コラボレーション」「10x思考」を目指すという。
活動としては、まず社員の企業文化・働き方に関する意識調査を実施し、次にGoogleのファシリテーションでワークショップに参加した。
さらに、G Suiteによる働き方改革の実証実験を実施した。Google Docsやハングアウトにより、資料の作成時間が70時間から15時間になり、資料作成のための準備の会議が4時間から0時間になり、そのための移動時間も1.5時間から0時間になったという。こうした短期間で小規模な実験でも大きな効果があったため、全社に広めたいと澤田氏は語った。
一方の「RetailにおけるGoogle Cloudの応用」としては、発注業務の効率化に取り組んでいる。すでに機械学習によるおむすびの発注の改善を始めているという。結果としては、開始2週間では実績と予測の平均誤差が11.65%だったのが、その後の1週間で9.68%に改善されたと澤田氏は報告した。
また、社内に分散して大量に存在する膨大なデータを、GCPに集約して解析したいという考えも語られた。分析結果をもとに、サービスを最適化するという。
こうした取り組みについて、澤田氏は「よりお客様に近い企業に変貌していきたい。Googleの力を借りながら」とまとめた。
「スーパーマリオラン」や「メルカリ」の担当者がGCPを語る
ここで、国内の大きな利用事例を2件、Google Cloudの事業本部長の塩入賢治氏が紹介した。
まず登場したのは、任天堂とDeNAによるスマートフォン向けゲーム「スーパーマリオラン」の事例だ。
任天堂の府川幸太郎氏によると、スーパーマリオランは世界同時配信で、事前登録数が2000万、公開してダウンロード数が4000万、165の国に配信しているという。そのバックエンドとしてGAE(Google App Engine)などを採用した。
分担は、任天堂の竹本賢一氏によると、任天堂が仕様とプロジェクトマネジメントを、DeNAがシステム構築と運用を担当。Googleも支援したという。
Googleのマネージドサービスを採用した理由として、DeNAの菅原賢太氏は「みんなが楽しむ」ためだと表現する。ユーザーが楽しむためにダウンタイムをゼロにしていくが、それではオペレーションだけでなくアプリケーションエンジニアにも負担がかかる。そこでGoogleのマネージドサービスを積極的に利用し、オペレーションエンジニアだけでなく管理者もアプリに集中できるようになったとのことだった。
2つめは、フリマアプリの「メルカリ」だ。流通額が月間100億円超、出品数が1日で100万品以上だという。
メルカリ執行役員・VP of Engineeringの柄沢聡太郎氏によると、同社では複数のクラウドを利用しているとのこと。最近は米国や英国でもサービスを開始しており、グローバルではマルチクラウド、英国ではGCP、米国ではGCPのGKE(Google Container Engine)を使っているとのことだった。また、新サービスの「アッテ」や「カウル」ではGAEを採用し、インフラのメンバーがほとんどいない状態で運営しているという。
GCPを使ったきっかけを尋ねられて、柄沢氏はBigQueryだと答えた。現在、すべてのログをBigQueryに入れて、情報が欲しいときに解析しているという。エンジニアだけでなく企画やカスタマーサポートの人もBigQueryを使っていることや、従量課金でクエリをためらって機会損失しないよう、定額料金で契約しているという話も語られた。
NTTコミュニケーションズがGoogle Cloudのパートナーに
最後のパートとして、Googleのパートナーの最新動向について、Google Cloud日本代表の阿部伸一氏が再登壇して紹介した。
冒頭でも阿部氏が触れたように、G Suiteを扱っていたパートナーがGCPも扱うようになったケースが増えているという。その例として、同じ週に発表された、ソフトバンクがGCPのパートナー認定を取得したことを阿部氏は紹介した。
また、これも同じ週に発表された、KDDIからのGCPの提供開始も紹介された。Googleにとっては、顧客からアクセス回線のセキュリティについて相談されることがしばしばあり、KDDIと組むことはその問題への対応の1つだという。
さらに「もう1社紹介します」と言って、阿部氏がNTTコミュニケーションズとの提携を発表。G SuiteとGCPの両方のパートナーになるという。それにともない、NTTコミュニケーションズ取締役・クラウドサービス部長の森林正彰氏がステージ上に現れた。
題して「Google Cloudとの未来志向の協業」。森林氏は「NTTコミュニケーションズはかつて、自社ですべてやるという方向だった。しかし、最近ではパートナーの重要性に気付き、方向転換した」と、パートナーシップの意義を説明した。
阿部氏は「企業はGoogleに関心を持っているが、どうデジタルジャーニーするか、どう既存資産を生かすか、が課題だった。そこをNTTコミュニケーションズと組んで取り組みたい」と語った。一方で森林氏は「我々にもエンタープライズクラウドがあるが、そこでカバーできないものをGCPと接続していっしょに解決したい」と語った。
また、NTTコミュニケーションズでは、GCPやG Suiteを社内でも利用することも明らかにされた。
最後に阿部氏は「これまでは、同じ方向を見ていたが、別々の道を歩んできた。これからは一緒にイノベーションを生んでいきたい」とまとめた。森林氏は「違和感のある、ちょと面白い(変わった)パートナーシップだと思われているかもしれない。しかし、私は本当に面白いパートナーだと考ええいる」とまとめた。