「音楽配信の成長に不可欠」権利処理一元化の仕組みとは
「著作権情報集中処理機構(CDC)」理事の佐々木隆一氏 |
現状の著作物使用実績報告業務の概念図 |
日本音楽著作権協会(JASRAC)は19日、「ネット配信のビジネスモデルと権利処理システムの構築」をテーマにしたイベント「JASRACシンポジウム2009」を開催。特別講演として、音楽のネット配信の権利処理の効率化を図るために設立された一般社団法人「著作権情報集中処理機構(CDC)」理事の佐々木隆一氏が、CDCの概要や意義を説明した。
CDCは、著作権管理団体とコンテンツ配信事業者が、楽曲のネット配信にあたって必要な権利処理業務を合理化する機関として2009年3月に設立。2010年4月の運用開始を目指し、フィンガープリント(音紋認証)技術を活用した楽曲特定システム、利用曲目の報告データ作成機能、権利に関する情報のハブとなるデータベースの構築などを進めている。
現在は、コンテンツ配信事業者が楽曲を配信するにあたっては、JASRACやジャパン・ライツ・クリアランス(JRC)、イーライセンスなどの著作権管理団体のデータベースに問い合わせて楽曲の権利情報を調査する必要がある。また、配信後は各管理団体に楽曲の利用実績を報告しなければならない。
佐々木氏は、こうした権利処理業務がコンテンツ配信事業者の負担になっていると指摘する。例えば新曲配信時には、その楽曲の管理団体を探した上で、権利情報を調べなければならない。また、管理団体が移行された楽曲については、その事実が知らされないことから、利用実績報告後に「うちの管理楽曲ではない」と突き返されることもあるという。
CDCではこうした権利処理業務を効率化するために、各管理団体の管理楽曲にフィンガープリントや「CDC-ID」を付与することで、楽曲の権利情報を横断的に検索できる仕組みを提供。また、管理団体ごとの報告書データを作成する機能により、コンテンツ事業者の権利処理業務の負担を軽減できるという。
CDCの調べによれば、コンテンツ配信事業者が四半期ごとに提出する利用曲目の報告件数は、2003年7月~9月で1200万件だったが、2009年1月~3月では1億500万件を上回っており、約5年前と比べて7倍以上に増加した。コンテンツ配信事業者は国内で1000社、1万以上のサイトがあり、各社が同様の権利処理業務を行っているという。
「月間で約1万の新曲を配信する事業者では、その権利処理にかかかるコストを平均すると月間で80万円弱。つまり、1曲につき80円という計算になる。(ダウンロード配信の)著作権使用料7円70銭を払うために、権利処理のコストが100円以上かかることもある。こうしたコストは目に見えないが、どんどん増える傾向にある。」
佐々木氏は、「コンテンツ配信事業者の権利処理業務の大半はマンパワーに頼っている状態。権利処理業務のコストの増大は、配信事業の成長維持を阻害している。こうした課題を解決するには集中処理しかない」と述べ、新たな著作権情報処理システムの必要性を強調した。
コンテンツ配信事業者が抱える課題と問題点 | CCDが開発を進める著作権情報処理システムのメリット |
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(増田 覚)
2009/11/19 20:09
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