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インタビュー

無料ウイルス対策ソフトの国内利用者250万人を突破、アビラに日本戦略を聞く


 ドイツのセキュリティベンダーAviraは、日本法人設立および無料ウイルス対策ソフト日本語版の公開から1周年を迎えた。日本語版公開前からすでに75万人の日本人ユーザーを獲得していたが、この1年で250万ユーザーにまで伸張。大手ベンダーと比べてなじみの薄い企業ながら、順調にビジネスを拡大している。

 日本市場参入1周年を記念し、AviraのCEOと販売部門責任者がこのほど来日、インタビューに応じた。“無料”を掲げながら、徹底したユーザー視点でサービスを提供するAviraの理念、海外展開の状況などについて聞いた。

ユーザー重視で開発、数値目標なし

AviraのCEOを務めるアウアーバッハ氏。各社から無料ウイルス対策ソフトが相次いでリリースされる現状を「歓迎すべきこと」とし、多くのユーザーが安心してPCを使えることを第一義とした
「ドイツ語が話されている国では、PC2台に1台の割合でAvira製品がインストールされている」と説明するヴィッテベーン氏

 Aviraは1986年にドイツで設立された。従業員数は約400名で、2009年度の年商は4400万ユーロ。個人および法人を対象としたセキュリティ製品各種を販売しており、無料版を含めた製品ユーザー数は全世界で1億人を数えるという。エントリー版を無料で公開し、高機能な有料版をあわせて提供するフリーミアム型のビジネスモデルをとっている

 2009年12月には、日本法人の「株式会社アビラ」を設立。同時に、無料ウイルス対策ソフト「Avira AntiVir(アビラ アンチヴィア) Personal」の日本語版を公開した。その時点ですでに約75万人の日本人ユーザーが他国語版を利用していたが、2010年12月までの約1年間で約250万人までユーザー数が伸びている。

 現在の最新バージョンは、2010年10月に公開された「Avira AntiVir バージョン10」。ユーザーインターフェイスを改良したほか、有料版には新機能を追加。「Avira AntiVir Premium」「Avira Premium Security Suite」では、ウイルス定義ファイルをもとにした既知ウイルス検出やヒューリスティックスキャン検出に加え、プログラムの振る舞いパターンをもとにウイルスを検出する「Avira AntiVir ProActiv」が利用可能になった。

 今回話を伺ったのは、独AviraのCEOであるチャーク・アウアーバッハ氏と、同セールス&マーケティングディレクターであるトラビス・ヴィッテベーン氏。また、株式会社アビラの代表取締役社長である山本リチャード氏が同席し、日本市場に向けた取り組みなどを語ってくれた。

 ヴィッテベーン氏は、Aviraが各地の市場へ参入する際の第一条件となるのがユーザー数だと語る。無料版が世界各地で利用され、一定の規模になった状態を見計らって、ローカライズ版を投入する。日本はまさにこの方針を受けて参入した格好だ。その上で、ユーザーの満足度が確保されれば、さらに次の段階として法人展開を検討していくという。

 ヴィッテベーン氏は「重要なのは、あくまでも我々の原動力となるのがユーザーだというこうと。既存のユーザーに満足いただける製品を届けられれば、それにともなってビジネスも自然に成長していくと考えており、当面の売り上げだけを優先するということはありません」とし、まず製品の品質ありきだと強調する。

 アウアーバッハ氏も「日本でのユーザー数が75万人から250万人に伸びたことも、検出率が高いとかCPU占有率が低いといった技術的優位性に加え、とにかくユーザーオリエンテッドであることが評価されたのではないでしょうか」と分析する。

 こういった経緯もあり、Aviraでは無料版ユーザーおよび有料版ユーザーの構成比などは非公表としている。「無料版ユーザーは検知したウイルスの報告などを行ってくれるし、より安心してPCを利用したい有料版ユーザーともに重要であることは変わりません」と、その変わらぬ重要性を指摘する。

日本市場でも「ユーザー重視」を貫く

 日本市場はトレンドマイクロやシマンテックといった大手の存在感が非常に大きい。新興メーカーが太刀打ちできる余地はあるのだろうか。

 アウアーバッハ氏は「市場から学んでいくことが重要」と示す一方で、ヴィッテベーン氏は「競合他社からユーザーを奪うのではなく、良い製品を通じて何よりもまずユーザーを手助けするということが重要」と明言。具体的な販売数値目標なども設けず、あくまで品質に注力するとしている。

 また、製品の提供形態に目を向けると、PCのバンドル版やISPによる月額制有料オプション、もしくはパッケージ版販売などが日本では目立つ。しかし、Aviraの国内展開は現在、ダウンロード配信が中心となっている。

 山本氏は「Aviraが日本進出を決断したきっかけの1つに、無料ウイルス対策ソフトを求めてAviraにアクセスしてくる、つまり、効率よくインターネットを利用したいユーザーが非常に多いことがありました」と説明。利用者像を調査したところ、年齢が高く、ITリテラシーも高い層が多いため、製品の品質が高ければこれらのユーザーが、家族などにAvira製品を勧めてくれるという期待があるようだ。

 さらに、Amazonをはじめとしたネット通販、iTunesなどに代表されるコンテンツのオンライン配信が普及するなど、購買傾向が日本でも変化しつつある。Aviraも当面はダウンロード配信を中心に据えるが、将来的にはさまざまな方向を模索していくという。

日本市場進出のきっかけは、ある1人の日本人ユーザー?!

株式会社アビラ代表取締役社長である山本リチャード氏

 実は、Aviraの日本進出については、ある1人の日本人ユーザーが尽力したという。「数年ほど前ですが、とある日本人ユーザーがAviraの製品を独自にリバースエンジニアリングし、日本語化して、ポータルサイトを作って、デリバリーもしてくれたんです」とヴィッテベーン氏は明かす。約100名の一般ユーザーを招いて開催した日本法人設立1周年記念パーティーには、このユーザーも招いた。

 山本氏は「(急成長は)やはり実際に使っていただき、ユーザーの皆さんに広めていただいたことが大きいでしょう。収益を(広告に回さず)製品開発に再投資することで品質が高まり、その結果、家族やご友人に勧めてもらっているのでは」と分析。アウアーバッハ氏も「マーケティングは確かに素晴らしい手法ですが、ご満足いただいたユーザーの力はそれに勝るのだと思います」と補足、ユーザー志向の重要性を示した。

 今後は、ウイルス対策ソフトの品質はもちろんのこと、ユーザーの意識も重要になってくるだろうとアウアーバッハ氏は指摘する。2010年は、脅迫じみたメッセージでクレジットカード番号などを詐取しようとする「スケアウェア」が台頭。また、ネットの発展によってグローバル化が進み、新手の手口がすぐさま世界レベルで拡散する現状があることを改めて指摘し、「対策ソフトで防御することはもちろん可能ですが、やはり『クリックする前に考えてみる』ということが必要でしょう」と語る。

 また、ビジネス面の展開については、2011年1月に韓国語版のリリースを予定している。アジアでは日本に加え、中国、香港、マレーシアに進出済みで、Avira製品ユーザー約1億人のうち、すでに約30%がアジア圏の利用者という。

 最後に、ヴィッテベーン氏は新製品や新サービスについて、「素晴らしいことがあるだろうなとは思いますが、今はまだお話しできません。しかしながら、ユーザーの皆さんにはより高いレベルのウイルス対策やウイルス修復機能を提供できれば」とコメント。継続的なサービス強化への姿勢を示している。


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(森田 秀一)

2010/12/6 06:00