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日本発の囲碁AI「DeepZenGo」は「プロ棋士と互先で対局できる」レベルへ、11月19日から趙治勲名誉名人と対局実現
2016年11月10日 13:00
株式会社ドワンゴと公益財団法人日本棋院が9日、日本発の囲碁AIを開発する「DeepZenGoプロジェクト」の進捗状況および今後の展開について日本棋院市ヶ谷本院(東京都千代田区)で記者発表会を行った。あわせて「第2回囲碁電脳戦」を11月19・20・23日に開催すると発表した。趙治勲名誉名人が囲碁AI「DeepZenGo」と互先で3局勝負を行う。
DeepZenGoプロジェクトは、今年3月、囲碁AI「Zen」開発者チームの尾島陽児氏、加藤英樹氏を中心に、人工知能の研究者で東京大学准教授の松尾豊氏と同研究室の研究員、将棋ソフト「PONANZA」開発者の山本一成氏、ドワンゴのエンジニアらで発足したもの。
なお、山本氏は将棋プログラム制作との時間の折り合いがつかないため、同プロジェクトから外れることが今回の発表会で説明された。山本氏は「今後もいろいろな形で応援できれば」とコメントしている。
ドワンゴはハードウェアや開発スペースなどの開発環境の提供、松尾研究室の研究員である関根正之氏は、Googleの「AlphaGo」をはじめとした囲碁ソフトの論文から有望な手法を検討し、モデルを作成。日本棋院は棋譜などのデータ提供、対局に必要な棋士を集めた。尾島氏は主にニューラルネットワークの学習、それに伴う本体プログラムの修正・調整、加藤氏はニューラルネットワークの計算、アルゴリズム、GPUで走らせるプログラムを担当した。
現在、打つ手を決める「ポリシーネットワーク」と盤面を評価する「バリューネットワーク」の学習を進めており、実行速度を向上させているという。「AlphaGoの真似ではなく、あくまでZenを強くする方針」で取りかかっており、独自性を出しているようだ。
インターネット対局場「KGS Go Server」におけるZenのレーティングは、9月時点で7dから10dに昇段。Eloレーティングでは、プロジェクト開始時のバージョン11.4では2400~2500だったのがバージョン12.4では3000に到達した。昨年末、AlphaGoがプロ棋士であるファンフイ氏に勝利した時点の能力に値するという。
関根氏によると、プロジェクト開始時から短期間で強くなったとみているが、「まだまだやってみたい有望な手法がたくさん残っている」としている。
同プロジェクトでは、「プロ棋士と互先で対局できる資格は得た」と判断。現時点のAlphaGoのレーティングは3600前後と言われているが、川上氏は「近いうちにZenも李世ドル氏と対局した3月時点のAlphaGoの強さに到達できるのではないか」とみている。
11月19日から「第2回囲碁電脳戦」開催、趙治勲名誉名人との三番勝負を実現
プロ棋士と互先で対局できるという判断から、11月には趙治勲名誉名人との対戦を行うことが決定した。「第2回囲碁電脳戦」では、対局直前まで開発を続けて棋力向上を図るとしている。なお、ニコニコ生放送で全局中継する。
ドワンゴでは、将棋でも同様の試みとして「将棋電脳戦」を実施してきたこともあり、川上氏は囲碁での実践をかねてより熱望していたようだ。同氏は「プロ棋士と互先で対戦するに値する実力になったことを示すため」の対局になると捉えている。趙治勲名誉名人については、「現役でもトップレベルの実力を持っていること、コンピューターとの対戦という新たなことに挑戦する意欲のある世界的にも知名度を持つ棋士と対局できることを非常にうれしく思う」とコメントしている。
加藤氏は、「三番勝負になるが、もう少し欲しいところ。ひょっとすると3連敗になるか、どちらかに偏る可能性もある。しかし、我々としては残り10日間できる限りのことをする。一番うれしいのは趙氏と対局できること」と述べた。
趙氏はZenについて、「3月の時点では小学生のようにかわいいものだったが、半年程度で博士になったような感じ。かわいい子ではなくなって少し憎たらしい」としておきながらも、「人間と打つのは飽きてきたので、コンピューターと対局できるのは楽しみ」とコメントした。