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モリサワのフォントデザインコンペ、受賞の「しまなみ」「Vonk Regular/Italic」が製品化へ

 株式会社モリサワは11日、「タイプデザインコンペティション2016」各賞受賞者の表彰式を開催した。

 タイプデザインコンペティション2016では、2016年5~7月に世界49カ国・地域から受け付けた和文部門205点、欧文部門534点の作品に対し、独創性や審美性を追究した作品が対象の「モリサワ賞」金・銀・銅賞・佳作、製品化にふさわしい作品が対象の「明石賞」、ウェブによる「ファン投票」の各賞が2016年12月に発表されている。モリサワ賞和文部門の受賞作は以下の通り。

金賞「しまなみ」松村潤子氏
銀賞「月映え」小澤直子氏
銅賞「なつめM/B」豊島晶氏
佳作(左から)「雁楷書」大庭三紀氏/「tgk02」ヨコカク氏/「くれとんぼ」多田遼太郎氏
左から金・銀・銅・佳作の各和文部門受賞者の皆さん。

 モリサワ賞欧文部門の受賞作は以下の通り。

金賞「Vonk Regular/Italic」バルト・ヴォレブレヒト氏(オランダ)
銀賞「Rododendron」イトカ・ヤネッコヴァ氏(チェコ)
銅賞「Abelha」ミシェル・デール氏/ジュリアン・プリエ氏(フランス)
佳作(上から)「Edna」レイモンド・シュローダー氏(ドイツ)/「Newline」クリスチャン・メンゲル氏(スイス)/「TroisMille」マーク・ルオー氏(フランス)
左から金・銀・銅の各欧文部門受賞者の皆さん。

 ウェブによるファン投票和文・欧文部門の得票上位作品は以下の通り。

1位「間取りフォント」竹上紗矢香氏(日本)/2位「涙体」楊宗烈氏(台湾)
1位「Legilux」アントニア・コーネリオス氏(ドイツ)/2位「Untitled」デズモンド・ウォン氏(アメリカ)

 受賞すると、2年以内にフォントが製品化される「明石賞」の和文部門はモリサワ賞和文部門金賞の「しまなみ」松村潤子氏、同欧文部門もモリサワ賞欧文部門金賞の「Vonk Regular/Italic」バルト・ヴォレブレヒト氏(オランダ)が受賞している。

 和文部門金賞を受賞した松村氏は、「しまなみ」というフォント名について、旅好きでよく足を運んでいる尾道市から愛媛への「しまなみ海道」に由来するとし、「風光明媚な場所で、日本のきれいな美しい風景、旅情、郷愁を表現する媒体に使われることをイメージして制作した。幻想的な物語の本文が組まれることも考えた」と述べた。

 松村氏は、今回初めてフォント開発に取り組んだとのことで、現在は製品化へ向け、モリサワグループでフォント開発を担当しているモリサワ文研株式会社と、追加分となる主に漢字の制作を進めているという。

明石賞和文部門金賞を受賞した松村潤子氏

 欧文部門金賞を受賞したバルト・ヴォレブレヒト氏は、「Vonk Regular/Italic」について、ハーグでのタイプメディアにおける修士課程で取り組んだプログラムであることを明かし、さまざまなアイデアやスケッチの上でフォントが完成したことをに触れ、「指導教授や仲間の生徒が自分をプロフェッショナルのレベルに引き上げてくれた」と感謝を表した。

明石賞欧文部門金賞を受賞したバルト・ヴォレブレヒト氏

 表彰式では、審査員長を務めたマシュー・カーター氏が、受賞者にトロフィーと表彰状を贈った。カーター氏はコンペのミッションについて「現代の作品の中でも最高のものを集め、高い国際的スタンダードを築くこと」とし、「(タイプデザインコンペティションが)新シリーズとなった2012年、2014年に続いて3回目のコンペでは、モリサワが多くの学校などを周る世界ツアーを行ったことで認知度が上がり、今回は前回と比較しエントリーが倍増した。今回、審査員も多くのエントリーから選べたのは幸せなことだった。流行だからといって1つのスタイルに限定されず、バラエティに富んだ受賞作が出たことも健康的なサイン」と述べた。

「タイプデザインコンペティション2016」の審査員長を務めたマシュー・カーター氏

 モリサワ代表取締役社長の森澤彰彦氏は「今回の応募総数は前回の2倍となる739点で、中断していたが活況を呈してきた」と述べた。現在同社が提供するフォントのサブスクリプションサービス「MORISAWA PASSPORT」では、170言語のフォントが利用できることに触れ、「今後もさまざまな言語に対応しバリエーションを増やす」とした。

株式会社モリサワ代表取締役社長の森澤彰彦氏