“アニメの殿堂”で若手の人材育成を、漫画家の松本零士氏が期待
国立メディア芸術総合センター(仮称)設立準備委員会(第2回)の様子 |
マンガやアニメ、ゲームなどを収集展示する拠点施設「国立メディア芸術総合センター(仮称)」設立に関する準備委員会の第2回会合が8日に開かれた。会合では関係者からのヒアリングが行われ、漫画家の松本零士氏が「若手の人材育成につながる施設にしてほしい」などと述べ、メディア芸術総合センターの設立に期待を示した。
松本氏は、日本のマンガ・アニメ業界が未曾有の危機を迎えていると前置きした上で、人材を育成できなければ「マンガ大国が壊滅的な打撃を受ける」と指摘。メディア芸術総合センターでは、若手の人材育成につながる「未来への触媒」のような方向性で事業内容を検討してもらいたいと話した。
さらに松本氏は、マンガに対して「無限大の侮辱の念」を持っている人が多いとコメント。こうした「巨大な偏見」を払拭しなければマンガ業界の将来の見通しは厳しいと述べ、メディア芸術総合センターでは、展示物を通じて来場者に漫画のマンガや未来を感じてもらった上で「何らかの触媒を受け取ってもらいたい」と要望を語った。
松本氏とともにヒアリングに招かれた映画監督の樋口真嗣氏は、メディア芸術総合センターについて「国民は“国営漫画喫茶”という印象しか抱いていない」と指摘。最近では「与野党の政争の道具になってしまった」と苦言を呈し、「悪い印象をぬぐえなければ、(一度計画を廃止して)リスタートすべきだ」と提案した。
「まずは、国民の悪い印象を取り除くべきだが、現状は善後策に追われているようで、『もっと大胆に変えられないのか』と感じる。施設が必要という思いはあるが、計画を進めるのであれば、徹底的にやってもらいたい。このままズルズルと玉虫色で計画を進めるのではなく、国民に納得してもらうことが必要だ。」
会合ではこのほか、漫画家のさいとうちほ氏が「“国営漫画喫茶”という言葉が国民へのインパクトになっている」と述べ、現在は仮称となっている施設名を一般から公募してはどうかと提案した。この発言を受けた文化庁の事務局は、7日に開設した公募サイトを通じて、施設の名称についてもアイデアを送ってほしいと呼びかけた。
準備委員会では、7月中に基本計画案をとりまとめる予定。8月には基本計画案を踏まえた企画提案が行われ、10月には採択・決定される。10月以降は、建設業者や管理運営団体を公募し、工事に着工するという。第3回会合は7月10日に開催され、今回と同様に関係者からのヒアリングを実施。エンターブレインの浜村弘一社長らが意見を述べる予定だ。
メディア芸術総合センターは、2009年度補正予算に117億円が盛り込まれている。同センターをめぐっては、民主党代表の鳩山由紀夫氏が「アニメの殿堂」や「巨大な国営漫画喫茶」などと指摘。「漫画喫茶の民業圧迫になる」と批判するなどして、予算の見直しを訴えている。
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(増田 覚)
2009/7/8 16:00
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