「Baidu モバイル」日本で提供開始、絵文字の検索にも対応


 バイドゥ株式会社は28日、日本のモバイル検索市場に参入すると発表した。同日、携帯電話向け検索サービス「Baidu モバイル」ベータ版の提供を開始した。モバイルサイトのほか、PC向けサイトや画像、動画の検索に対応する。絵文字の検索に対応したことなどが特徴という。

現在、絵文字で検索したいというユーザーはいないが……

「Baidu モバイル」ベータ版トップページ

 「Baidu モバイル」では、キーワードを入力することで、モバイルサイト、PCサイト、画像、動画を横断的に検索し、その結果を1画面に表示する。キーワードによっては画像や動画を上位に表示するようにしており、例えば「富士山」で検索すると、いちばん上に富士山の画像が3枚、次いで関連性の高いモバイルサイトが最大10件、PCサイトが最大10件、最後に動画の順で表示される。

 「Baidu モバイル」の特徴の1つとして挙げている絵文字への対応では、例えば、飲食店を検索する際に、キーワードとして「電話番号」という文字列を付加する代わりに、携帯電話の形の絵文字を入力して検索することが可能だ。

 バイドゥによると、モバイルサイトの中には、店舗の電話番号を表すのに、「電話番号」という文字列ではなく、携帯電話の形の絵文字だけを使っている場合も多いため、従来のように「電話番号」というキーワードだけではヒットしない場合もあるという。「Baidu モバイル」では、「電話番号」というテキストと、携帯電話の形の絵文字を同義語として扱うことで、こうした問題に対処した。

 絵文字は、検索結果画面のスニペット内にも表示される。電話などの絵文字のほか、ビル(建物)のマークや、サービスメニューのアクセスキーを示す番号の絵文字なども表示されるため、スニペットから内容を判断しやすいというメリットもある。バイドゥでは、絵文字そのものを検索するようなユーザーはいないとみているが、こうしたユーザビリティの面で絵文字対応が重要だと説明している。


横断検索の検索結果ページ検索結果ページでの絵文字表示

独自のトランスコーダーで、PCサイトも表示可能

 「Baidu モバイル」では、画像や動画も含めて検索できる「ワンボックス横断検索」がデフォルトだが、「Baidu モバイル」のトップページにあるプルダウンメニューで「モバイル」「PC」「画像」「動画」を選択すれば、それぞれの項目に限定した検索も可能だ。

 このうち「PC」検索は、すでにバイドゥがPC向けサイトで提供しているWeb検索機能を携帯電話向けに提供するものだ。独自のHTMLトランスコーダーを用意したのが特徴で、モバイルサイトが用意されていないサイトでも、HTMLを変換してすばやく表示するようにした。

 「画像」検索は、PC向け検索サイトのAPIを使用したもの。検索結果は、QVGA画面に収まるページに9件のサムネイル画像を表示する。プレビュー画面では、サイズの大きい画像も携帯電話からすばやく閲覧できるよう、リサイズする機能も備えた。

 「動画」検索は、バイドゥのPC向け検索サービスで好評の機能だというが、「画像」検索と異なり、「Baidu モバイル」独自のインデックスを構築した。Web上の動画のうち、携帯電話から視聴できるものだけを検索対象としており、網羅性でもトップクオリティだとしている。


画像検索の検索結果ページ動画検索の検索結果ページ

日本の文化を理解することで、モバイル検索の「地産・地使用」

バイドゥ株式会社プロダクト事業部の前川英之氏
バイドゥ株式会社プロダクト事業部の水野貴明氏

 バイドゥ株式会社プロダクト事業部の前川英之氏は、「日本のモバイルWebは“ガラパゴス”などと呼ばれるが、絵文字など、世界にはない独自の文化が芽生えている」と説明。そうした日本の文化を理解することが、よりよいモバイル検索を実現することにつながるとして、開発方針として、本社で開発したサービスを各国でローカライズする方式とは異なる「ローカルプロデュース・ローカルユース:地産・地使用」というアプローチを紹介した。

 「Baidu モバイル」の開発にあたっては、リサーチやユーザーへのグループインタビューを行い、検索結果のクオリティや検索・表示速度などのほか、日本のモバイルWebのユニークな点でもある絵文字への対応にもフォーカスした。

 前川氏によると、日本ではメールで絵文字を使う人が多いが、Webサイトにおいても多用されていることがリサーチで判明したという。その数はバイドゥが予想していた以上に多く、同社がクロールしているモバイルサイトのうち、40%のページが絵文字を使っていたとしている。「従来のモバイル検索では絵文字を無視していたが、バイドゥでは、これだけたくさん使われている絵文字も重要な情報と考えた」。

 同じくプロダクト事業部の水野貴明氏は、「Baidu モバイル」では「特に奇をてらったことがあるわけではない。よりよい検索とは何かを考えて開発した」と説明する。しかし、同社初のモバイル検索サービスを開発するにあたっては、いくつかの問題にも直面したという。

 例えば、絵文字はキャリアごとに独自のものがあり、Webページにどのキャリアの絵文字が埋め込まれているか独自に解析する必要あった。また、検索インデックスを構築するにあたっては、Webページのリンクをたどってクロールしていく方法がとられるが、モバイルサイトは携帯キャリアの公式サイトが中心となっており、外部リンクが少なく、リンクが偏っているのが特徴という。60%のリンクを0.4%のサイトが占めているとしている。

 さらに、モバイルサイトならではのスパムぺージや携帯電話での閲覧用に細かく分割されたページなど、検索結果にそぐわないページを判定するにあたって、PCサイトとの構造の違いも課題になった。モバイルサイトは内容がシンプルなため、公式のオンラインショッピングサイトと、そのアフィリエイトサイトを判定しにくいという面もあるという。

 水野氏は「これまでのセオリー通りにまじめに作ってきた。ようやくスタートラインに立つことができた」と述べる。前川氏も「ユーザーのフィードバックを得ながら、日本で最も使いやすい、いい情報を得られる検索エンジンを目指していきたい」と述べた。

モバイル検索では「最後発のデメリットはそれほどない」

バイドゥ株式会社の井上俊一代表取締役社長

 バイドゥ株式会社の井上俊一代表取締役社長は、日本のモバイルサイトがこれまでキャリアの用意した公式サイト中心だったのが、一般サイトの重要性が増している流れの中で、「検索サービスを使わないとユーザーの求めるサービスが見つからなくなってきており、検索ニーズがまだまだこれから高まってくる」と指摘する。しかしながら、現状のモバイル検索サービスはクオリティが高くないため、「バイドゥは最後発だが、まだ間に合う」と述べる。

 井上社長は、その例として、NTTドコモの公式検索エンジンの検索結果ページの下部に表示される、他の検索エンジンへのキーワード引き継ぎ機能を挙げた。これには現在、Yahoo!モバイルやGoogleモバイルなど、14社が表示される。井上社長は「昔のPCの検索エンジンの状態。逆に言えば、まだ今なら誰でもできるということ」とし、最後発のバイドゥにとっても参入の余地があるとともに、これらが最終的に淘汰されていく中でバイドゥが生き残っていきたい考えを示した。

 井上社長はまた、Webコンテンツが今後も増大し、同時にリッチコンテンツ化が進めば、「大規模に検索エンジンを開発できる企業は、Google、Microsoft、Baiduぐらいしかなくなってくる。我々への引き合いも増えており、Baiduのプレゼンスが確実に上がっていることを実感している」という。

 なお、PC向け・モバイル向けの広告プラットフォームについては、今後、展開していきたいというが、具体的な時期については未定だとした。中国では検索以外のさまざまなサービスを展開するBaiduだが、日本では検索などプロダクトを絞り、「まずはクオリティを上げ、ユーザーと認知度、パートナーを獲得する」という。「バイドゥの認知度が低いことは認識しているが、モバイル検索市場はこれからポジティブスパイラルに入っていく段階。後発であることのデメリットそれほどない。今後、簡単で便利なモバイル検索の実現を目指していく」と語った。


関連情報


(永沢 茂)

2009/9/28 16:32