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著作権侵害にあえぐアダルト業界、ファイル共有ソフト対策に着手


 アダルトコンテンツのメーカー2社が2月末、ファイル共有ソフト「Share」を使ってアダルトビデオを権利者に無断でアップロードし、不特定多数の人にダウンロードさせていた会社員を、北海道札幌方面東警察署に刑事告訴した。

 この会社員はすでに2月16日、Shareを使って映画などの著作物を不特定多数の人がダウンロードできるようにしたとして、同警察署に著作権法違反などの疑いで逮捕、3月8日に起訴されていた。さらに3月10日には追送検された。

 刑事告訴した2社は、アダルトコンテンツのメーカー102社が加盟する業界団体「コンテンツ・ソフト協同組合(CSA)」の加盟企業。CSAは、ファイル共有ソフトによる著作権侵害対策で実績のあるコンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)の協力を仰ぎ、アダルトビデオのファイルを最初にShareのネットワーク上にアップロードした人物を特定した。

 CSAによれば、Shareを悪用したアダルトビデオの著作権法違反の摘発は初めて。ファイル共有ソフトをめぐっては、音楽や映画、ゲームなどの著作権侵害が問題視されているが、アダルトコンテンツの海賊版調査を行うCSAでも2009年以降、対策に乗り出していたという。

ファイル共有ソフトの利用目的、「アダルト映像」が2位

 ACCSなど著作権関連3団体が2009年9月に実施した「ファイル共有ソフト利用実態調査」によれば、ファイル共有ソフトを利用する理由・目的(複数回答)のトップは「多くの音楽ファイルがダウンロードできる」で52.4%。次いで多かったのが「アダルト映像がダウンロードできる」で24.2%だった。

 また、2009年10月にShareで実際に流通しているファイル2万件を調査したところ、アニメやコミック、音楽など「著作物と推測されるもの」が52.7%を占め、そのうちの98.2%は権利者に無許諾で送信されていると推定されるものだったという。アダルトコンテンツも32.2%あったが、ACCSなどでは権利の所在が判別できなかったため、それらアダルトコンテンツの権利に関する調査は見送った。同調査では「Winny」で流通するファイル2万件も分類しており、やはり権利の所在については判別しなかったが、アダルトが28.5%を占めることもわかった。

 CSAによると、これらファイル共有ソフトで流通するアダルトコンテンツの大半はメーカーが著作権を持つ著作物だとしており、実写の映像のほか、アニメやゲームなど多岐にわたる。被害金額について正確な数字は出ていないが、CSAの松本栄一事務局長は「年間で数千億円に上るのではないか」とみている。

 ただし、著作権侵害に対するメーカーのとらえ方には温度差がある。例えば、CSAに加盟する大手メーカーは「ビジネスが立ちゆかなくなる」と危機感を抱く一方で、権利侵害の対応などに人員を割けない小規模メーカーは「別に構わない」と黙認するケースも少なくないという。

Shareコンテンツ流通状況(ACCSなどが実施した調査結果より) Winnyコンテンツ流通状況(ACCSなどが実施した調査結果より)

“ダウンロード違法化”後も著作権侵害は続いている

 2010年1月1日以降、権利者に無断でアップロードされている音楽や映像を、著作権を侵害した配信であると知りながらダウンロードする行為が違法となった。いわゆる“ダウンロード違法化”を盛り込んだ改正著作権法が施行されたためだ。しかし、「現在もファイル共有ソフトによるアダルトコンテンツの著作権侵害は行われている」と松本氏は指摘する。

 「一部のファイル共有ソフト利用者は、『アダルトビデオをダウンロードしても著作権侵害で訴えられることはない』という間違った認識を持っています。しかし、アダルトビデオは『映画の著作物』であり、無断でアップロードしたり、それを違法と知りながらダウンロードすることは違法です。」

 一部では、インターネット上に無断でアップロードされた音楽や映像が、プロモーションにつながるという声もある。この点について松本氏は、「音楽であれば海賊版をきっかけにアーティストのファンになり、正規品を購入する人もいるかもしれないが、同じ作品を繰り返し見る人が少ないアダルトビデオに限っては当てはまらない」と否定する。

「若者のアダルトDVD離れ」も

CSA事務局長の松本栄一氏

 松本氏によれば、アダルトビデオ業界の市場規模は「少なく見積もっても年間4000〜5000億円」。不況に強いといわれるアダルト産業だが、収益の大半を占めるパッケージ商品の売り上げが伸び悩むなど、市場規模は減少傾向にある。一部メーカーはストリーミングやダウンロード配信などに力を入れるが、「それでも売れているわけではない」。

 アダルト動画は「ネットでタダで見るもの」と考える20〜30代が増え、「若者のアダルトDVD離れ」が進んだことも、市場規模縮小の要因の1つだと松本氏は指摘する。CSAとしては今後、海賊版撲滅を社会にアピールするとともに、著作権侵害の実態調査などを継続し、メーカーを支援していく考えだ。

 「アダルトコンテンツも音楽や映画と同じように、お金を払っていただけるユーザーがいるからこそ、良質なコンテンツを作ることができるのです。メーカーは、作品によっては1本あたり数百万円を投じており、著作権侵害が横行すれば新たなコンテンツを作れなくなります。それは結果としてユーザーに返ってくるのです。」


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(増田 覚)

2010/4/1 06:00