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Google Books、iPadが採用する電子書籍フォーマット「EPUB」現状
〜日本電子出版協会EPUB説明会


JEPA副会長兼プラットフォーム研究委員会 委員長の下川和男氏

 日本電子出版協会(JEPA)は7日、無料のEPUB説明会を開催した。EPUBはGoogle、Apple、Adobe、ソニー、B&Nなど電子出版関連事業を手掛ける各社が採用した電子出版フォーマットで、現在のバージョンはEPUB 2。説明会では、EPUBの経緯や概要、EPUB 3で実装される日本語要求仕様案の概要説明のほか、JEPA会員社によるEPUB関連事例や、EPUBソリューションの紹介が行われた。なお、説明会の資料はJEPAサイトですべて無償公開されている。

 説明会ではまずJEPA副会長兼プラットフォーム研究委員会 委員長の下川和男氏が挨拶に立ち、「EPUBはGoogle BooksやiPadでの対応が表明されて注目を集めています。Google、Apple、Adobe、ソニーが採用するのだからすごいものなんだろう、と思われる方も多いようなのですが、実際にはまだまだ非常に基本的な部分に取り組んでいる、いわば叩き台の段階です。今日はみなさんに現状を知っていただいて、これから規格化していく部分もあるので、出版に携わるみなさんにいろいろな意見をお寄せいただき、議論を喚起するきっかけにしたいと考えています」と述べ、日本語特有の問題に対する規格化の部分などで、広く現場の意見を求めていることを強調した。

急激に注目度の高まった「EPUB」とはなにか

EPUBの現状について解説を行ったJTBパブリッシング 井之口正之氏

 EPUBの現状について、JTBパブリッシングで「るるぶ」の編集を担当している井之口正之氏が解説を行った。井之口氏はまず、Googleインサイトで「EPUB」というキーワードの検索数を調べたグラフを示し、2009年秋ごろから急激に検索が増えており、注目を集めていることがわかるとした。

 2009年に注目を集めるきっかけとなった事象としては、2009年8年にEPUB形式でGoogleが百万タイトルのGoogle Booksを公開したこと、2009年10月に発表されたInternet ArchiveのBookServer構想でもEBUB採用が表明されたこと、さらにGoogleがGoogle Editionsを発表し、Google EditionsでもEPUBでのアップロード・ダウンロードに対応することが明らかにされたことを挙げた。

 さらに2010年1月にはアップルがiPadを発表、iBookStoreでEPUBフォーマットが採用されることが明らかになった。3月には、EPUBフォーマットの電子書籍はiBookStore以外のものも、iTunes経由でiPadで利用できることが発表された。また、1月のCESでは多数の電子書籍端末が発表されている。

 こうして注目を集めるに至った「EPUB」は、IDPF(International Digital Publishing Forum)が策定した電子書籍の標準フォーマットで、仕様は一般公開されている。

 井之口氏は、「EPUBは、HTMLやWebブラウザソフトのオープン性を保持しながら、インターネット接続が切断された状態のPDAやノートパソコンなどでも読書が継続できるよう、ダウンロード配信を前提にパッケージ化された。XHTMLのサブセット的なファイルフォーマット」と概要を紹介。

 EPUBフォーマットのファイル拡張子は「.epub」で、zip形式で圧縮されている。一般的なzip対応の解凍ソフトウェアで解凍可能で、解凍すると、.xhtmlや.css、画像ファイルなど、通常のWebサイトと同じようなコンテンツが入っている。

 EPUBの仕様書は、コンテンツの標準的な記述方法に関する仕様を規定するOpen Publication Structure(OPS)、メタデータ関連の仕様を規定するOPF(Open Packaging Format) 、パッケージングに関する仕様を規定するOpen Container Format(OCF)の3つに分かれており、最新バージョンは、OPSとOPFが2.0 v1.0、OCFが1.0となっている。

 仕様書は従来英語版しかなく学ぶにはハードルが高かったが、2009年10月にJEPAの高瀬氏が翻訳した日本語版が公開された。

 Webブラウザーでは現在XHTML 5対応のブラウザーへ世代代わりしようとしているが、EPUBではXHTML1.1がベースになっており、CSSもWebではCSS 3へ移行しつつあるが、EPUBはCSS 2がベースになっている。

 DRM(Digital Rights Management、デジタル著作権管理)については、パッケージングについて定義したOCF1.0でDRM情報のためのファイルがオプションで規定されているものの、DRM自体のフォーマットは未定義となっている。このため、ソニーは、AdobeのコンテンツサーバーのDRMを採用し、AppleはQuickTimeマルチメディア技術に内蔵されるDRM技術「FairPlay」を使うなど、各社がそれぞれに対応している状況だという。

Google BooksやInternet Archive、iPadなどのEPUB対応発表で2009年後半から、急激に注目度が上昇した EPUBの仕様書は、3つの仕様書からなり、コンテンツ記述について規定しているのがOPSとなる .epubフォーマットの文書はzip圧縮されている。DRM保護がないファイルでは、拡張子を.zipに変更すれば解凍ツールで解凍できる

 井之口氏は、EPUBの特徴として、「オープンなフォーマット」「Web制作との親和性(XHTML、CSSなど)」「テキスト系コンテンツに適する(=レイアウトが凝ったものなどは比較的苦手)」の3点を挙げた。このため、画像メインなら画像やPDF、テキストメインならEPUBが適しているとした。

 EPUBでは基本的に、画像やPDFとは事なり、固定されたページの概念がなく、様々なデバイスのディスプレイサイズ、フォントサイズに応じて適切な読み方が出来るよう流し込む(表示する)ことができる。これを「リフロー」と言うが、このため、ユーザーは自分の好みのフォントサイズや行間などを指定して表示することも可能になるが、一方で制作側がページ単位で画像や図版を配置したページレイアウトをしても、意図通りに表示することができなくなる。

EPUBフォーマットのポイント。XHTML、CSSをベースとしているため、Webコンテンツとの親和性が高い EPUBの特徴であるリフロー。端末の解像度やフォント指定、フォントサイズ指定により流し込みを自動で行うため、フォントサイズなどを好みに合わせることができる一方で、ページ単位のレイアウトには不向き 現在のEPUB 2.0はXHTML 1.1、CSS 2などWebではひと世代前の規格に準拠している

EPUBの現状〜制作環境、再生端末、再生環境

 EPUBの制作環境について井之口氏は、EPUBを手書きする、青空文庫用の変換ツールを使う、EPUB用オーサリングツールを使う、Adobe Indesign CSでEPUB形式で書き出すなどの方法があると説明した。オーサリングツールでは、4月1日にフューズネットワークが「FUSEe(フュージー)という日本語対応のEPUBオーサリングツールを発表し、ベータ版を試験的に無償公開している。

 再生環境では、まず電子書籍端末では、Amazon Kindleを除く主要製品はほとんどEPUBをサポートしている。以前からEPUBをサポートしているソニーの「Sony Portable Reader」は米国では35%のシェアを占めており、2010年は40%を目指すと表明しているという。前述の通り、iBooksのフォーマットはEPUBを採用しており、DRMなしのEPUBコンテンツもiTunes経由で利用可能となる。

 PCの電子書籍リーダーソフトでは、「Adobe Digital Editions」「eBook Library Software:The eBook Store at Sony」「Lovely Reader」「Lexcycle Stanza」などがある。「Lexcycle Stanza」はiPhoneアプリ版の電子書籍リーダーがよく知られているが、PC版ではPDFをHTMLに変換する機能なども備え、フォーマット変換用途にも使えると紹介された。

 また日本では、ACCESSが2009年12月に縦書きをサポートしたEPUB規格準拠の電子書籍ビューワー「NetFront Book Viewer EPUB Edition v1.0」を発表。2010年初頭より、国内外の通信事業者や端末メーカー、コンテンツプロバイダーに向けて提供を開始した紹介した。

 ACCESSのEPUBビューワーは、日本語だけでなく、中国語(簡体字・繁体字)、韓国語の縦書きテキストの表示をサポート。しおりの挿入、メモの追記、本文へのハイライトなどの機能も搭載している。

約50種の電子書籍端末のうち、40機種がEPUBをサポートする 電子書籍リーダー「Adobe Digital Editions」 電子書籍リーダー「eBook Library Software:The eBook Store at Sony」
電子書籍リーダー「Lovely Reader」。縦書きをサポートする iPhoneアプリでも人気の「Lexcycle Stanza」 ACCESSの電子書籍ビューワー。携帯電話などで広く採用されている家電・情報端末向けブラウザ「NetFront Browser」のエンジンをベースとしている

 Webブラウザー上で閲覧するオンライン・リーダーでは、オライリーが提供する「Bookworm」や、今年3月にiPadに対応した「Ibis Reader」を紹介。そのほかにも、今年3月にリリースされたオープンソースの電子書籍リーダー「Monocle」、Firefoxアドオンの「EPUBReader」などが紹介された。

 電子書籍コンテンツを提供するオンラインサービスでは、Google Booksをはじめとして、Internet Archivesが2009年10月に「Bookserver」構想を発表。Bookserverプロジェクトには、2010年2月にボイジャーが正式メンバーとして参加することが追って発表された。また、ユーザーが電子ブックをアップロードして販売できるサイト「Scribd」も、従来はPDFベースだったが、EPUB形式に切り替えることを2010年2月に表明した。

 なお、JEPAの資料ダウンロードページから、セミナー資料が公開されている。井之口氏の講演資料は、最新のEPUBをとりまく状況を日本語でまとめられた資料として貴重なものと言える。EPUBや電子出版に興味のある方は一読することをおすすめしたい。

電子書籍オンラインリーダー。オライリーが提供する「Bookworm」 電子書籍オンラインサービス「Google Books」。2009年8月にEPUB対応を発表。同時に100万以上のパブリックドメインコンテンツをEPUB形式で公開、ダウンロード可能になった 個人も電子書籍をアップロードして直接読者に売れる電子書籍の取次・販売サービス「Scribd」。今年2月に、PDFからEPUBへ切り替えると発表した

関連情報

(工藤 ひろえ)

2010/4/8 13:12