書籍不正コピー検出の米Attributorが日本進出へ、2chに「ニーズ直感」


 書籍や雑誌、ニュース記事などオンライン上のテキストコンテンツの不正コピーを検出する米Attributorが、日本進出の機会を伺っている。世界中で400億件以上のWebページをインデックス化し、「100%正確に不正コピーを検出する」というソリューションの特徴について、同社幹部に話を聞いた。

不正コピーを「2~3文のレベル」で検出

共同創業者兼CEOのジム・ピトコー氏(左)と経営・事業開発担当顧問のマット・ロビンソン氏

 Attributorは2005年にカリフォルニア州で設立。オンライン上で不正コピーされている書籍や雑誌、ニュース記事を検出するソリューション「Guardian」を提供している。導入実績は非公表だが、Financial TimesやHachette Book Groupなど大手の新聞社や出版社などが利用しており、法人向けの利用料は年間数万~数十万ドル、ブロガーなど個人向けのプランも用意する。

 Guardianを導入するクライアント企業は、書籍や雑誌のメタデータ(タイトル、著者名、ISBNなど)や記事のフィードをAttributorに提供する。Attributorはアップローダーサイトやファイル共有サイト、ブログやSNSなどのページインデックスをもとに、独自開発のクローラーで不正コピーを検出している。

 独自クローラーは日本語による不正コピーの検出にも対応。現在は、英語やフランス語、ドイツ語、スペイン語、中国語、韓国語など18カ国語をサポートしている。

 検出できるテキストコンテンツは、ダウンロード可能なファイルや同ファイルへのリンクのほか、ニュース記事の全文または部分的な不正コピー。Attributor共同創業者兼CEOのジム・ピトコー氏によれば、部分的な不正コピーについては「2~3文のレベルから検出できる」。

 不正コピーの判定条件はクライアント企業が決められる。具体的には、「全文がコピーされているか」「元のコンテンツへのリンクがあるか」「不正コピーを掲載するWebページに広告があるか」といった条件などだ。「記事全文の3割までのコピーであれば許可する」といった柔軟な設定にも対応する。

100%正確にWeb上の99%をクローリング

「Guardian」サービス概要

 Attributorでは、クローリング対象ページを毎日約1億件ずつ追加し、現在では約400億件をインデックス化。Attributorの経営・事業開発担当顧問を務めるマット・ロビンソン氏は「100%正確にWeb上の99%をクローリングできる。我々が見つけられなくて、クライアント企業だけが見つけられる不正コピーは存在しない」と胸を張る。

 また、不正コピーとして検出したページについては、Attributorのスタッフが目視で確認するため「誤検出は100%ない」(ロビンソン氏)。不正コピーの検出後は、サイト管理者に対して未許諾コンテンツが使用されている旨の通知文を送付。現在、1カ月あたり約1万件の通知文を送っており、99%以上の確率で削除が成立しているという。

 これまでの実績では、通知文を受け取った人の84%はライセンスに応じる、または不正コピーしたコンテンツを自ら削除するなど何かしらのアクションを取る。残りの15%に対しては、不正コピーを掲載するWebページを検索エンジンのインデックスから除外してもらったり、広告を掲載するWebページについてはGoogleやYahoo!などの広告ネットワーク側に広告掲載を停止してもらう。削除に応じない場合は、法的措置を取るなどして、最終的には不正コピーしたコンテンツが削除されるという。

 不正コピーが削除されなかった1%に該当する事例としては、海賊版コンテンツの検索・ダウンロードサイト「The Pirate Bay」を提供していた、スウェーデンのGlobal Gaming Factoryを挙げる。しかし、ピトコー氏は「彼らは海賊版を擁護する信念の持ち主。現在も多くの企業から訴えられている」として、あくまで"例外"だとしている。

iPad発売をきっかけに書籍の不正コピーが増加

 Attributorが1月に発表した調査結果によれば、「RapidShare.com」など25の主要アップローダーサイトにおける書籍の不正コピーによる潜在的な損失額は、27億5000万ドルから30億ドルに上る。これは米国書籍市場の年間売り上げの約1割に相当する。最近ではiPad発売をきっかけに、書籍の不正コピーが増加傾向にあると、ピトコー氏は語る。

 日本市場の視察で来日したという両氏は、「ニーズがあると直感している」と口を揃える。日本についてはファイル共有ソフトにおける不正コピーが多いのが特徴と分析するとともに、「2ちゃんねるでの盗用も認識している」。具体的な日程は未定だが、ベンチャーキャピタルの株式会社ジャフコの協力を受け、日本法人設立も検討中だ。

 「日本進出に先駆けて、まずはINTERNET Watchが我々について書いた記事がどれだけ不正コピーされたかを報告したいと思います。」(ピトコー氏)


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(増田 覚)

2010/6/17 06:00