JAXA、インターネット衛星「きずな」で航行中船舶から37Mbpsの通信に成功


通信実験構成

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)と海洋研究開発機構(JAMSTEC)は18日、超高速インターネット衛星「きずな」(WINDS)を使用して、航行中の移動船舶からハイビジョン映像のリアルタイム伝送実験を行い、最大37Mbpsの高速通信を達成したと発表した。

 実験は、2009年度から実施しているJAXA・JAMSTECの共同研究プロジェクトの一環として、東京海洋大学の協力を得て8月10日~12日に実施。「きずな」の小型アンテナを、JAMSTEC所有の海洋調査船「かいよう」に設置し、相模湾を航行する「かいよう」からJAXA筑波宇宙センターに映像のリアルタイム伝送を行った。

 映像は、JAMSTECが開発する深海自律型無人探査機「MR-X1」で撮影した海中ハイビジョン映像1チャンネルと標準画質映像3チャンネル、船上のハイビジョン映像1チャンネルの合計5チャンネル。映像伝送速度は最大で37Mbpsで、日本近海で船舶に提供されている衛星通信サービスと比べて10倍以上の高速通信を達成した。

 「きずな」は超高速通信を実現するためにKa帯と呼ばれる高い周波数帯の電波を使用しているが、Ka帯は通信ビームの指向性が高いため、通信を行うためにはアンテナの指向精度を±0.3度以内に保持する必要がある。この指向の保持制御を実施するため、「きずな」の小型アンテナを東京海洋大学開発の動揺安定台(船の揺れを吸収し、アンテナの向きを一定に保つ台)に載せて実験を行い、船の位置情報からアンテナの向きを補正する機能を加えたことで、航行中の船舶から安定した通信を実現できたという。

 JAXAとJAMSTECでは、実験により実証された「きずな」による海上からの高速通信技術により、海洋調査や海洋観測機器の遠隔操作など海洋研究の発展や、商船などへのブロードバンドインターネット回線の提供など、海上での通信環境の大幅な改善が期待できるとしている。

「きずな」小型アンテナと動揺安定台深海自律型無人探査機「MR-X1」

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(三柳 英樹)

2010/8/18 18:23