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絵が描けなくても漫画を制作できるソフト「コミPo!」12月発売

3Dキャラの表情やポーズを自由に調整


「コミPo!」のメイン画面

 コミPo!制作委員会(株式会社ウェブテクノロジ・コムの社内組織)は15日、コミックシーケンサーソフト「コミPo!」を発表した。3Dポリゴンでモデリングされたキャラクターのポーズや表情、衣装などを選択し、吹き出し(セリフ)や背景画像を組み合わせることで、絵が描けないユーザーでも漫画を制作できる。シリーズ第1弾として12月中旬にまず「コミPo!基本ツール+学園マンガセット」を発売する。パッケージ版は9700円で「Amazon.co.jp」にて、ダウンロード版は6700円で「Vector」で販売する。

フルカラー漫画をドラッグ&ドロップで制作

「コミPo!」のロゴ

 「コミPo!」は、あらかじめ収録された3Dキャラクターモデルや背景データを組み合わせて漫画を制作する仕組みのため、絵がまったく描けない人でもフルカラーの漫画作りを楽しめる。キャラクターモデルの表情、ポーズは一覧の中から選択するだけ、視点については自由な調整が可能となっている。

 各キャラクターとも外見のカスタマイズに対応。髪型や髪の色、目の垂れ具合、ギャグ調の顔タイプ、輪郭線の太さなどを選択できる。また、眼鏡やアホ毛の追加も可能。衣装については制服、私服の2種類を用意しているが、上半身だけ服を変更するといったことはできない。また、ユーザー自身が作成した3Dキャラクターモデル自体をコミPo!で使用するための機能は、現在のところ搭載されていない。

 背景用画像は2次元の静止画データとして用意されている。教室内の風景のほか、怒りを意味する炎といった心理描写用画像も収録済み。なお、背景については、ユーザー自身が作成した画像を利用可能で、キャラクター描写にフィットするよう、イラスト調に自動レタッチすることもできる。

 吹き出しについてもあらかじめ6パターンを用意。大きさの調整に加え、発言者を示すための“しっぽ”の向きを自由に回転させられる。吹き出し内で利用するフォントについては、Windowsにインストール済みのフォントを自由に利用できる。

 漫画のコマ割りについては、4コマ漫画、ページ漫画用がそれぞれ規定されているが、マウスのドラッグ&ドロップでサイズ調整可能。このほかにも、擬音表現のために吹き出し外で使われる「書き文字」、汗や涙など記号的に表現する「漫符」、迫力を出すための「集中線」などもあらかじめ収録されているので、ユーザーは選んでいくだけで漫画を作ることができる。


発表会中に披露されたメイン画面 漫画のコマ割りもあらかじめ用意されている

 漫画の出力形式はJPEGまたはPNGの画像。ブログをはじめとしたウェブへの公開用途を想定しており、最高設定では縦1500ピクセル程度の画像データを出力可能という。PDFなどに出力形式を拡張するかについては、利用者の声をもとに検討していく。

 なお、「コミPo!」で制作した漫画は、商用利用も可能。あくまでも“ツール”という位置付けであり、コミPo!制作委員会では「当社がユーザー様の制作されたマンガについて、著作権を主張することはありません」としている。同人誌に加え、商業出版への応用にも干渉しない立場をとっている。ただし、「コミPo!」収録済みキャラクターそのものの著作権をユーザー側で主張することはできないと注意喚起している。


3Dモデルを利用しているので、キャラクターの向きを変更可能 表情も一覧から選択するだけ

 3Dキャラクターおよびソフトのイメージキャラクターである「こみぽちゃん」のデザインは、イラストレーターのカントク氏が担当する。2011年1月以降、キャラクター用の服装バリエーションデータ4種をダウンロードコンテンツとして販売する。予価は男女とも各970円で、2011年4月まで毎月1種類ずつリリースする。

 さらに、3Dキャラクターそのものの追加販売も実施する。アニメーターの堀井久美、佐光幸恵の両氏が手がけており、こちらの予価は男女キャラとも各1970円。このほか、無償の追加データ配信も予定している。

 「コミPo!」動作環境について、販売元では「2006年以降発売のPC」としている。具体的な要求スペックは、OSがWindows 7/Vista/XP(SP3)、CPUがPentium4 2.0GHz相当以上、搭載メモリー1GB以上、1024×768ドット以上の画面解像度、グラフィックはVRAM128MB以上、ピクセルシェーダー2.0以上、DirectX 9.0c対応。

 なお、「コミPo!」体験版は、11月上旬をめどに500名限定で配布する予定。募集総数を超える応募があった場合は抽選となる。11月30日までの使用期間制限付きだが、機能制限は基本的になく、制作した漫画の公開も自由。応募は公式サイトにて受け付ける。「コミPo!」パッケージ版の販売については、Amazon.co.jp以外にも順次拡大させる計画だ。

商用利用OK、「素材集として使ってほしい」

 15日には都内で製品発表会が行われた。動作イメージを伝えるプロトタイプ版ソフトの紹介ビデオなどはすでにYouTubeにアップロードされているが、製品版のお披露目はこの場が初という。

 発表会では、コミPo!制作委員会の委員長で、企画&プロデューサーを務める田中圭一氏から製品概要が説明された。田中氏は「ドクター秩父山」などの著作で知られるプロ漫画家で、現在はウェブテクノロジ・コム取締役も兼務する。「1ページ分のカラー原稿を作るには、プロの作家でも速い人で4〜5時間、半日かかる人もいる」と前置きした田中氏は、実際にコミPo!で制作したサンプルを例示し、「これくらいの原稿を10〜15分で仕上げられる」と説明。まったく漫画を書いたことのない人が30分程度で4コマ漫画を制作できた社内実験の実例にも触れ、キャッチコピーである「まったく絵を描かなくても、気軽にポッとマンガが作れちゃう! 夢のコミックシーケンサー」を体現するソフトだとアピールした。


コミPo!の企画とプロデューサーを担当した田中圭一氏 画面左の4コマ漫画は、漫画を一切描いたことのない関係者が30分ほどで仕上げたという

 また、漫画以外にもさまざまな応用が可能である点も指摘。プレゼンテーション資料やウェブサイトのアクセント、学内行事用のポスターにも十分対応可能としている。また、田中氏は「1日の出来事を漫画にしてブログに載せたい人はきっと多いはず。また、漫画制作に興味がなくても、自作小説の挿絵が入るだけでも印象が変わると思う」と解説する。

 制作した漫画の利用については、制限を設けないことが田中氏からも説明された。その上で「(コミPo!は)素材集と同じだと考えてもらえれば。ただ、『このキャラクターの女の子の著作権はオレのものだ』とユーザーが言うことはできない」と補足した。このほか、漫画やイラストの投稿サイトと協力して、コミPo!作品の掲載コーナーも設ける予定。現時点ではTINAMI、パブー、MANGAROOが名乗りを上げている。

 コミPo!では、企業とのタイアップも積極的に検討していく。TVゲームメーカー向けには、すでにゲーム用に制作した3DモデリングデータをコミPo!用に調整し、追加データとして販売するサービスを提案したいという。出版社との連携もさまざまな例が想定されているが、田中氏は1つのアイデアとして、「新連載に登場するキャラクターのコミPo!用データを制作して、ファンによる二次創作を促すような施策も可能ではないか」と話す。

 また、モデリングデータのカスタマイズにも応じることができるため、飲食店の制服、企業マスコット、ゆるキャラなどをモデリングして、セールス現場向けの販売促進用資料などに活かすといったことも可能という。


コミPo!の応用例。こちらは学校行事用ポスター イメージキャラクターの「こみぽちゃん」

 コミPo!そのものの販促にあたっては「キャラクター立てが重要だろうというアドバイスを多くの方々からいただいたこともあり、“主人公”としてこみぽちゃんを設定した」(田中氏)。本名は小石川美保、17歳、家族構成は父・母・兄に愛犬のモモ、好きなものは漫画・アニメ、女の子のオタク友達が多く、天真爛漫だけとちょっと天然と、詳細な設定を用意した。さらに、こみぽちゃんによる“ツイート”も随時行う。

 この意図について、田中氏は「ソフトをいざ買ってみたけど何を描いていいかわかならいというユーザーに対して、『こみぽちゃんを主人公にした漫画を描いてみては』と提案する狙いがある」と説明する。

AKB48 チームAの仲谷明香さんが「こみぽちゃん」の声を担当

 このキャラクター戦略を推し進める一環として、こみぽちゃんの声をAKB48 チームAの仲谷明香さんが担当することも発表された。会場で放映された仲谷さんからのビデオメッセージでは、「コミPo! 応援隊」隊長への就任、音声付き1コマ漫画を12月から週間ペースで連載することも語られた。

 また「中学生でも購入できるように」(田中氏)と、1万円を切る価格帯にした。また2011年春以降販売する追加キャラクターセットは、標準収録のモデリングデータと大幅にデザインタッチを変えることで、さらなるファン層の拡大を狙う。田中氏は「堀井久美さんデザインのキャラは等身が低めでかわいらしく、色合いもセル画風の軽やかな感じ。佐光幸恵さんは『コードギアスの佐光さん』だけに、カッコいい男性キャラ、可憐なキャラで女性ファンを一気に獲得したい」と話している。


堀井久美氏による追加キャラクターの案 佐光幸恵氏によるデザイン案

プロ仕様はあえてカット、誰もがより手軽に漫画制作を

 田中氏による解説および製品デモンストレーション後には、コミPo!開発ディレクターの小野知之氏、収録キャラクターのモデリング担当である西海圭祐氏も参加してパネルディスカッションが行われた。


開発ディレクターの小野知之氏 収録キャラクターのモデリングを担当した西海圭祐氏

 開発のきっかけとなったのは、田中氏が数年来抱いていた構想。「漫画表現を、漫画を描けない人にも味わってもらえないかとずっと考えていた。実際のプロトタイプ版の開発は2008年4月ごろにスタートし、2009年1月にいったん完成させた。コンセプトを示すのが狙いだったが、ここからが試行錯誤の連続だった」と明かす。

 小野氏は「ここから長かった。最大の要因は、製品の完成イメージがスタッフ間でそれぞれ異なっていた」と説明。これを一本化したのが2010年6月で、現在の製品版の原型にあたるという。

 最終的なコンセプトの1つになったのが、「コミPo!を使ってプロの作画に追いつくのではなく、『絵を描けないけど漫画を作りたい』という層にターゲットを絞り込むこと」(小野氏)だった。日本に生まれ、漫画という文化には慣れ親しんでいるならば、誰もが落書きをしたり、一度は漫画を描いてみたいと思うはず。そういった人たちに漫画制作を楽しんでもらうのが、コミPo!の目標だ。ソフトのユーザーインターフェイスについても、直感的な操作が行えるよう、あえて上級者向けの仕様をカットした部分もあるという。

 ただ、今後の進化の方向性については利用者の声を受けて検討していくという。田中氏は「プロユーザー向けに進化するか、ライトユーザー向けに進化するかは、実際のお客様の声を聞いて、舵取りしていきたい」と語る。

 西海氏からは、キャラクターのモデリングをするにあたって、漫画表現用ソフトならではの苦労があったとことも明かされた。「キャラクターの横顔を表現するとき、一般的な3Dモデリングでは外側に口が出るが、漫画では顔の真ん中の部分に描かれることが多い。そのために、コミPo!では頭の中心部分に口を配置し、どの角度からでも漫画的に見えるようにした」という。同様に、トゥーンシェードが行われる輪郭線の処理にも気を遣った。

 また、プロトタイプ版から製品版へ開発を進めるにあたって、仕様を大きく変更した部分もある。「モノクロ、線画という先入観が当初はあったが、気軽に使えるUGC作成ツールを目指したこともあり、フルカラー対応にした。また、背景モデルを3D処理して自由に回転させる機能も、直前まで開発していたが搭載を見送った」(田中氏)

 小野氏も「教室や廊下といった狭い空間では、慣れていないとカメラ位置の把握など相当難しい。そこで悩んだあげく、あらかじめ2D画像を膨大に用意して、その中から選択するだけにした」と、ここでもわかりやすさを優先した。

 さらに、当初発売する製品のデータ構成は「学園セット」に絞った。漫画制作ソフトというコンセプトを考えた以上、あらゆるデータを収録する方法もあるが、これは作業量からいっても現実的ではない。そこで、人気ジャンルである学園漫画用にデータを限定して、商品化にこぎ着けた。さまざまなデータの追加を検討しているが、学園ものに次いで人気のファンタジー系を候補の1つに挙げている。

 田中氏は「コミPo!でまず漫画制作を体験してもらうことが重要」との認識を示しており、製品リリース後には、機能制限付き無償版を公開したいという。加えて、さらにライト層、あるいはMacユーザーに向けたウェブアプリ版の実制作も始めており、こちらは11月中旬ごろに発表する予定だ。

 パネルディスカッション後の質疑応答では、キャラクターのモデリングデータをユーザー側で追加できるかについての質問が飛んだ。現状、モデリングデータの仕様は非公開となっており、フォーマットをどうすべきかを検討中とした。小野氏は「構想としてはあるのだが、コミPo!ユーザーと、3Dモデリングをするユーザー層がかぶらないのではないかと現状では判断した。ただ、ネットの書き込みを含めてご意見は伺っているので、何かしらの対応は検討していきたい」と説明する。ただし、現状の個人ユーザーであっても、コミPo!制作委員会と契約を交わした上で追加データを配信する可能性については、含みを残している。

 このほか、ソフト全般の仕様について、小野氏は「これで完成とは思っていないので、アップデートは随時検討する」と説明。無償配布する追加キャラクターデータについても、“ケロタン”なるクリーチャーキャラ(マスコット?)をモデリング中であることも、田中氏がやや口を滑らせ気味に明かしている。

ウェブテクノロジ・コム代表取締役の小高輝真氏

 発表会の最後には、ウェブテクノロジ・コム代表取締役の小高輝真氏が挨拶した。「今日の発表会では『ユーザーの声を聞く』と言うばかりで自分で何も決めていないのではないかと言われそうだが」と苦笑いしたものの、主力事業たるゲームメーカー向けグラフィックツール開発の現場では「お客様の声をいただき、咀嚼して製品に反映させること」が非常に重要であることを指摘。コミPo!にもその方法論を応用することで、製品を成長させていきたいとしている。


関連情報

(森田 秀一)

2010/10/15 22:24