NTTグループが被害状況を説明、固定・携帯とも4月末をめどにほぼ復旧予定


(左から)NTTの三浦惺社長、NTT東日本の江部努社長、NTTドコモの山田隆持社長

 NTT、NTT東日本、NTTドコモの3社は30日、東日本大震災による被害・復旧状況と今後の見通しに関する共同の記者会見を開催した。

 NTTの三浦惺代表取締役社長は、今回の震災による通信設備の被災状況について、固定系サービスでは最大時約150万回線に影響があり、移動系サービスでは最大時6720局の無線局が停波したと説明。NTTグループ全体で、全国からの支援を含む1万人を超える体制で復旧活動を実施していることで、固定系・移動系とも現在までに約90%が復旧しており、残りの通信拠点についても福島原発エリアを除いて4月末をめどにほぼ復旧させたいとした。

固定・携帯とも約90%が復旧4月末には福島原発エリアを除いてほぼ復旧の予定

 NTT東日本の江部努代表取締役社長は、震災による通信設備の被害状況について、中継伝送路90ルートが切断、通信建物のうち18ビルが全壊、23ビルが浸水し、沿岸部では6万5000本の電柱が流出・折損し、架空ケーブル6300kmが流出・損傷したとみられると説明。3月28日時点では、NTTの通信ビルのうち55ビル(岩手県21、宮城県23、福島県11)がサービス中断中だとした。

NTT東日本の通信設備の被害状況迂回ルートの構築などで中継伝送路を復旧

 サービスの復旧にあたっては、中継伝送路として新たな迂回ルート構築を行った例や、NTTドコモの光ファイバーを借り受けて暫定復旧を行う例、流出した通信ビルの代替として屋外型回線収容装置を設置する例などを紹介。これらの対応により、サービス中断中の通信ビルのうち、被災の程度が軽度の16ビルについては来週半ばをめどに、中継伝送路が著しく損傷した4ビルについても4月中旬をめどに復旧予定だとした。

 また、通信局舎が全壊するなどした損傷の激しい26ビルについては、まず自治体庁舎(仮庁舎)の回線復旧のための応急措置を行うとともに、4月末を目指して局舎の建設や交換機設置などを行っていくと説明。福島原発の避難エリアとなっている9ビルについては、避難指示解除後に状況確認の上、必要な措置を実施するが、復旧については現時点では未定だとした。

通信ビルの復旧見通し各ビルの復旧見込み

 NTTドコモの山田隆持代表取締役社長は、3月28日時点でサービス中断中の基地局が307(岩手県184、宮城県97、福島県26)あると説明。断線した光ファイバーの接続・応急敷設のほか、山上の基地局を活用して被災した基地局のエリアもカバーする「大ゾーン方式」による復旧や、マイクロ無線方式や衛星回線を活用した復旧を進めているという。

 こうした復旧作業により、248基地局については4月下旬までに、残る59基地局についても5月に回復予定だと説明。NTTドコモのサイトでは3月20日から「復旧エリアマップ」を掲載しているが、4月には復旧予定もマップに掲載していくことを表明した。一方、福島原発30km圏内の68基地局については現在も未点検の状態で、早急に復旧させたいが現時点では復旧時期は未定だとした。

NTTドコモの基地局設備被災状況サービス復旧推移と今後の予定
山上局などで広域をカバーする「大ゾーン方式」などでサービスを復旧サイトで公開している「復旧エリアマップ」に復旧予定も掲載していく

 今回の震災では特に沿岸部を襲った津波により、大きな被害が発生したと説明。「通信ビルが全壊というのは過去に経験したことが無い」(NTT東日本・江部社長)という。また、「広域停電が発生したことで、バッテリー運用も停止した基地局が数多くあり、現地に向かう車のガソリンや、発電機の軽油といった燃料の調達にも困難があった」(NTTドコモ・山田社長)と述べ、これまでの震災では経験の無い復旧の難しさもあったとした。

 NTTの三浦社長は、「現時点でも調査に入れていない施設もあり、被害額などもまだ正直言って把握できていない。阪神・淡路大震災に比べてもかなり大きな復旧費用が必要になると思われるが、こちらもまだ見通しが立っていない」とコメント。今後の課題についても、「これから検討を進めていくが、今の時点で思っていることとしては、これだけの被害に対しては衛星回線の活用をもう少し考えていかなければいけない。また、以前の被災では伝言ダイヤルが主流だったが、今回はネットが中心。ネットをさらにどう活用していくかも重要な課題だ」とした。


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(三柳 英樹)

2011/3/30 20:37