きっかけは違法ダウンロード罰則化? レコード会社がDRM廃止のなぜ


 いくつかのレコード会社が、インターネットで配信する楽曲のデジタル著作権保護(DRM)を廃止する方針を打ち出している。そのきっかけについて一部報道では、楽曲の違法ダウンロードに罰則を科す著作権法改正だったと報じているが、果てして理由はどうなのか。レコード会社と日本レコード協会に聞いた。

 携帯電話向けなどの多くの音楽配信サイトでは、ユーザーが購入した楽曲をコピーできないようにDRMをかけている。これに対してDRMがなくなると、音楽配信サイトで購入した楽曲が複製可能となり、パソコンやスマートフォン、携帯音楽プレーヤーなどユーザーが持つさまざまな端末で楽曲が聴けるようになる。

DRM廃止はダウンロード罰則化以前から検討

 国内の主要音楽配信サイトで楽曲を提供しているエイベックス・ホールディングスでは2012年2月、同社が100%原盤を持つすべての楽曲からDRMを廃止することを決定。現在は順次、各音楽配信サイトでエイベックスのDRMフリー楽曲を配信する準備を進めているという。

 DRM廃止の理由についてエイベックスは、音楽ファンの利便性向上が狙いだったと語る。「モバイルで購入した楽曲をスマートフォンに移行できないという声があり、このままでは音楽ファンが離れる懸念があった」。その上で、「違法ダウンロード罰則化との兼ね合いはない」と話す。

 2012年に入ってからDRMフリー化を進めていたというビクター・エンターテインメントも、DRM廃止の理由はエイベックスと同様だ。「最近ではスマートフォンや携帯音楽プレーヤーなど音楽の楽しみ方は多岐に渡ることから、ユーザーの利便性を考えることに尽きる。DRM廃止は昨年以前から準備を進めており、法改正がきっかけということはない」。

 洋楽や邦楽の一部はすでにiTunes StoreでDRMフリーの楽曲を配信しているというソニー・ミュージックエンターテインメントは、DRM廃止について「ユーザーの利便性を高めるために検討すべきものの1つ」と話す。

DRM廃止で有料音楽配信の落ち込みに歯止め?

 「iTunes StoreやAmazonではすでにDRMフリーの楽曲が配信されており、それほど真新しい動きではない」というのは日本レコード協会。その一方で、「有料音楽配信の売り上げが落ち込む中、正規の音楽配信利用者に対して利便性の高いサービスを提供しようというレコード会社もあるのでは」と話す。

 日本レコード協会の調査によれば、2011年における有料音楽配信の売り上げは前年比84%の約720億円。2年連続で対前年比がマイナスとなった。同協会によれば、これは音楽配信市場の81%を占めるモバイルの実績が落ち込んだことが要因。その一方でスマートフォンを含むネットダウンロードの売り上げは前年比123%と伸びている。


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(増田 覚)

2012/7/5 16:03