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ヤフー、“爆速”で取り組む被災地振興支援「単黒になるまで帰ってくるな」


 複数の企業・団体が参画する東日本大震災復興支援プロジェクト「復興デパートメント」は12日より、東北各地の食材が味わえる「復興弁当」のオンライン販売を開始した。第1弾は、宮城県石巻地域のブランド魚を使った復興弁当の第1弾となる「石巻爆速復興弁当 金華ぎん」。1日も早い復興への願いを込めて、ヤフーが最近掲げているスローガン「爆速」を名称に盛り込んだ。価格は1食950円で、1食ごとに50円が被災地へ寄付される。

復興弁当の第1弾となる「石巻爆速復興弁当 金華ぎん」950円。1食50円が被災地へ寄付される。カロリーは640kcal 「石巻爆速復興弁当 金華ぎん」は、弁当・ケータリング注文サービス「ごちクル」で販売中
http://gochikuru.com/fukko/

石巻尽くしの弁当、食べて復興支援

 今回販売を開始したのは「石巻爆速復興弁当 金華ぎん」。国内唯一という国産養殖銀鮭「金華ぎん」の塩焼きをメインに、コナゴのピリカラ煮、わかめの佃煮など、石巻地方で収穫された食材が使われている。おもな食材は、現地の水産品養殖・加工業者である本田水産株式会社が提供する。

 弁当の企画・開発にあたっては、復興デパートメントで事務局を務めるヤフー株式会社と、仕出し弁当やケータリング専門店のウェブサイト運営事業を手がけるスターフェスティバル株式会社が協力。製造・販売は株式会社トウエイ(埼玉県川口市)が担当する。

 12日にはヤフーの都内オフィスで先行販売が実施された。同オフィスでは、昼食時間帯に弁当販売を行っており、復興弁当もその1つとして用意された。当日は50食を用意したが、初販売という効果もあってか、10分ほどで完売した。今後も継続して復興弁当の販売が行われる予定だ。


先行販売の様子 10分ほどで完売した

 オンラインでの一般向け販売も11日に開始。弁当・ケータリング注文サービス「ごちクル」内で販売している。配達エリアは関東一円および山梨県・長野県・静岡県。最低受注金額は地域によって異なるが、最低1万円から。完全受注生産のため、配達希望日の3日以上前に注文を済ませる必要がある。

ビジネスとしての復興策を“爆速”で推進

ヤフー代表取締役社長の宮坂学氏

 同じく12日、報道関係者向けに復興弁当の試食会が開催され、ヤフー代表取締役社長の宮坂学氏も出席した。一通り弁当を食べ終えた宮坂氏は「新生ヤフーは『課題解決エンジン』をテーマに掲げている。さしあたっては広告や集客に関する課題の解決をITで提示することが私たちの務めだが、もう1つの柱として、日本全体の課題にチャレンジすべきではないか。つまり、東北の復興をITでどう成し遂げるか」と、今回の企画背景を解説した。

 ただ、大きな理念を掲げつつも宮坂氏は「やる以上は単月黒字にしなければ長くは続けられない。弁当は付加価値を付けやすく、社内外でもおすすめしやすい。“単黒”へのこだわりが、弁当に行き着いた」と、ボランティアや寄付にとどまらない、事業としての取り組みであると強調した。

ヤフー 最高執行責任者(COO)の川邊健太郎氏

 また、ヤフーの最高執行責任者(COO)である川邊健太郎氏は「震災発生直後は、ヤフーとして電力や放射線といった情報公開を積極的に行った。ただし、東北の方のお役に本当に立てたかは、反省するところもある」とし、継続的な支援の必要性に言及した。

 継続的復興支援を強化する狙いから、ヤフーでは石巻に現地事務所を開設する。「仙台の支社をわざわざ閉じて、石巻だけにする」(川邊氏)という力の入れようで、企画職、エンジニアら5名が、住民票も移した上で常駐。日々変化する被災地ニーズをいち早くつかみ、復興に役立てたいという。

 川邊氏は現地事務所開設の下準備で東北を訪れた際、関係者からヒアリングする中で“実需”が重要との認識を新たにしたという。「とにかく需要を生み出すことが重要。お腹が減る、爪や髪が伸びるといった日々のニーズでもいい。それならば、ヤフーでは4000人近い従業員がほぼ毎日お弁当を食べているのだから、すぐにでも役に立てる」

 川邊氏は、ヤフーが全社的に掲げる“爆速”というスローガンに触れつつ、現実的かつスピード感ある復興支援策を進めていきたいとしている。

「復興支援で事業を成功させてこい」

復興弁当の完売を喜ぶ皆さん。中央が長谷川氏

 ヤフーの石巻事務所には、宮坂社長直属の部署である「ソーシャルアクション室」内に設けられた「復興支援室」のメンバーが勤務する。その1人である長谷川琢也氏は「我々の部署はまさに震災支援を目的としているが、それ以外の部署も含め、すべての社員が復興支援に関わっていると実感できるように、気軽に参加できる“食べる支援”を企画した」と説明。復興弁当の社内販売も、大きな目的になっていると説明する。

 現地事務所の開設にあたっては、入念なリサーチも実施した。震災発生以前から、東北には高齢化、過疎、水産業の後継者不足など構造的な課題があり、これらを同時に解消していく必要性があると、長谷川氏は指摘。生産者と消費者を直接結んだ流通モデルの構築に加え、付加価値の高い商品作り(コンセプトの構築やパッケージングなど)が欠かせないと分析する。


復興弁当の狙い 東北には震災以外の課題も多く、これらを同時に解決していく必要がある

 長谷川氏は「復興支援室を立ち上げる上で、ボランティアでもCSR(Corporate Social Responsibility)でもなく、事業としての復興支援を成功させてこいと社長から言われた」と明かす。IT業界において一定の地位を確保するがヤフーが東北の課題解決にチャレンジし、仮に成功できなかった場合、他の企業の東北参入を尻込みさせてしまう恐れがある。ビジネスとしての成功事例をヤフーが作り出し、東北への注目度を高め、結果的に復興を推進させようという発想だ。

 ヤフーでは、さまざまな団体や企業と協力して復興デパートメントのサービスを展開していることから、これを今後も強化していく方針。オーナーモデル、サブスクリプション型EC(定期購入)、キュレーション型ECなど、新種の販売スタイルについても導入を検討したいという。

ヤフー宮坂社長からは「復興支援で事業を成功させてこい」とハッパを掛けられたという

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(森田 秀一)

2012/7/13 06:00