グーグル、大震災被災地の企業にサイトの作り方を指南するワークショップ
宮城県気仙沼市を皮切りに各地で開催
グーグル株式会社は7月31日、東日本大震災の被災地にある東北の中小企業を対象に、ウェブサイトの作り方などを指南する「東日本ビジネス支援ワークショップ」を開催すると発表した。まずは8~9月に宮城県気仙沼市、大崎市、石巻市で開催。以降、他の地域にも拡大し、月1~2回のペースで開催していく。
(向かって左から)グーグル株式会社Small & Medium Businessマーケティング統括部長の伊佐裕也氏、同じく執行役員マーケティング本部長の岩村水樹氏、気仙沼市長の菅原茂氏、早稲田大学環境総合研究センター任研究員/W-Bridge運営委員の岡田久典氏 |
中小企業・個人事業主が簡単にウェブサイトを作成できるサービス(1年間無料で利用可能、以降は月額1470円)として、昨年9月に提供を開始した「みんなのビジネスオンライン(みんビズ)」を使い、実際にサイトの構築方法を教えるほか、成功事例を紹介しながら集客に結び付けるノウハウなども伝える。ワークショップは2、3時間程度で、各回50社程度の参加を見込む。
グーグルの伊佐裕也氏(Small & Medium Businessマーケティング統括部長)によると、日本に420万社あると言われる中小企業のうちウェブサイトを保有しているのは100万社に満たないという。震災前の2011年1月時点の数字だが、特に東北では開設率が低く、全国平均が24.2%なのに対して、東北は16.9%。また、みんビズの提供開始後、このサービスを利用して開設されたサイトが全国で約5万社に上るが、2012年6月時点での利用率は全国平均が0.74%であるのに対して、東北は0.37%。ウェブで情報を発信すべき商品や地域資源があるはずなのにもかかわらず、半分にとどまっていると伊佐氏は指摘する。
このような状況を踏まえ、今後本格的なビジネスの復興段階を迎える被災地の企業にもウェブをもっと役立てほしいとしてワークショップを開催することにした。
グーグルの岩村水樹氏(執行役員マーケティング本部長)は、「情報を収集する、あるいは発信するというウェブの力を活用していただく仕組みを提供することが復興の力になるのではないか。ワークショップを通じて、被災された地域の企業の方々に、ぜひこのウェブの力を自分のものとしていいただき、ビジネスの活性化につなげていただきたい」とコメントしている。
なお、ワークショップは、グーグルのみんビズのプロジェクトチームが、早稲田大学と株式会社ブリヂストンの産学連携プロジェクトである「W-Bridge」と共同で実施し、これに被災地の自治体が連携するかたち。7月11日には気仙沼市で試験的にワークショップを開催し、水産業や小売業、製造業などの企業から36名が参加した。
気仙沼市の菅原茂市長は、大震災により同市では多くのものが失われたが、企業にとっては工場の生産ラインを新しく作り直すことで商品の品質向上や生産コストの削減などが実現できるなど、逆に真っさらの状態になってしまった今だからこそ、今後の発展に向けた思い切った取り組みが行える機会だととらえる意識もあると説明する。
しかしながら、大震災では同時に多くの顧客を失っており、こうした生産ラインの改善だけでビジネスが再生するわけではないことも事実。菅原市長は「真の意味での創造的復興が必要」だとし、具体的には「売り方を変える、売り先を変える、付加価値を変えるということを各社が真剣に考え、担当者ひとりひとりがイノベーションを生み出していくことの積み重ねが気仙沼の創造的復興だととらえている」と語った。
そのような状況の中で東日本ビジネス支援ワークショップが開催されることについて菅原市長は、大震災から1年4カ月が経過し、このような取り組みがやっと市民に受け入れられ、あるいは逆に待ち望んでいた市民も増えてきたタイミングであることも説明。「企業のウェブサイトの問題だけでなく、情報のあり方まで含めて次に何をすべきかということを市民ひとりひとりが考える機会になれば」と期待を示した。
7月11日に試験的に開催された気仙沼市でのワークショップの模様 | 気仙沼市のワークショップで実際に作成されたウェブサイトの例 |
関連情報
(永沢 茂)
2012/8/1 11:00
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