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震災遺構のストリートビュー公開、津波の跡が残る学校や市庁舎などの内部

 グーグル株式会社は6日、東日本大震災で被害を受けた岩手県・福島県の4市町の施設34件の内部や外観を撮影したパノラマ写真を、ウェブサイト「未来へのキオク」とGoogle マップの「ストリートビュー」で公開した。

 海岸から1kmほどの場所にあった岩手県陸前高田市の市役所庁舎に入ると、1階部分は津波で流れ込んだがれきや軽自動車が残っており、グーグルが数日前に撮影に訪れた際も花が供えてあったという。建物内部は、ストリートビューのように移動しながらその場で360度見渡すことが可能。さらにフロアの移動も可能で、同庁舎の2階にも津波の跡が残っている。窓の近くに行けば外の様子も見ることができるほか、屋上に出て周囲を見渡すと、跡形もなくなったかつての市街地の所々に重機が止まっているのが見える。

陸前高田市役所(提供:Google)

 同じく陸前高田市の5階建ての市営集合住宅では、4階まではすべてバルコニーの手すりや窓が壊れており、5階だけが以前の姿をとどめている。4階に相当するかなりの高さまで津波が来たことが読み取れるとしている。

陸前高田市定住促進住宅(提供:Google)

 岩手県大船渡市の大船渡魚市場は、各所にフォークリフトがトレーなどがあり、すでに業務が再開していることがわかる。しかし、地震後の地盤沈下により、満潮時に地面が海水に浸ってしまっている様子が記録されている。今年3月に撮影された付近の航空写真を表示すると、この建物の隣に新しい魚市場が建設されていることがわかる。Google マップの地図や航空写真とあわせて見ることで、被災施設の状況をより立体的に理解できるという。

大船渡魚市場(提供:Google)

 福島県浪江町では、福島第一原発の事故により避難指示区域内にある施設に許可を得て撮影に入った。請戸小学校の体育館は床が陥没し、ステージ上部には実施されなかった卒業式の看板がそのままかかっている。校舎に移動することも可能で、屋上に上がれば、遠くに福島第一原発も見える。

請戸小学校(提供:Google)

 公開したパノラマ写真は、グーグルが「震災遺構デジタルアーカイブプロジェクト」として、自治体の協力を得て11月13日より撮影していたもの。ストリートビューの技術を活用して、東日本大震災で被害を受けた施設を記録・保存・公開し、世界の科学者・研究者はじめ一般も含めてより多くの人に今回の地震と津波の引き起こした被害を知ってもらうことで、後世に震災の記録を継承し、震災の記憶の風化を防ぐことが目的だ。

 撮影は、魚眼レンズを付けた市販の一眼レフカメラを使用。これを三脚に据え、1カ所につき90度ずつ4方向を撮影し、後からパノラマ写真として合成している。店舗内のパノラマ写真を公開する「おみせフォト」と同様の方法で、自動化が進んでいるため撮影から2週間ほどで公開まで可能になったとしている。施設の規模により異なるが、ワンフロアにつき数メートルごとに数十カ所を撮影しており、小さな施設でも10カ所程度、大きい施設では各フロア合わせて40〜50カ所のパノラマ写真が記録されているという。

グーグルの河合敬一氏(Googleクライシスレスポンスチームグループプロダクトマネージャー)

 グーグルの河合敬一氏(Googleクライシスレスポンスチームグループプロダクトマネージャー)は、6日に行われた記者説明会で、同プロジェクトの意図を以下のように語った。

 「三陸は、何度も大津波の自然災害に襲われた地域。その記録を残すという観点では、昔は、ここまで津波が来たということを示す石碑を建てていた。それが今回の津波では、その石碑を軽々と飲み込んで、その上にまで達した。Googleでは、このことを現代の技術を使ってどのうようにして残すのか考えながら、試行錯誤している。このようなかたちでパノラマ写真を使って残していくこと、それを将来の世代に伝えていくことが、記録を残し、忘れないという我々の世代の責務を果たす1つのやり方にできればいいと考えている。より多くの人に見ていただいて、今を知っていただくこと、そしてこれを将来に向かって残していくことを続けていきたい。」

 なお、こうした震災の遺構については、津波の記録として残そうという考え方がある一方で、被災者にとっては見るのもつらく、早く解体すべきという議論もあることについては、河合氏も当然ながら認識しているという。しかし、すでに解体が始まっている場所もあり、せめて写真で記録に残してはどうかということで、自治体などからは今回のプロジェクトに理解をいただいているのではないかとした。

 今回、震災遺構デジタルアーカイブプロジェクトで撮影した34施設は、未来へのキオクのサイトの「遺構」ページに一覧化されている。この中には、復興に向けて進み始めた地域の今の姿も捉えるため、被災したままの状態の施設だけでなく、震災後も使用されている施設や新たに建設された施設のパノラマ写真も含まれている。

 Google マップからは、該当地域の地図上にペグマンをドラッグして橙色の丸が表示される場所にドロップすると、施設内部のストリートビューに入れる。もしくは、被災地域の公道のストリートビューを表示していると、二重の矢印が表示される場所があり、それをクリックすることで施設内部に移動可能だ。

未来へのキオク(提供:Google)
陸前高田市役所(提供:Google)

 なお、現在公開されている被災地域の公道のストリートビューは、昨年7〜8月に撮影し、昨年12月に公開したもの。河合氏によると、被災状況だけでなく、復興に向けて進んでいる街の風景も記録してほしいとの声も寄せられているとしており、長くても数年に1回のペースで被災地のストリートビューを撮影・公開していきたいという。航空写真も逐次、更新していくという。Google マップ上では、ストリートビューは最新のものに更新していくかたちになるが、未来へのキオクでは被災前のストリートビューがアーカイブされており、現在の様子とあわせて閲覧可能だ。

 今回公開された震災遺構は、岩手県釜石市が8件、大船渡市が12件、陸前高田市が10件、福島県浪江町が4件。

 さらに、さいとう製菓株式会社など大船渡市で4件、釜石市で1件が撮影されるほか、新たに宮城県気仙沼市、東松島市、七ヶ浜町、山元町、利府町も新規にプロジェクトに参加し、5市町で計10件の施設を撮影する予定だ。また、引き続き自治体や施設の管理者から、プロジェクトによる撮影の申し込みを受け付けていく。

(永沢 茂)