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ブランド装う「偽サイト」非表示へ、大阪府警とセキュリティ7社が連携

 大阪府警は24日、セキュリティ企業7社と連携し、ブランド販売業者を装い代金をだまし取る「偽サイト」の対策を本格的に始動した。大阪府警に寄せられる偽サイトの情報をセキュリティ企業7社と共有し、ウイルス対策ソフトで偽サイトをブロックできるようにするという。

大阪府警とセキュリティ企業7社連携による「偽サイト」ブロックのイメージ

ウイルス対策ソフトのサイト評価機能で「偽サイト」をブロック

 セキュリティ企業7社はシマンテック、トレンドマイクロ、カスペルスキー、マカフィー、ソースネクスト、BBソフト、セキュアブレイン。大阪府警が旗振り役となり、「多くのユーザーを抱え、なおかつウイルス対策ソフトでサイトの評価機能を備えている」という基準で協力を呼びかけた。今後も協力企業を募っていく。

 大阪府警は、警察署や消費生活センター、税関に寄せられた被害者からの情報を集約し、実際に偽サイトであるかどうかを判断。偽サイトと判定した場合はURLをセキュリティ企業7社と共有する。7社はURLを精査した上で自社ウイルス対策ソフトに反映させ、ユーザーが偽サイトにアクセスしようとした際にブロックする。

偽サイトをブロックするイメージ(画像提供:カスペルスキー)

「閉鎖できなければ非表示に」コロンブスの卵的な発想で対策

大阪府警察本部生活安全部サイバー犯罪対策課の武本直也氏

 大阪府警によれば、偽サイトの中には実在するブランドのサイトに似せていたり、実在する無関係の企業名を問い合わせ先として表示させているものもあるという。警察はこれまでも対策を進めてきたが、サイト運営者が海外にいるケースは捜査の手が及びにくく、偽サイトを閉鎖することは難しかった。

 大阪府警察本部生活安全部サイバー犯罪対策課の武本直也氏は、「インターポールと共同で捜査をすることも可能だが、サイト閉鎖までにかなりの時間を要し、その間にも被害者が増えてしまう」と話す。そこで目を付けたのがウイルス対策ソフトだ。

 「消費者が偽サイトにアクセスした場合、ウイルス対策ソフトが『このサイトは危険』と警告してくれる。仮にそのようにして表示されたサイトにアクセスしても、消費者は商品を購入する意欲をなくすだろう。偽サイトの閉鎖が難しければ非表示にするという、コロンブスの卵的な発想。」(武本氏)

根本的な対策につながらないとの指摘も

カスペルスキーの川合林太郎社長

 大阪府警では、今回の取り組みを3月5日から試験的にスタート。これまでにセキュリティ企業と共有した偽サイトのURLは約500件に上る。こうした官民連携の対策について、カスペルスキーの川合林太郎社長は「一定の成果が出せる」と期待を示す。その一方で、「偽サイトをブロックするだけでは根本的な対策とは言いがたい」とも指摘する。

 「あからさまな偽サイトでも海外にサーバーがあるといった理由で、取り締まりが一筋縄ではいかない状況。消費者だけでなくブランドを保護するためにも、セキュリティ企業や通信会社が違法と判断したサイトを迅速に閉鎖できる体制を作るための議論が必要だ。」

 また、セキュリティ7社以外のウイルス対策ソフトでは、大阪府警が提供する偽サイト情報が反映されないという課題もある。この点について武本氏は、今後は7社以外との連携も検討すると説明。さらに、検索結果ページで偽サイトを警告できるよう、検索エンジンを提供するGoogleやMicrosoftとの協力も視野に入れているという。

(増田 覚)