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米Google、「健康と幸福」を研究するベンチャー子会社Calicoを設立

 米Googleは18日、「健康と幸福」について研究する新ベンチャー「Calico」の設立を発表した。

 CalicoのCEOには、米Apple社会長、またバイオベンチャー米Genentech社会長で元CEOであるArthur Levinson氏が就任する。Levinson氏はCalicoの創業出資者でもあり、ほかにGenentech社会長、スイス製薬会社大手Hoffmann-La Roche取締役、米Apple社会長の役職も務めているが、これらの役職はそのまま継続する。

 Calicoについて、米Google CEOであるLarry Page氏は「病気や老化は、私たちの家族すべてに影響を与える。医療やバイオテクノロジーの周辺領域で長期的に、考えられないほど大きな規模で考えることによって、私は何百万もの人生をより良い物にできると信じている」と設立意図を説明した。

 Page氏は、Googleの本業と関係なさそうに見える事業に進出することについて、自分のGoogle+ページで「株主への我々の最初の手紙で説明したように、テクノロジーには人々の人生をより幅広く改善できるだけの途方もない可能性がある。既存のネットビジネスと比較して奇妙、あるいは投機的であるかのように見えるようなプロジェクトに投資するとしても、驚かないでほしい」と説明した。

 さらに、Page氏は事業規模について「我々のコアビジネスと比較して非常に小さい」と投資規模について説明したが、具体的な数字は挙げていない。事業成功の可能性については「これは明らかに長期的な賭けであるとはいえ、適切な目標と適切な人材によって、道理にかなった期間内で十分進展させることができると我々は信じている」と説明した。

 Levinson氏も成功の可能性について、「我々はすばらしい人材、強力な企業文化とビジョン、そして不可能なことを健全な仕方で無視すること、こうしたことによって我々はこれらの疑問に取り組み、人々の人生を改善することで進展できるだろうとの意見で合意した」と同様の見方を示した。

 なお、Calicoがどのようなアプローチを検討しているかに大きな注目が集まっているが、現時点では特に老化と関連する疾患について研究することのほかに「まだ公開できるようなことはない」としている。

 Page氏は個人的にも健康について思い入れがあると思われる。Page氏は14年前から声帯の深刻な病気を患っていたことを2013年に自身のGoogle+ページにて公表した。それまでの期間、Page氏の発言が少ないことから、何らかの失語症ではないかとの噂が流れたこともあった。その公表後、GoogleI/Oの基調講演に現われ、その病からくるやわらかな声で信念を持って講演を行い、聴衆に大きな印象を残した。

 Arthur Levinson氏はワシントン大学で理学士号、プリンストン大学で生化学の博士号を取得後、1980年にGenentech社に入社。1995年から2009年にCEOを務めた。Genentech社はスイス製薬企業Rocheの子会社となり、Levinson氏は現在同社取締役も務めている。Genentech社は1976年に米国カリフォルニア州サンフランシスコに設立されたバイオベンチャー。いわゆるバイオテクノロジー産業を創業し、大きな成功を収めた会社として広く知られている。

 Levinson氏と共に米Apple社を経営するCEOのTim Cook氏は、「あまりにも多い友人と家族が、人生が断ち切られたり、人生で大きな欠落を経験している。Art(Arthur Levinson氏の愛称)は、必ずしもこうである必要はないと考える、おかしな人間のひとりだ。この任務を率いるのに適している人は彼のほかにはなく、私はその結果を見るのを楽しみにしている」と若くして亡くなったSteve Jobs氏を思い起こさせるようなコメントを寄せている。

 Calico社は、Larry Page氏とGoogle VenturesのBill Marris氏がArthur Levinson氏に話を持ちかけたことから発足したという。Bill Marris氏はGoogle Venturesのベンチャーキャピタリストで、神経科学の研究者だった経歴を持つ。

 Google VenturesはGoogle創業者Sergey Brin氏の妻Anne Wojcickiが経営する遺伝子解析ベンチャー23andMe社に出資したことでも知られている。

(青木 大我 taiga@scientist.com)