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クラウド会計サービス「freee」、2014年にアプリと給与計算機能も提供予定

〜Google卒業生がサービス開始した「freee」の今年と今後の展開

 今年3月に提供開始したクラウド会計サービス「freee」は、元Google社員が立ち上げたサービスということで話題になった。無料で使えるということもあって利用者数を伸ばし、年内に2万5000ユーザーを超える見込みだ。

 「freee」を提供するfreee株式会社は、立ち上げからの事業展開を総括する事業説明会を12月に入って開催。ここでは事業説明会の内容をレポートする。

インターネットは中小企業に無限の可能性を与えた

freee株式会社 代表取締役 佐々木大輔氏

 freee株式会社 代表取締役の佐々木大輔氏は、クラウドサービス全体について、「インターネットは情報を人々に対して平等に提供するものだと言われるが、小さいもの、弱者に強く力を与えるもの」だとした。これをビジネスの視点から見ると、「インターネットは、とくにスモールビジネスに大きなインパクトを与えた」という。

 たとえば、小さな会社が世界中に自社のビジネスを知らしめることができる、それを実現したのがインターネット広告だと例を上げた。Google Adwardsの最初の広告主は、東海岸のロブスターの通販をやっている中小企業だった。佐々木氏は、こうした中小企業に無限の可能性を与えたのがインターネットの大きな功績の1つだと述べた。

 大企業の持つ何億円もかけて開発されているような業務システムが、中小企業でも安価に利用できるようになったのもインターネットの与えた大きなインパクトの1つで、これがfreee株式会社が取り組んでいる市場だと説明。

 佐々木氏はクラウドサービスのメリットとして、Webブラウザーを介して利用するため使用デバイスが特定されない、常に最新版を利用することができる、別のシステムと自動連携ができる、同時編集などコラボレーション作業がしやすい、データをクラウド上に安全に保管できる、低コストで利用できる、の6点を上げた。

 データ保管については、企業の情報流出で最も多い原因は保存しているデバイス自体を紛失しまうことで、クラウド上に保管することでこうしたリスクが回避できると述べた。

クラウドサービスのメリット
日本の中小企業のクラウド化は今後の市場

スモールビジネスとクラウドサービス

 佐々木氏は次に、日本のスモールビジネスにおけるクラウドサービス市場について説明。Webブラウザーを介して利用するクラウドサービスの浸透率については、日本の中小企業では17%にすぎず、米国(54%)の3分の1しか利用されていないとした。さらに、会計の分野に限ってみると、日本のクラウドサービス利用は1%にすぎないと数字を上げた。

 現状では中小企業におけるクラウド利用率で米国に大きく遅れを取っている日本だが、「2013年は、中小企業のクラウド利用においてインパクトがあった年」だと佐々木氏は言う。

 5月には、スマホ決済サービス「Square」日本版が提供開始された。Squareでは売上は翌日入金と現金化も早く、キャッシュフロー面におけるデメリットもない。佐々木氏は、これにより、これまでクレジットカード会社の審査など導入ハードルが高かったクレジットカード決済がみんなのものになったと述べた。

 ECプラットフォームにおいても、誰でも簡単にオンラインストアが作れる無料のECプラットフォーム「STORES.jp」がサービスを開始。9月にはヤフー株式会社が「STORES.jp」を提供する株式会社ブラケットと提携し、「Yahoo!ジオシティーズ」400万人の会員が無料で「STORES.jp」のEC機能を利用してオンライン店舗開設が可能になった。「こうした動きによって、みんながインターネットビジネスを簡単にできるようになった」(佐々木氏)。

 また、クラウドソーシングの分野でもクラウドワークスやランサーズが増資をしてビジネスを拡大していると述べ、「これまでオープンではなかった仕事の受発注が、インターネットを通じてオープンになった」とした。ランサーズは、グロービス・キャピタル・パートナーズおよびGMO VenturePartners(GCP)を引受先として今年5月に3億円、クラウドワークスはサイバーエージェントを引受先として12月に11億円の資金をそれぞれ調達している。

 佐々木氏は最後に、自社サービスのfreeeが3月にスタートしたことを上げ、「経理や会計など、これまで専門の知識がないとできない、さらに専門の知識をもった経理担当者が手作業を繰り返さないとできなかったものが自動化された。これによって経営者が簡単に自分で経理・会計処理が行えるようになった」と述べた。

 佐々木氏は、これらの動きから、日本では現状は中小企業におけるクラウドサービスの利用率はまだ低いが、「2013年は中小企業にとってクラウドサービスが身近になるきっかけができた年ではないか」と指摘。いろいろなサービスの登場で、「ひと通りのビジネスのバリューチェーンをカバーするようなサービスがどんどん出てきていて、インターネット上のサービスを利用することによって、ソフトウェアを何もインストールしなくても、パソコンやタブレットが1台あれば、いろいろなことができるという時代になってきている」と総括した。

2013年はクラウドサービスがスモールビジネスにインパクトをもたらした年
スモールビジネスのためのクラウドサービス

データ自動取り込みで、会計帳簿を作るfreee

 佐々木氏はfreeeの目標について、「スモールビジネスの方が、創造的な活動だけにフォーカスできるよう、バックオフィス業務の大部分を自動化したいと考えている」と述べた。

 「バックオフィス業務の中で、会計はすべての企業に必要であり、なおかつこれまで現場で大変な労力がかかっていた部分でもあるため、これを自動化することに大きな意義があると考えています。」(佐々木氏)

 「freee」の特徴として、中小企業や個人事業主のためのクラウド会計サービスであること、簿記の知識がなくても簡単に使えること、銀行やカードのWeb明細と同期し、自動で会計帳簿を作成できることの3点を上げた。

 佐々木氏は、従来行われてきた中小企業の経理業務について、「請求書や領収書の山から始まって、会計ソフトに手入力していくという作業を行ってきたが、手入力なので工数がかかるだけでなく入力ミスが起こる。また、会計ソフトが専門知識がないと取っ付きにくく覚えるのが大変で、それがコストになっていたのではないか」と指摘。

 しかし、領収書や請求書の山をよく見ると、そのほとんどが印字されているもの。佐々木氏は、「印字されているということは、データとしてもともとあって、そのデータをプリントアウトして、それをさらに人が手入力している。リソースの無駄使いがここにあったのではないか。データから直接会計帳簿を作れば、さまざまな業務の効率化ができるのではないか、というのがfreeeの基本的な発想になる」と述べた。

freeeの特徴は、「クラウド」「簡単」「自動」
銀行口座の入出金やクレジットカードの明細を自動で取り込み、承認するだけ

 佐々木氏は、「銀行やクレジットカードの明細と同期をすれば、自動で会計帳簿ができて、使う方は承認をしていくだけで、使うことができる。これがfreeeが提唱する、新しい経理のスタイル」だとして、デモを交えて、銀行口座やクレジットカードの明細の自動取り込み機能を紹介した。

 取り込んだ明細は、freeeによってある程度分類された状態で表示される。freeeは銀行の入出金やクレジットカードの明細を見ると支払い先や取引先がある程度テキスト情報で入っているが、それをテキスト解析にかけて、会計上必要な分類のどれに当たるかを推測。タクシーの領収書であれば、そのテキスト情報から旅費・交通費に当たると推測して、旅費・交通費として表示する。

 同様に、イーモバイルであれば通信費、新聞購読料であれば新聞・図書費など、freeeが分類して表示する。毎月の水道・光熱費や通信費など勘定科目のゆれがないことがわかっているものは、「自動化」をクリックすれば、次からは毎回確認してクリックする必要なく帳簿に登録されていく。テキスト解析で分類できないものについては、ヘルプのついた勘定科目を見ながら、そこから選択することになるが、一度こうして登録すれば、次に同じ明細があった場合には、自動的に分類が行われるという。

 また、現金取引についてはどうなるのかとよく聞かれるが、店舗ではレジの中にすべてのデータが入っていることが多いため、「そこからデータをもってくれば、自動で会計に取り込むことができるのではないか、というのがその質問に対するわたしたちの1つの答え」だと述べた。

 「現金支出についても自動化への取り組みを進めており、10月にiPadで使えるレジアプリ『ユビレジ』とのデータ連携に対応。ユビレジでレジ入力すれば、自動でfreeeに取り込まれるようになった。」(佐々木氏)

 現金で支払ったレシートについても、レシートをスマホで撮影することで支出管理ができる「ReceReco(レシレコ)」Android版iOS版アプリとの連携について説明。ReceRecoからも自動的にデータを吸い上げることができると説明。スマホでレシートの写真を撮っておけば、Freeeに吸い上げることが可能になっていると述べた。

 また、モバイルSuicaSMART ICOCAなどの交通系ICカードにも対応しており、対応の交通系ICカードからもデータ取り込みに対応、自動で帳簿入力が可能になっていると説明した。

 また、請求書を作成する機能があるが、請求書を作成すると、入金予定として登録され、実際に入金された場合には「入出金予定とマッチ」と表示される。請求書を発行した場合には入出金の記録と照合できる但し書きが必要となるが、但し書きも自動で記録される。また、請求書発行分について、入金済みの分を確認するといったことも可能だ。

 こうして入力したデータによって、個人事業主であれば青色申告向けの決算書、企業であれば会社法に準拠した決算書が作成できる。月次別の売上高や全売上に対する取引先別のシェア、取引先別の売上推移などさまざまなデータをグラフ化して見ることもできるため、大企業などで導入されている経営の意思決定支援システム的な活用も可能となる。

取引先別収入の推移や取引先別収入の比率などもグラフ表示され、直感的に把握できる
データを入力してしまえば、青色申告決算書は自動生成できる

データがあるものは、データ取り込みで帳票に自動入力

 佐々木氏は、freeeの料金プランについても説明。料金プランは、「無料プラン」「個人事業主プラン」「法人プラン」の3つが用意されている。無料プランは、3カ月間はデータが保持できるが、3カ月を過ぎたデータにはアクセスできなくなる。3カ月を超えてデータを保持したい場合は、有料プランに移行するモデルになっている。全てのプランで3ユーザーが同時アクセス可能で、3ユーザーを超えて利用したい場合は、1ユーザー追加ごとに300円かかる。

 また、よく聞かれる質問としては「セキュリティはどうなっているのか」という質問があるとして、佐々木氏は「ビジネス上の財務データを預かるというのは非常に重大な責任があると考えている。このため、多重の取り組みをしている」として、通信の暗号化、ファイアウォールによる保護、第三者診断実施、侵入検知の設置、データの暗号化保存、データの定期バックアップを行っていると説明。TRUSTeによる認証も取得した。第三者機関による診断については、実際に侵入を試みるテストを毎日実施しているという。なお、データ保存については、ユーザーによるデータのエクスポートも随時行える。

freeeの料金プランは「無料プラン」「個人事業主プラン」「法人プラン」
セキュリティへの取り組み

 登録事業所数については、3月に提供を開始し、9月以後は毎月新規の登録数が飛躍的に伸びており、12月11日には2万事業所を突破。年内に2万5000事業所の登録が達成できる見込みだ。

 リリース以後、請求書の機能や消費税関連の機能など機能を充実させ、8月には有料サービスを開始。現在では「法人でも十分に利用いただける形になっている」(佐々木氏)という。銀行口座の自動取り込みについては、現在法人・個人合わせて1600の口座に対応し、地銀や信用組合まで対応可能となった。

2013年12月末には、ユーザー数2万5000人を超える見込み
バックオフィス業務におけるコラボレーションの効率化を促進

 freeeでは、パッケージが欲しいという声に応えて、12カ月間利用できるプロダクトキーとスタートガイドを同梱したパッケージ販売も開始した。個人事業主向け(1万500円)と法人向け(2万1000円)の2製品も販売している。12カ月+無料利用期間3カ月で最大15カ月間の利用ができる。

 そのほか、バックオフィス業務におけるコラボレーション促進も、力を入れているという。アクセス可能なデータも権限を分けて利用するといった対応を進めており、たとえば営業担当者は財務データの細かいところは見られないが、請求書作成はでき、請求書を作成してしまえばその後の財務処理が自動で進む、といった権限分離を行える機能を実装したという。

 また佐々木氏は、「認定アドバイザー制度」についても説明。法人では必ず税理士がついていて、税理士に一部会計業務を委託して会計処理を進めているが、従来は会計ソフトのデータをメール添付でやりとりするといった方法を取っていたが、これもクラウドから同時にアクセスしたが効率的に進められるため、freeeでも認定アドバイザー制度を作り、すでに100以上の会計事務所が認定アドバイザーとして登録されているという。

Amazon.co.jpでパッケージの販売も開始。法人向けと個人事業主向けの2種を用意
freeeの認定アドバイザー制度も開始。freeeを利用してサービス提供する会計事務所などのネットワーク化を促進

2014年はfreeeのマイルストーンになる〜モバイルアプリや給与計算機能の提供も予定

 佐々木氏は最後に、今から来年の4月にかけてはfreeeにとって大きなマイルストーンになると述べた。

 2014年は3月に確定申告、4月に消費税増税、7月にWindows XPサポート終了、クラウド会計市場も競合他社の参入もあり市場自体の拡大が見込めるなど、顧客大幅増のチャンスが重なってやってくる。

 freee株式会社は、2012年7月に佐々木氏の自宅居間で創業。2012年12月に資金調達を行い、2013年3月にサービスを開始した。2013年7月には2.7億の増資を行い、8月から有料プランの提供を開始した。最初2人で始めた会社もいまはカスタマーサポートを中心に16名となり、2014年明けには20人を超える見込み。佐々木社長は、さらに開発力とサポートの強化を行っていくと述べた。

 今年3月にサービスを開始したfreeeは、2014年2〜3月に初めての確定申告シーズンを迎えることになる。サポート面では、これまで1営業日以内に返信するメールサポートのみだったが、より早く対応するため、チャットによるサポートの実験も開始した。「電話サポートは本題に入る前に5分くらいかかる。チャットの方がはるかにオーバーヘッドが少ない。」(佐々木社長)

 2014年4月以後には、モバイルアプリの開発や給与計算機能の追加を予定。佐々木氏は、「freeeは社内でも使っているが、給与計算が手作業になってしまう。勤怠データがあれば給与計算までできる、明細も自動で作成できるという形で、来年の早い段階でリリースしたい」と述べた。

確定申告や消費税、XPサポート切替によりマシンのリプレースはfreeeにとっては飛躍のチャンスになる
今後はモバイルアプリの開発や給与計算機能の追加などを予定する

(工藤 ひろえ)