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“ブロッキング”で遮断した児童ポルノ383件、スルーした児童ポルノ1210件

 海外のウェブサーバーで公開されているなどの理由ですぐには削除対応が行えない児童ポルノ画像について、インターネットユーザーが閲覧するのを通信事業者(ISP)が強制的に遮断する“ブロッキング”。日本でこの取り組みに参加する事業者は、8月末時点で86社となった。2011年4月の開始以降、国内のインターネットユーザーにおけるカバー率は順調に増加しているという。

 遮断する児童ポルノ画像のアドレスリストを管理する一般社団法人インターネットコンテンツセーフティ協会(ICSA)が10月にとりまとめた事業報告によると、ブロッキングに参加している通信事業者のサービス加入者数は合計3519万件で、国内のブロードバンド(光、CATV、DSL)加入世帯数4420万件の79.6%をカバーする。

 モバイルインターネットについても、ブロッキングを実施している事業者のサービス契約者数は合計1億4283万件で、携帯電話(携帯電話、PHS、ブロードバンドワイヤレスアクセス)の総契約者数1億4859万件の96.1%をカバーしている。

 なお、10月以降も新たに6社が参加している。

 ブロッキングの対象となった児童ポルノ画像のURLは、2013年8月までの累計で851件(172ドメイン)に上った。ただし、多くの画像はその後ウェブサーバー側から削除されるために、ブロッキングの必要がなくなる。8月末時点で実際にブロッキング対象となっているのは118件(17ドメイン)。

 ブロッキングはその仕組み上、通信事業者がユーザーの通信内容をチェックし、該当する児童ポルノ画像へアクセスしようとしている場合にその通信を遮断するものだ。そのため、ICSAではブロッキングが許容(違法性が阻却)される基準を設定しており、児童の権利を著しく侵害する悪質なものなどに限られる。ウェブ上の児童ポルノ画像がすべて遮断されるわけではない。

 警察庁および同庁の委託事業として運営されている違法・有害情報の通報受付窓口「インターネット・ホットラインセンター(IHC)」が児童ポルノと判断し、ICSAに対して情報提供したURLは、2012年7月30日から2013年8月16日までの約1年間で2958件あったが、このうち、ICSAのブロッキング運用基準に該当したURLは383件だけだった。

 情報提供を受けたURLのうち、まず、1259件は、ICSAが画像を確認しようとした時点ですでに削除されていたか、画像の確認が困難なものだった。

 次に、ICSAで児童ポルノと断定できなかった106件を除外。さらに719件については、「著しい権利侵害とは言えない悪質でない3号児童ポルノ」との判断で除外した。

 また、現在の日本のブロッキングで用いられている仕組みは、DNSによってドメイン単位で遮断する方式のため、児童ポルノと児童ポルノでないコンテンツが混在するサイトでは、児童ポルノ画像を遮断しようとして他のコンテンツまで遮断してしまうことになる。そのため、ブロッキングを適用するのは児童ポルノ画像と児童ポルノではないコンテンツの発信者が同一と認められるサイト(例えばアダルトDVD販売サイトなど)に限定している。この基準を満たさない491件も除外した。

 その結果、ICSAで児童ポルノと判断したURLであっても、ブロッキングの運用基準を満たさないとして、1210件が除外されたことになる。

 最終的には、前述した383件が、ICSAの運用基準を満たすということで、実際にブロッキング対象として国内のインターネットユーザーからの閲覧が遮断された。その後、画像がウェブサーバー側から削除されたものを除くと、8月末時点でもブロッキングされているURLが118件というわけだ。

 一方で、児童ポルノではあるが、前述の運用基準を満たさないとして除外した1201件のうち、8月末時点でも削除されずにウェブ上に存在していたものが346件あった。

(永沢 茂)