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東京都、青少年健全育成条例の“漫画・アニメ”新基準で初の不健全図書指定
(2014/5/13 17:30)
東京都青少年・治安対策本部は12日、「東京都青少年の健全な育成に関する条例(青少年健全育成条例)」による不健全図書として、2冊を指定することを決定したと発表した。同日開催された東京都青少年健全育成審議会からの答申を受けたもの。16日の公報で正式に指定図書を告知する予定。
今回、そのうちの1冊(株式会社KADOKAWAが4月3日に発行したコミック「TECHGIAN STYLE 妹ぱらだいす!2」)が、「著しく社会規範に反する性交等を、著しく不当に賛美し、描写し又は表現することにより、青少年の性に関する健全な判断能力の形成を著しく妨げ、青少年の健全な成長を阻害するおそれがある」という理由で、同条例第8条第1項第2号に該当するとしている。
青少年健全育成条例の第8条第1項第2号は、青少年の性に関する健全な判断能力の形成や健全な成長を妨げる恐れのある漫画やアニメに対する規定として、2010年の条例改正で盛り込まれたもの。強制わいせつや強姦、児童買春、近親者間など著しく社会規範に反する性行為をあたかも社会的に是認されているかのように描いたり、著しく詳細に、あるいは過度に反復して描いている漫画やアニメを、都知事が「不健全図書」として指定できるとしている。漫画・アニメのほか、実写を除くその他の画像も対象ということで、上記に該当する行為を疑似体験させるコンピュータープログラムも含まれる。
不健全図書に指定された図書類(指定図書)は、書店などで18歳未満の青少年に販売することが禁止され、青少年が閲覧できないようビニール袋やひもで包装することや、店員から容易に監視できる場所に一般図書と区分して陳列することが義務付けられる。また、2010年の条例改正では、その図書類が短期間に不健全図書の指定を繰り返した場合、都知事が出版社を勧告・公表できることになった。
ことさら漫画やアニメの規制に言及したこの規定は、改正条例が全面施行された2011年7月1日から施行された。同月以降に発行されたものが対象になるが、その後、2011年8月から2012年4月までに不健全図書に指定された約80冊はいずれも、「著しく性的感情を刺激する」あるいは「著しく自殺もしくは犯罪を誘発する」という従来からの基準(第8条第1項第1号)によるものだった。漫画・アニメを対象とした第8条第1項第2号による不健全図書の指定は、今回が初めて。
なお、2010年の改正条例における漫画・アニメへの規制は、不健全図書指定だけではない。出版社や業界の倫理団体が同等の基準に該当すると認めた図書類について、成年向けであることなどをマークなどで表示するとともに、それらの図書類(表示図書)を青少年に販売・頒布・貸し付けないよう求める努力義務を、出版社や書店業者に課している(第9条の2第1項第2号)。不健全図書指定は、この自主規制から外れて一般向けに販売されているにもかかわらず、上記の基準に該当すると認められる図書類を青少年に販売することを都知事が規制するものだ。
東京都では不健全図書を指定するにあたり、書店やコンビニエンスストアで区分陳列されずに一般向け図書として販売されているものを毎月120~150冊程度購入。その中から第8条第1項第1号または第2号に該当する可能性がある図書をピックアップし、翌月の青少年健全育成審議会に諮問する流れとなっている。実はこれまでも第2号に該当する可能性が検討された図書もあったようだが、その図書が同時に第1号の基準に該当するものであったことから、第2号の適用について諮問するには至らなかった模様だ。公開されている同審議会の議事録を見る限り、従来の第1号の基準を適用できるものについては第1号で指定し、新基準である第2号の適用は慎重に行うスタンスをとってきたと考えられる。
第2号の適用に関しては、漫画・アニメ分野に精通した嘱託の専門委員を設け、該当する可能性のある漫画やアニメなどが出てきた場合は、その芸術性や社会性、学術性、諧謔性、批判性などの趣旨について専門委員が調査を行い、審議会に報告するかたちをとっているという。
指定を受けた図書類がどういうものか確認したい場合は、青少年・治安対策本部青少年課において、その実物を閲覧可能だ。ただし18歳以上に限り、閲覧可能な期間は指定から1年間となっている。
東京都青少年の健全な育成に関する条例(一部抜粋)
(図書類等の販売等及び興行の自主規制)
第7条 図書類の発行、販売又は貸付けを業とする者並びに映画等を主催する者及び興行場(興行場法(昭和23年法律第137号)第1条の興行場をいう。以下同じ。)を経営する者は、図書類又は映画等の内容が、次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、相互に協力し、緊密な連絡の下に、当該図書類又は映画等を青少年に販売し、頒布し、若しくは貸し付け、又は観覧させないように努めなければならない。
一 青少年に対し、性的感情を刺激し、残虐性を助長し、又は自殺若しくは犯罪を誘発し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあるもの
二 漫画、アニメーションその他の画像(実写を除く。)で、刑罰法規に触れる性交若しくは性交類似行為又は婚姻を禁止されている近親者間における性交若しくは性交類似行為を、不当に賛美し又は誇張するように、描写し又は表現することにより、青少年の性に関する健全な判断能力の形成を妨げ、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあるもの
(不健全な図書類等の指定)
第8条 知事は、次に掲げるものを青少年の健全な育成を阻害するものとして指定することができる。
一 販売され、若しくは頒布され、又は閲覧若しくは観覧に供されている図書類又は映画等で、その内容が、青少年に対し、著しく性的感情を刺激し、甚だしく残虐性を助長し、又は著しく自殺若しくは犯罪を誘発するものとして、東京都規則で定める基準に該当し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあると認められるもの
二 販売され、若しくは頒布され、又は閲覧若しくは観覧に供されている図書類又は映画等で、その内容が、第7条第2号に該当するもののうち、強姦等の著しく社会規範に反する性交又は性交類似行為を、著しく不当に賛美し又は誇張するように、描写し又は表現することにより、青少年の性に関する健全な判断能力の形成を著しく妨げるものとして、東京都規則で定める基準に該当し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあると認められるもの
三 販売され、又は頒布されているがん具類で、その構造又は機能が東京都規則で定める基準に該当し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあると認められるもの
四 販売され、又は頒布されている刃物で、その構造又は機能が東京都規則で定める基準に該当し、青少年又はその他の者の生命又は身体に対し、危険又は被害を誘発するおそれがあると認められるもの
2前項の指定は、指定するものの名称、指定の理由その他必要な事項を告示することによつてこれを行わなければならない。
3知事は、前2項の規定により指定したときは、直ちに関係者にこの旨を周知しなければならない。
東京都青少年の健全な育成に関する条例施行規則(一部抜粋)
(指定図書類、指定映画等の基準)
第15条 条例第8条第1項第1号の東京都規則で定める基準は、次の各号に掲げる種別に応じ、当該各号に定めるものとする。
一 著しく性的感情を刺激するもの次のいずれかに該当するものであること。
イ 全裸若しくは半裸又はこれらに近い状態の姿態を描写することにより、卑わいな感じを与え、又は人格を否定する性的行為を容易に連想させるものであること。
ロ 性的行為を露骨に描写し、又は表現することにより、卑わいな感じを与え、又は人格を否定する性的行為を容易に連想させるものであること。
ハ 電磁的記録媒体に記録されたプログラムを電子計算機等を用いて実行することにより、人に卑わいな行為を擬似的に体験させるものであること。
ニ イからハまでに掲げるもののほか、その描写又は表現がこれらの基準に該当するものと同程度に卑わいな感じを与え、又は人格を否定する性的行為を容易に連想させるものであること。
二 甚だしく残虐性を助長するもの次のいずれかに該当するものであること。
イ 暴力を不当に賛美するように表現しているものであること。
ロ 残虐な殺人、傷害、暴行、処刑等の場面又は殺傷による肉体的苦痛若しくは言語等による精神的苦痛を刺激的に描写し、又は表現しているものであること。
ハ 電磁的記録媒体に記録されたプログラムを電子計算機等を用いて実行することにより、人に残虐な行為を擬似的に体験させるものであること。
ニ イからハまでに掲げるもののほか、その描写又は表現がこれらの基準に該当するものと同程度に残虐性を助長するものであること。
三 著しく自殺又は犯罪を誘発するもの次のいずれかに該当するものであること。
イ 自殺又は刑罰法規に触れる行為を賛美し、又はこれらの行為の実行を勧め、若しくはそそのかすような表現をしたものであること。
ロ 自殺又は刑罰法規に触れる行為の手段を、模倣できるように詳細に、又は具体的に描写し、又は表現したものであること。
ハ 電磁的記録媒体に記録されたプログラムを電子計算機等を用いて実行することにより、人に刑罰法規に触れる行為を擬似的に体験させるものであること。
2 条例第8条第1項第2号の東京都規則で定める基準は、次の各号のいずれかに該当するものであることとする。
一 性交又は性交類似行為(以下「性交等」という。)のうち次に掲げる行為を、当該行為が社会的に是認されているものであるかのように描写し若しくは表現し、又は当該行為の場面を、みだりに、著しく詳細に若しくは過度に反復して描写し若しくは表現することにより、閲覧し、又は観覧する青少年の当該行為に対する抵抗感を著しく減ずるものであること。
イ 刑法(明治40年法律第45号)第176条から第178条の2まで、第181条又は第241条の規定の違反行為
ロ 児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(平成11年法律第52号)第4条の規定の違反行為
ハ 児童福祉法(昭和22年法律第164号)第34条第1項第6号の規定に違反する行為
ニ 条例第18条の6の規定に違反する行為
二 近親者間(民法(明治29年法律第89号)第734条から第736条までの規定により、婚姻をすることができない者の間をいう。)における性交等を、当該性交等が社会的に是認されているものであるかのように描写し若しくは表現し、又は当該性交等の場面を、みだりに、著しく詳細に若しくは過度に反復して描写し若しくは表現することにより、閲覧し、又は観覧する青少年の当該性交等に対する抵抗感を著しく減ずるものであること。
三 電磁的記録媒体に記録されたプログラムを電子計算機等を用いて実行することにより、人に前二号に掲げる性交等に該当する行為を擬似的に体験させるものであること。