総務省、「光の道」パブコメ287件の意見を公表、再意見募集を開始


 総務省は17日、「光の道」構想について募集していたパブリックコメントの結果を公表した。提出された意見は計287件で、内訳は個人が162件、企業・団体・自治体などが125件。総務省では、提出された意見に対する再意見募集を開始した。募集期間は8月31日まで。

 総務省では、2015年ごろをめどに、全世帯でブロードバンドサービスを利用する「光の道」構想の実現に向け、「グローバル時代におけるICT政策に関するタスクフォース」で検討を進めている。タスクフォースでは、今後の検討の参考とするため、7月27日から8月16日までパブリックコメントを募集し、287件の意見の提出があった。

 「光の道」構想に対しては、ソフトバンクの孫正義代表取締役社長が、NTT東西のアクセス回線部門を分離した会社を設立し、既設のメタル回線を一気に光回線に置き換えることを提案。メタル回線の撤去により施設維持費が下がることから、アクセス回線会社は黒字となり、公的資金を投入せずに5年間で光回線の100%整備が可能だと主張しており、提出意見の中ではソフトバンクBB、ソフトバンクテレコム、ソフトバンクモバイルの3社が連名でこの意見を述べている。

 これに対してNTTは提出意見で、「光アクセスの機能分離や構造分離については、ユーザー利便やイノベーション、投資インセンティブ、経営の効率化、企業価値といった様々な観点からの課題も多く、また、これまでNTTと設備競争をしてきた電力系やCATV事業者の事業運営にも大きな影響を及ぼすことから、とるべき選択肢ではないと考えます」と主張。ブロードバンド基盤の整備については、光回線に限らず、CATVや無線ブロードバンドなどの中から、住民ニーズを踏まえて最適な技術で行うことが適切だとしている。

 KDDIも同様に、効率的な基盤整備のためには光回線に限定せず最適な技術を活用すべきと指摘。エリアによって条件次第では、WiMAXの方がFTTHよりも整備コスト・維持コストとも安価になるケースを例示している。また、これまでのブロードバンドの普及は競争政策によってもたらされたもので、設備競争を後退させるような政策はユーザーの利益を損なうおそれがあるとして、より一層の競争促進策が必要だと主張。NTT東西のアクセス網の開放ルールを徹底するとともに、開放状況について開始体制を強化することが必要で、これを組織的に徹底させるためのNTT東西の設備管理部門の機能分離または構造分離といった政策の実行が考えられるとしている。

 ケイ・オプティコムでは、同社をはじめとする地域系通信事業者やCATV事業者などアクセス網を持つ事業者がNTT東西との間で設備競争・サービス競争を行ってきた成果として、世界最高水準の通信環境が整備できたと説明。超高速ブロードバンドを強制的に提供することは、過剰投資や投資回収の困難化などによりインフラの脆弱化を招きかねないとして、まずは超高速ブロードバンドを生活必需サービスとするための利活用策が必要だとしている。また、NTTの組織形態については、公正競争環境の確保、市場支配力行使の抑止の観点から検討すべきであって、「光の道」整備とは関連付けるべきではないと主張。NTT東西の設備開放についても、設備を借りる事業者の方が設備投資を行う事業者よりも既に優位な状況にあることから、これ以上の設備開放を目的とした施策は必要ないとしている。


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(三柳 英樹)

2010/8/17 18:38