CATV連盟が“光の道構想”で意見表明「十全の検討を」


 全国のCATV事業者が所属する業界団体「日本ケーブルテレビ連盟(JCTA)」は7日、総務省の作業部会を中心に検討中の「光の道構想」について、文書で意見表明を行った。ブロードバンド網の普及促進などの構想趣旨には賛同する姿勢を示しつつも、結論を拙速に求めることなく、国民全体を巻き込んで十全の検討を行うべきだと主張している。

 光の道構想は、総務省の原口一博大臣が2009年12月に発表した政策目標「原口ビジョン」を受け、総務省のICTタスクフォースなどで議論が進められている。光ファイバーによるブロードバンド網の全世帯配備、NTTの分割・再編などを目指しているが、5月中旬には基本的な方針が示される予定という。しかし構想を巡っては、タスクフォースの場以外でも電力系FTTH事業者やソフトバンクが発言を行っており、各事業者がそれぞれ異なるスタンスを示している。

 JCTAは意見表明文の中で、光ファイバーのみを主要アクセス手段として扱うことについて、疑問を呈している。「現在のCATV網は、そのほとんどがFTTN(Fiber To The Node) /HFCによる光ハイブリッド網であり、最大160Mbpsの通信も可能。光ファイバーと比べても何ら遜色ない」とし、技術的優位性で劣る部分はないと訴えた。

 加えて、アクセス回線網は技術的進歩が著しく、光ファイバーであっても陳腐化する可能性はあると説明。WiMAXなどの無線アクセスも含め、多種多様なネットワークが選択できる技術的中立性のためにも、さらなる議論が必要だと補足している。

 また光の道構想では、現在NTTが保有する光ファイバー事業を分離し、国などが主導する独占的アクセス網敷設・管理会社へ移管させ、希望する事業者に公平な条件で貸し出すといった方向性をソフトバンクなどが主張している。しかしJCTAは、この条件では競争原理が働かず、技術革新の停滞やコストの膨張が予想されると論じる。

 JCTAでは独占的アクセス網会社の設立について、光の道構想の主目的であるブロードバンド網の普及促進に加え、参入事業者数を増やすための光ファイバー網開放も同時に求めようとする結果、意見が錯綜していると分析。本来の目的を実現できる可能性、国民負担などを考慮し“決めうち(結論ありき)”ではない政策を選択すべきだと提唱する。事業者への支援も、公平性に十分留意すべきだとした。

 なお、光の道構想を実現するための具体的施策については、実際のコスト情報などを踏まえて入念な準備・検証が必要だと強調。仮に独占的アクセス網会社を設立する場合は「料金は本当に下がるのか」「伝送容量の確保等の機能面で問題が生じないか」「具体的な利活用をどのように行うのか」「地域に悪影響を与えないか」などを検討項目に挙げている。

 意見表明のまとめでは、すでに“地域の動脈”として機能しているCATV網を資源として有効活用すべきだと改めて主張。さらに「国民レベルでのオープンかつ十分な検討を」と、引き続き議論する必要性に言及している。


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(森田 秀一)

2010/5/10 18:04