「光の道」構想について孫社長が会見、NTTとの直接討議と情報開示を求める


ソフトバンクの孫正義社長

 ソフトバンク株式会社は23日、総務省の「光の道」構想に関する記者説明会を開催した。孫正義代表取締役社長は、「NTTのアクセス回線部門を分離するとともに、従来の電話線(メタル線)を撤去してすべて光ファイバーに置き換えるべき」という主張を説明するとともに、NTTに対して情報の開示と直接の討論を呼びかけた。

 総務省では、2015年ごろをめどに、国内の全世帯がブロードバンドサービスを利用するようになる「光の道」構想を掲げ、この構想の実現に向けて「グローバル時代におけるICT政策に関するタスクフォース」で検討を進めている。23日には事業者に対する非公開の公聴会が行われ、公聴会を終えた孫氏が説明会を開催。説明会の模様は、Ustreamやニコニコ生放送でも中継された。

 孫氏は、「光の道」構想の実現に向けて、NTTのアクセス回線部門を会社分離し、この会社がメタル線をすべて光ファイバーに置き換えることで、5年間で光100%が実現できると提案。敷設のためには約2.5兆円がかかるが、税金は投入せずにアクセス会社が自力で資金調達できると試算している。

 これらの数字はすべてNTTの公開資料から試算したものだとして、「田舎にまで光ファイバーを引くのは無駄だと言う人もいるが、メタル線は経過年数と距離に応じて保全費が高くなる。回線維持コストを考えれば、田舎の方にこそ光ファイバーを引くべき。現状はメタルと光で二重にコストがかかっているが、光100%にすることで回線維持コストは年間5000億円削減できる。これをやらない理由はない」と説明。コスト削減により、現在は赤字となっているアクセス回線部門は黒字化するため、2.5兆円の設備投資費は民間から調達可能だとしている。

光ファイバー敷設費の試算田舎の方が回線維持コストがかかると説明
メタル線の保全費に関するデータ光100%にすることでコストが5000億円削減できると主張

 また、公正競争のためにはアクセス回線会社は分離し、その回線上でNTT東西やその他の接続事業者がサービスを提供する形にする必要があると主張。ユーザーに対しては、現在のメタル線の回線料と同じ月額1400円で光ファイバーを提供することは可能で、その上で各社が競争するため、「少なくともソフトバンクはADSL以下の価格でサービスを提供する用意がある」と語った。

 孫氏は、現在検討を進めているタスクフォースについて、「本来、タスクフォースの委員の方はレフェリーで、当事者同士が意見を戦わせるべきだが、現状はレフェリーであるはずの委員の方と議論している状態」だとして、議論を加速するためにNTTとの直接討議を行ないたいと主張。また、公聴会が非公開の形で行われたことにも不満を述べ、「議論はインターネットで生中継するなど、国民に開かれた形で行うべきだと主張してきた」と語った。

 委員からは、「NTTが十分な資料を開示した結果、ソフトバンクの試算が間違っていたらどうするのか」という質問があったとして、「その場合には頭を丸めて、ソフトバンクの説は引っ込めます」とコメント。「ただし、我々もプロとして、公開されている資料を精査して出した数字。我々は1400円でやれるはずだと何カ月も言っているのだから、できないというのであれば数字で反論すべきで、その根拠を示して欲しい」として、NTTに対して十分な情報の開示と直接の討議を求めた。

アクセス回線会社はNTT東西から分離各社はアクセス回線上のサービスで競争
NTTに対して直接討議と情報開示を呼びかけたネット中継など開かれた形での議論を要求

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(三柳 英樹)

2010/8/24 13:40