Postel賞にKilnam Chon氏、Itojun賞は6rdの開発者Cassen氏とDespres氏に


 2011年11月16日、台北で開催されている第81回IETFの全体会議において、Postel賞(Postel Service Award)およびItojun賞(Itojun Service Award)の発表が行われ、Postel賞はKilnam Chon氏(慶應義塾大学特任教授、KAIST名誉教授)に、Itojun賞はAlexandre Cassen、Remi Despres 両氏に授与されることが発表された。

 Postel賞は、1998年に急逝したジョン・ポステル氏にちなんでインターネットソサエティ(ISOC)が1999年に設置した賞で、インターネットに多大な貢献をした人に贈られる。また、Itojun賞は、Itojunの愛称で親しまれIPv6の開発と普及に尽力していた中、2007年に37歳で急逝した萩野純一郎博士にちなんでインターネットソサエティに設置された。Itojun賞は萩野氏の遺志を継ぎ、IPv6の開発・普及・展開に尽力した者へ授与することを目的としており、今回が3回目となる。

 Chon氏の受賞は、韓国でのインターネット発展への貢献だけでなくアジア全体におけるインターネット発展への大きな貢献が認められたもの。選定委員会の村井氏は、「アジアのインターネットコミュニティはChon氏の後押しでスタートしており、同氏の貢献はアジア全体のインターネットに対するものである」と受賞理由を挙げた。

 Chon氏に贈られた受賞杯には、「For his significant contributions in the development and advancement of the Internet in Asia.(アジア地域のインターネットの発展と振興に対する彼の大きな貢献に対して)」と刻まれた。

 Chon氏は、現在20億人と言われているインターネットの利用者が、これからの3年間で50億人になるだろうと予測されているが、そのほとんどがアジアとアフリカの人々であることについて触れ、50億という数字は、インターネットを必要とするほぼ全ての人にインターネットが行き渡ることを意味していると述べた。「これを実現するためには技術的にも、戦略的にも、政策的にもさまざまな挑戦がある。多くの人がこの挑戦に参加してくれることを期待する」と今後の抱負を語った。

Postel賞を受賞したKilnam Chon氏Chon氏(左)と選定委員会の村井氏(右)

 また、Alexandre Cassen、Remi Despres両氏の受賞は、6rdの設計と実装、および6rdを用いた世界最大のIPv6公衆サービスFree Telecomの成果に対するものとなる。6rd(RFC5569: IPv6 Rapid Deployment)は、IPv4の既存ネットワーク上にトンネル技術を用いてIPv6のパケットを流通させることを可能にする技術で、比較的容易に実現が可能でコスト負担が軽いことからIPv6展開に有効な技術の1つと考えられている。

 受賞したDespres氏は、6rd開発の経緯を語り、「ItojunにIPv6を普及させることをこんなにも楽しんでいると伝えたい」と語った。また、今回授賞式に参加できなかったCassen氏については選定委員会の村井氏がコメントを代読。Free Telecomでは6rdを使って参加者全てがIPv6を使えるようになっており、今や150万もの利用者が毎日IPv6を利用していることを明らかにした。

 なお、今回のIETFではApplied Networking Research Prize(ANRP0を、慶應義塾大学の本多倫夫氏が「Is it Still Possible to Extend TCP?」という論文で受賞している。ANRPは、インターネット技術とその標準化に関わる研究成果を発表した論文をIRTFが表彰するもので、前回のIETF全体会合から設立された。

itojun賞を受賞したRemi Despres氏授賞式に参加できなかったCassen氏




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(溝内 公紘)

2011/11/17 13:24