電力系通信事業者9社、光ファイバーの「1分岐単位接続」に反対意見
ケイ・オプティコム代表取締役社長の藤野隆雄氏 |
ケイ・オプティコム経営戦略グループ部長の橘俊郎氏 |
株式会社ケイ・オプティコムなど電力系通信事業者9社は30日、情報通信審議会の委員会などで議論されている、NTT東西の光ファイバーアクセス回線を1分岐単位で他事業者が借り受けられるようにする分岐単位接続料制度について、「NTT東西にコストをつけ回すもので、借りるだけの接続事業者のみ一方的に有利となり、公正な競争を阻害する」とする9社合同の反対意見を総務大臣に提出した。
現在、NTT東西の一戸建て住宅向けFTTHサービスなどでは、1本の光ファイバーを最大32ユーザーで共用するシェアドアクセス方式で提供されており、他の事業者がこの回線を借りてFTTHサービスを展開する場合は、8分岐(8ユーザー)単位で借りる形となっている。ADSLの場合はNTTの局舎から加入者宅までのメタル線を1本単位で借りることができるが、光ファイバーでは8分岐単位でまとめて借りなければならないためコスト負担が大きいとして、ソフトバンクテレコムなどの事業者が1分岐単位で回線を借りられる制度の導入を求めている。
この問題については、情報通信審議会のブロードバンド普及促進のための競争政策委員会と、情報通信行政・郵政行政審議会の接続委員会で議論されているが、NTT東西では1分岐単位での貸し出しには多くの問題があるとして、実施する考えはないと主張。電力系通信事業者9社も、光ファイバーを独自に敷設している事業者が不利な競争を強いられるとして、反対意見を表明した。
ケイ・オプティコム代表取締役社長の藤野隆雄氏は、「合理性のない分岐単位接続料制度の導入は、公正な競争環境を阻害し、設備事業者の事業撤退・縮小を招く。最終的には国民が不利益を被る」と説明。「料金低廉化のための取り組みには大いに賛同するが、競争ルールを歪める施策には断固反対する」と訴えた。
ケイ・オプティコム経営戦略グループ部長の橘俊郎氏は、「分岐単位接続料制度の最大の問題は、接続事業者が一部の設備コストしか負担せず、NTT東西にコストをつけ回すことだ」として、光ファイバーを借りて事業を展開する業者のみが有利になると説明。現状の8分岐単位接続でも、KDDIが全国で「auひかり」サービスを展開して約207万件の加入者を得ており、競争環境は正当に機能しているとして、分岐単位接続料制度を導入する必要はないと主張した。
また、利用者が少ない地域などでもサービス展開を促すためには分岐貸しの仕組みが必要だとする意見に対しては、希望する事業者が共同で回線を借り受ける「コンソーシアム方式」であれば問題は解決できると説明。加入者が少なく、競争原理が働きにくいような地域の光化については、公的支援のような特別な制度が適当だとした。
橘氏は、「ブロードバンドサービスは、市場競争の中でアクセス網を進化させ、アクセス網の進化があったからこそサービスの高度化が進展してきた」として、「一部事業者だけが不公正に利益を得るような制度の導入は、これまで自らリスクを取って設備投資し、地域のブロードバンド化推進に寄与してきた地域アクセス系事業者やCATV事業者の努力を否定するものだ」と主張。分岐単位接続料制度の導入は、旧来のNTT独占状態に回帰し、設備競争やサービス競争が起こらなくなるといった事態を招くものだとして、許容できるものではないと訴えた。
意見書の骨子 | 光ファイバーの接続方式 |
1分岐単位で回線を借りられるようにする制度が検討中 | 制度の実現イメージ |
制度はNTT東西にコストをつけ回すものだとして反対を表明 | 希望する事業者が共同で回線を借り受ければ問題は解決できると説明 |
関連情報
(三柳 英樹)
2011/11/30 16:12
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