拡張機能「AdBlock Plus」に「受け入れられる広告」表示機能、波紋を呼ぶ


 FirefoxとGoogle Chrome向けの人気拡張機能「AdBlock Plus」が、一部の広告を例外的に表示させる機能を追加したことが明らかになり、波紋を呼んでいる。

 AdBlock Plusはウェブサイトで表示される広告をブロックする機能を提供しており、常に拡張機能ランキングの上位に位置している人気の拡張機能だ。

 しかし先週公開された開発者向けバージョンには、一部の広告をホワイトリストによって例外的に表示させる機能が組み込まれていた。この機能は隠されていたわけではないが、多くのユーザーはこれに気付かずにいた。ところが昨日になってRedditなどでこのことが取り上げられ、急に話題になり始めたことで問題意識が持たれるようになっている。

 このホワイトリスト機能はデフォルトでオンになっており、ユーザーは後で設定画面からオフにできる。ホワイトリストは開発者のWladimir Palant氏によって人手によってメンテナンスされる。ホワイトリストの実現方法としては、以前からあるフィルタリング機能を利用している。登録されているサイトやフィルタリング内容は誰でも見ることが可能だ。

 Palant氏は、「受け入れられる広告」の種類として3つの条件を挙げた。1)アニメーション、音などを伴わない静的な広告、2)テキストのみが望ましく、注意を引きつける画像は望ましくない、3)ページ読み込み遅延を生じさせるスクリプトは多くても1つだけ(特にDNSリクエストは1回のみ)――という基準を設けている。ただしこの基準は最終的なものではなく、今後改良していきたい考えだ。また、「Do Not Track」ポリシーも強制したい考えだが、「今はまだ強制できる立場にはいない」と述べている。

 Palant氏は、すでにいくつかのウェブサイトをホワイトリストに掲載することで「合意している」と述べているが、どのような条件のもとで合意したのか、金銭の授受が伴っているのかなどは今のところ不明だ。

ウェブサイト収益化には一部広告が必要との考え方から

 Palant氏はこのような機能を設けた理由として、「ウェブサイト、特に小規模なウェブサイトが広告収入減少の結果として運営できなくなる危険性を考えたからだ」と説明している。そのため、できるだけユーザーの邪魔にならない広告のみを表示し、収益化機会を設けたとしている。

 この目的を達成するためには、ホワイトリストをデフォルトでオンにする必要があった。ほとんどのユーザーは設定を変更しないからだ。どうしてもすべての広告を表示をしたくない場合には設定画面から変更することが可能だとしている。

 AdBlock Plusは人気の高い拡張機能だけに、今後ある程度の影響力を持つ可能性はある。よいシナリオで推移すれば、今後、AdBlock Plusのホワイトリストに掲載できるタイプの広告が増え、“悪質”なポップアップやアニメーション広告の減少を期待できると言えるかもしれない。

 その半面、ホワイトリストが人為的にメンテナンスされていることから、どのような条件のもとホワイトリストに掲載されるのか、交渉過程が明確にされる必要もあるだろう。

 この問題は、ウェブサイトが無料で情報提供をする代わりに、収益化手段として広告が重要であるにもかかわらず、多くのユーザーは広告を表示したくないというジレンマを反映したものと言えそうだ。


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(青木 大我 taiga@scientist.com)

2011/12/13 11:57