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恥ずかしい英文を正し、ネイティブ級に高めてくれるAndroidキーボードアプリ

イスラエル発「Ginger」が日本語入力モードもサポート

 Ginger Softwareは、同社が提供する英文チェッカー機能付きAndroidキーボードアプリで、日本語入力環境に対応したと発表した。2週間試用できる無料版「SPELLING & GRAMMAR KEYBOARD」と、990円の有料版「GRAMMAR & SPELLING KEYBOARD PRO」があり、Google Playよりダウンロードできる。

入力した英文テキスト中の間違った単語に対して正しい単語がリストアップ表示される。チェックボタンをタップすれば一括で置き換えられる
画面左下の辺りにある羽根ペンボタンをタップすることで、ネイティブ級の置き換えフレーズが提示される。「love」「hate」などを感情表現を使ったテキストでは、より豊かな表現になるフレーズをレコメンドするとしている

ネット上の1.5兆超の英単語・フレーズ解析し、NLUプラットフォーム独自開発

 Ginger Softwareは、文脈に合わせて文法やスペルを修正してくれる英文チェッカー「Ginger」や、文脈を推測してネイティブ級のナチュラルな置き換えフレーズを提示してくれるという「Rephraser」を開発・提供しているイスラエルの企業。インターネット上にある1.5兆超の英単語やフレーズを解析した自然言語理解(Natural Language Understanding:NLU)プラットフォームを独自開発し、それをベースに最適な英語表現を提示する仕組み。

 これにより、スペルが正しくても文脈上使い方がおかしい場合は最適な単語を提示するという。例えば「Let's grab a bear」(熊をつかもう)に対して「Let's grab a beer」(ビールでも飲もう)を提示する。また、「Hello word」なども、スペルは間違っていないが統計的によく使われる「Hello world」を提示する。

 これらの機能は、すでにWindows PC向けにブラウザーエクステンションやWord/Outlook/PowerPoint対応アドインソフトウェアとして提供中。2009年のサービス開始以来、累計450万件インストールされ、そのうち300万件がアクティブに利用されているという。また、Android向けにはキーボードアプリを公開し、ベータ版の段階で約40万ダウンロードあったとしている。

英文チェッカー機能「Ginger」による間違いの指摘例
リフレーズ機能「Rephraser」による置き換え表現の例

 そのAndroidキーボードアプリがアップデートされ、新たに24言語の入力がサポートされ、計61言語に対応した。日本語入力に関しても、同アプリ上で英語入力モードと日本語入力モードを切り替えて使えるようになった。日本語入力については、QWERTYキーボードによるローマ字入力のほか、フリック入力や、Google日本語入力で搭載されている「Godanキーボード」配列もある。

 また、試用版を経ずに初めから有料版を利用できるアプリとして、今回、GRAMMAR & SPELLING KEYBOARD PROもラインナップした。なお、無料版のSPELLING & GRAMMAR KEYBOARDでは、試用期間終了後に有料移行しなければ、英文チェッカーのない単純なキーボードアプリとなる。試用期間が区切られている以外は、有料版・無料版とも機能は同じ。

日本語入力モード。予測変換にも対応する
フリック入力のキー配列も選択可能

発見できる英文ミスはWordの6倍、正確性は3.5倍

 Ginger SoftwareのCMOを務めるディビッド・ノイ氏は、Gingerの英文チェッカーの強みとして“カバレッジ”と“正確さ”という2つを挙げ、Microsoft Wordのスペルチェック機能と比較しながら説明する。同氏によると、Wordが指摘してくれるのは基本的にはスペルだけであり、文法には弱いという。これに対してGingerはカバレッジが広く、Wordの6倍の英文ミスを発見できるとともに、指摘する訂正の正確さもWordの3.5倍になるとした。

 具体的にはGingerのエンジンは30カテゴリーの文法チェックに対応しており、文脈からスペルミスを指摘できるほか、前置詞の種類、句読点や定冠詞の有無、単語の分離・結合――といった部分までチェックする。

カテゴリー元のテキストGingerによる訂正
文脈によるスペルチェックLet's meat at three oclockLet's meet at three o'clock
前置詞I will come to Tokyo at FebruaryI will come to Tokyo in February
句読点However during my trip I will visit Hong Kong Japan and ThailandHowever, during my trip I will visit Hong Kong, Japan and Thailand
定冠詞I have a meeting on first dayI have a meeting on the first day
分離・結合Any thing is possibleAnything is possible

 Ginger Softwareでは今後、英文チェッカー機能に加えて、翻訳や辞書、類義語などの関連機能の追加を計画している。翻訳というのは、例えば「keep it simple」と入力する際、「simple」という単語が分からない場合、「keep it 簡単」と入力すれば翻訳してくれるというものだ。

 また、スマートフォン対応では、Androidアプリに続いて、iOSアプリをリリースする予定。まずは2月に開催される「Mobile World Congress 2014」でお披露目する予定だという。ただし、iOSではサードパーティ製のキーボードアプリが提供できないため、テキストエディター的なスタンドアローンアプリとして提供するとしている。

Ginger Software CMOのディビッド・ノイ氏

 ところで、Ginger SoftwareのNLUプラットフォームはクラウドで提供されており、英文チェッカー機能などはクラウドと連携して機能する方式だ。入力したテキストの情報は端末からサーバーに送信されるため、情報漏えいなどの観点からは、その仕組みを理解した上でGinger Softwareのサービスを使用する必要がある。

 ノイ氏によれば、セキュリティ面にはもちろん配慮しており、まず、通信はSSLで保護されているという。また、サーバー側では送信されてきたテキストの情報を保管するが、元のテキスト全体ではなく、ユーザーが間違いを訂正した部分の断片的なデータのみだとしている。それについてもユーザーアカウントごとに管理されており、そのユーザー自身が学習機能を利用するためだけに保管されているデータが利用されるとしている。

 一方、ユーザーを特定できない統計データというかたちでは、Ginger Softwareのサービス改善のために、送信されてきたデータを分析・活用しているという。例えば、間違いを指摘して訂正候補を提示したにもかかわらず、実際にはユーザーがその訂正を受け入れていないパターンが多いことが判明すれば、Ginger側のエンジンが間違えている可能性を調査して改善するといった具合だ。また、「selfie」(自分で撮影した自分の写真)のようなトレンドとして用いられている新語の認識にも活用しているとした。

(永沢 茂)