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新ドメイン「.nico」が降臨、オフィシャルなニコニコ界隈を一目瞭然化

 インターネットの名前空間に2月中旬、新しいgTLD(generic Top Level Domain:分野別トップレベルドメイン)として「.nico」が誕生した。株式会社ドワンゴが、このドメインの管理・運営事業者(レジストリ)だ。

 同社によると「.nico」とは、「ニコニコ動画」「ニコニコ生放送」などを展開しているサービスブランド「niconico」のこと。ただし、現時点では「.nico」の具体的な運用方法や運用開始時期については検討中だとしており、「nic.nico」「whois.nic.nico」というページが同ドメインで公開されているのみだ(「.nico」と並ぶと紛らわしいが、この場合の「nic」は「Network Information Center」の略だろう)。

「nic.nico」でアクセスできるページ。この「nic.○○」というドメイン名の同様のフォーマットのページは、新gTLDの申請・運用代行事業を手掛けるGMOドメインレジストリ株式会社が受託している新gTLDで開設されている

 gTLDはこれまで「.com」「.net」「.info」「.biz」「.xxx」など22種類に限られていたが、社名やブランド名、地名、そのほかの一般の単語などを使えるようにする“新gTLD”の枠組みを、ICANN(Internet Corporation for Assigned Names and Numbers、ドメイン名・IPアドレスの割り当て管理を行う組織)が推進。その結果、1900種類以上の申請があり、審査などを経て、実に約1300種類もの新gTLDが名前空間に追加される見込みとなっている。

 新gTLDとしては例えば、インターリンクによる萌えドメイン「.moe」、テレビCMも放映されたGMOによる「.tokyo」、Googleによる日本語gTLD「.みんな」などがすでに登場しており、「.com」などと同じように、これらの新gTLDのドメイン名登録サービスが提供中。「○○.moe」「○○.tokyo」「○○.みんな」といったドメイン名を取得して、ウェブサイトなどで利用することができるようになっている。

 「.nico」も新gTLDの1つだが、その性質は「.moe」「.tokyo」「.みんな」などとは大きく異なる。新gTLDは、ドメイン名サービスを通じて一般に解放せずに、企業・組織内で独占的に使用することも可能だ。冒頭でも述べたように、「.nico」はniconicoブランド専用のgTLDとなっているのだ。

 ドワンゴが「.nico」の新設を申請した際の資料がICANNのサイトで公開されているが、それによると、「.nico」にドメイン名を登録して利用できるのはレジストリであるドワンゴ自身に限定され、その数も初年度40件以下の見込み。その後、ドワンゴが新サービスなどを開始するのに伴い、数年で150件程度に増えそうだとしている。

 自社用に社名やブランド名などを使った新gTLDとしては、日本の企業から申請があったものだけでも「.canon」「.nikon」「.sony」「.toshiba」「.hitachi」「.toyota」「.nissan」「.honda」「.yodobashi」「.chintai」など多数ある(この中には、まだインターネットに追加されていないものもある)。

 ドメイン名を含む知財保護分野の情報サービスを手掛けるトムソン・ロイターの調査では、ICANNに申請のあった約1900件のうち、34%がブランドgTLDだったとしている。

 こうした新gTLDが企業のブランディングに効果があることは言うまでもないが、企業がわざわざ自社のブランドgTLDを新設・運用するということは、「.com」などの既存TLDでドメイン名を1個取得するというのとはわけが違う。ICANNの審査を受けるにも、それを運用していくにも、けた違いのコストや手間がかかる(申請時に18万5000ドル、運用開始後に年間2万5000ドル+αをICANNに支払うほか、システム運用コストも発生)。

 しかし、そうまでして自社ブランドのgTLDを新設してしまえば、そのドメイン名空間を自社のコントロール下におけるという大きなメリットがある。前述のように「.nico」はドワンゴだけがドメイン名を登録できる名前空間のため、登録したいドメイン名の文字列が空いているかどうかといったことに左右されることなく、提供するサービスに最適な分かりやすいドメイン名を登録して運用できる。ユーザーにとっては、サービスにアクセスしやすくなるわけだ。

 また、第三者が紛らわしいドメイン名を登録して偽サイトや詐欺サイトを開設することができないため、「.nico」ドメインであれば、ドワンゴが提供する正規のniconicoサービスである――というように、ユーザーが判別しやすくなるというセキュリティ面での効果もある(ただし、将来的には、提携リセラーやパートナー企業へセカンドレベルドメインを使用させることも考慮する可能性は考えられるという)。

 ドワンゴでは、「.nico」の運用開始の際にあらためて告知するとしている。

(永沢 茂)