レビュー

オフィスに「AKRacing Wolf」を導入したら、集中力がこんなに変わる!?

ゲーミングチェアがデスクワークの“気持ちイイ”相棒に

AKRacing Wolf ゲーミング・オフィスチェア

「AKRacing Wolf ゲーミング・オフィスチェア」をオフィスに導入してみた

 オフィスにおける椅子の重要性はかなり以前から叫ばれていたことだと思うけれど、4年ほど前に筆者が自分たちのオフィスを立ち上げた時は、とにかく「それなりに座れるものならいいか」としか考えておらず、大したこだわりもなく選んでしまったものだ。その選択に後悔はしていないけれど、積極的に「良かった」と思えることもなかった。

 仕事場に導入するうえでは、もちろん「予算」というのがあり、事前に効果のはっきり見えないイスに大きな投資はしにくい。でも、値段が安かろうが高かろうが、どんなイスでも一度買ってしまえば、壊れたり、引っ越したり、内装工事をしたりといった大きなイベントでもない限り、買い替えようと思うことはまずないだろう。

 ということで、“それなり”のイスを4年間使い続けてきた筆者なのだけれど、今回「AKRacing Wolf ゲーミング・オフィスチェア」を使わせてもらう機会があって、買い替えタイミング“待つ”なんていう考えを改める必要がありそうだと思った。とにかく、良いイスは気持ちイイし、仕事も効率良くこなせるようになるからだ(仕事の出来不出来はともかく)。

エントリー向けながらランバーサポート&ヘッドレスト付きのおトクなモデル

 「AKRacing Wolf」は、主にゲーマー向けのゲーミングチェアとしてリリースしているAKRacingブランドのモデルのうち、コストパフォーマンスに優れたエントリー向けの製品だ。Wolf(3万9800円)以外には最上位の「Pro-X」(5万2800円)と、その次のクラスの「NITRO」(4万2800円)の計3種類をラインアップしており、それぞれで調整機構の有無や使用素材、デザインが異なっている。

 今回導入したWolfは、夏場でも汗などでベタつかないよう、座面や背もたれの大部分にファブリック(布)素材が用いられ、差し色として赤あるいは白やグレーとして入っている部分にPUレザー(合成皮革)が使われている。調整機構としてはイス全体(ガスシリンダー)の昇降、アームレスト(肘掛け部分)の高さ、リクライニング角度の大まかに3カ所。決して多機能ではないけれど、エントリー向けとして必要十分な機能を装備しているモデルと言える。

黒いところはファブリック素材、赤いアクセントの部分はPUレザーとなっている

 それ以外には、腰の負担を和らげるランバーサポートや、頭と首の疲労を軽減するヘッドレストが付属しており、好みに応じて自由に取り付け・取り外しができる。が、よほど体型に合わない事情があったりするのでなければ、この2つのクッションを装備しないという選択肢はほぼありえないだろう。エントリーモデルといえど、こうした付属品が標準で利用できるのはとってもありがたい。

ランバーサポートが付属
ヘッドレストもしっかり用意されている

しっかり感があるのに取り回しは軽快。バランスの良さを感じる一品

 さて、このWolf、手元に届いた時はバラバラのため、説明書を読みながら同梱の工具を使って自分で組み立てる必要がある。といっても、大きめのボルトを10本くらい緩めたり締めたりするだけなので、難しいところはまったくなし。時々写真撮影しながら1人で慎重に作業したにもかかわらず、わずか30分程度で組み立てが完了した。通常であれば30分もかからずに組み上がるに違いない。

届いたWolfの箱を開けたところ。箱自体はなかなかの大きさ
5本脚を取り出すと、次は背もたれが見える
さらに取り出していくと座面や細かいパーツが現れる
すべてのパーツを取り出した
添付の組み立てマニュアルを見れば間違いはない
付属の工具でネジを緩めたり、締めたり
背もたれと座面を組み上げたところ
キャスターを取り付けた5本脚をガスシリンダーに差し込む
ランバーサポートとヘッドレストのベルトを背面側に通し、完成
背景の仕事場の汚さはご勘弁いただきたい……狭いオフィスなので……

 どちらかというと、こういった高機能チェアを組み立てる際に注意しておきたいのは、組み立て手順の複雑さより、重さや大きさだろう。Wolfも内部にスチールフレームを用いているせいか、座面と背もたれはかなりがっしりした作りになっている。けれど、全体的には重すぎず、大きさとしてもコンパクトな方で、組み立て時の作業性は高い。重すぎないので転がした時は意外に軽快感があり、カーペット敷きの筆者のオフィスでも軽々と動かせる。

 高機能チェアのなかには、立派な図体だけれど、その分重くて取り回しが難しいイスというのもある。もちろんそういった“個室の重役イス”みたいなのが好みの人もいるだろうし、本当にオフィスの1人部屋に導入するのであれば、取り回しのしやすさより可能な限りの安定感がほしいと思うかもしれない。Wolfは、そういう極端さはなく、重厚感(剛性感)と取り回しの良さをちょうどうまくバランスさせた製品と感じる。

カーペットの上を力を入れずに楽に転がせるのは、イス自体が重すぎず、キャスターも滑らかに動いているおかげだろう

 例えば筆者のオフィスのように数人もしくはそれ以上のスタッフが詰める小さな部屋なら、ひんぱんに動かすようなことも想定して、重厚感ではなく取り回しなどの使い勝手が優先されることの方が多いはずだ。Wolfなら、ほど良いがっしり感で十分な安定感がありつつ、5本足のキャスター部分も張り出しが少ないので、何人もの従業員が並んで座るような場所に複数台導入しても邪魔にならない。もしかすると、Wolfは中小企業にちょうどいいモデルなのかもしれない……と座る前から思い始めた。

反発力の高いコシのある座面が「気持ちイイ」

 しかしイスは座ってナンボ。というわけで、座面下にあるレバーで高さを調整し、どっかりと腰を下ろす。と、コシのある座面の反発力に真っ先に気付く。イス全体を支えるガスシリンダー自体が、体重によって沈む量はわずかで、お尻を受け止める座面のクッション部分も最小限の沈み込み量しかない。なんとなく、スポーツカーのバケットシートに近い雰囲気に思える。レースカーをイメージさせる「AKRacing」と名乗るだけあって、デザインもそうだけれど、このままハンドルを握れば発車してしまいそう(?)なちょっとした緊張感がある。

「ん? ちょっと堅め?」

 でも、その緊張感も最初の一瞬だけ。背もたれに体重を預けるように座ると、ランバーサポートが優しく腰を持ち上げるように働き、包み込まれるような形状の背もたれで身体がホールドされる。そして、筆者の場合はちょうど首のくびれ部分にヘッドレストがぴたっと収まり、一体感が高まる。反発力は相変わらず高いと感じるけれど、そのおかげでだらりと座るようなことがなく、自然と一番楽な姿勢に落ち着く。それまで使っていたイスにはなかった「気持ちよさ」がこみ上げてくる。

「いや、イイネ!」
ヘッドレストはちょうど首のくびれ部分にはまってくれた

 Wolfでは、肘掛けにあるツマミのような部分を握って上下に動かすだけで、肘掛けの高さを簡単に調整可能だ。普段の仕事モード時のポジションに合わせて調整すると、さらに一体感がアップする。とはいえ、肘掛けに肘を置いている状態では、筆者のメインの仕事である「PCのキーボードで文章を打ち込む」作業ができない(手が届かなくなる)。専らゆったり座って考え事をする時か、気分転換に音楽を聞く時くらいにしか使わないのだが、肘掛けには肌触りの良いクッション素材が使われていることもあって、ついついリラックス姿勢になりがちだ。

肘掛けの調整はワンタッチ
自分にとってちょうどいい感じに調整したところ、デスクの天板の下にギリギリうまく収まる高さになった

 Wolfはリクライニング角度の範囲が広いのも特徴の1つ。固定可能な常用角度としては90度から180度まで対応しており、気持ち的に前のめりで仕事する姿勢から、完璧にリラックスして身体を横たえるフルフラットまで、自在に調整できる。仕事中にちょっと疲れた時や、真夜中まで頑張って終電を逃してしまった時なんかには、フルフラット近くにしてアンバーサポートを取り除けば、がっつり休息を取ることができる。

 フルフラットではイスの重心バランスが大きく変わってしまうため、不安定さが出ないか気になるところだけれど、Wolfの場合はそれもないので安心してガンガン使いたい。まあ、ガンガン仮眠を取るような仕事のやり方は避けたいところだが……。

フルフラットにしたところ。180度まで倒してしまうと逆に苦しいかも。少し起こし気味の方がリラックスしやすい
ややリクライニングしたところで止めると、考えごとをする時にぴったり

仕事中の座り直しが激減! 集中力の持続に効果アリ

 と、ここまでは座り心地の良さとか、リラックス時の使い勝手みたいなところばかり触れてきたのだけれど、じゃあ本気で仕事をする時のイスとしてはどうなのか。これはあくまでも筆者の個人的な感覚なのだが、良い意味で存在を忘れられるイスだな、と思った。

 座り心地の面でまったく違和感がないおかげか、仕事に集中してくると同じ姿勢のまま長時間座り続けることができる。それまで使っていたイスの場合、ずっと同じ姿勢でいると腰か脚がなんだか辛くなってきて、もしくはお尻周辺が汗だくになってしまい、イスの上で脚を組んだり、時には正座したり、また脚を降ろしたり、みたいなことをひんぱんに繰り返していた。もちろんそんな座り直しをしていると、仕事にも全然集中できない。

 以前は自分の座り方とか体質的なところが良くないのかな、と思っていたのだけれど、Wolfに変えてからというもの、座り直しをほとんどしていなかったことに気付く。反発力の高い座面のおかげか、ランバーサポートがしっかり機能しているのか、座面の素材がうまく熱を逃がす構造になっているのか、理由はそのすべてかもしれないし、そのどれでもないかもしれないけれど、とにかく事実として座り直しがほぼなくなっている。当然ながら、その分仕事に集中できる時間も確実に長くなっているようだ(仕事の出来不出来はともかく)。

存在を忘れ、長時間同じ姿勢のままでも仕事に集中しやすい

 考えてみればWolfはゲーミングチェアでもあるわけで、一瞬の判断ミスや集中力の欠如が命取りになるFPSなんかをプレーしている最中に、座り心地が悪いから座り直す、なんてことはできない。そんなことをしていたらいつまでたっても相手にカモにされるばかり。キルレシオはだだ下がりだろう。

 筆者のような仕事では、一瞬の余計な動きが仕事にトータルで悪影響を与えることはないにしても、“ノリ”というのはけっこう重要で、それが途切れてしまうのはできるだけ避けたいと思っている。Wolfならその“ノリ”が途中で遮られることが少ないので、その分集中力を持続させやすいイスということが言えるし、座り直しがないということは、身体への疲労も確実に減っているということも言えるはずだ。

価格、設置性の面でメリットを感じたら、ぜひ選択したい

 筆者の場合はひたすら机に向かって前のめりでPCのキーボードで文字入力する、という仕事なわけで、集中のしやすさとか、考え事をしたい時に効果的にリラックスできるかどうか、というのが重要になってくる。仕事内容としてはそれほど一般的ではないかもしれないけれど、PCを使って仕事をするという共通項でくくれば、今や多くの人が同じような姿勢で仕事をしているはずで、イスに求められる機能や性能も近いのではないだろうか。

 冒頭でも書いたように、職場のイスのリニューアルは、引っ越しや改装など区切りの良いタイミングで行うパターンが多いと思う。でも、仕事中に座り直しが多いとか、なんとなく集中できないとか、あるいは腰痛に悩まされている人が多いのであれば、そういったタイミングにこだわらず買い替えを検討したいところだ。

 Wolfはエントリーモデルということで費用面で比較的導入しやすく、他の高機能チェアのようなおおげさな装備もないおかげでコンパクトなこともあり、設置性の面でもハードルが高くないのがメリット。問題は、会社で一従業員としての立場から導入にもっていくのに、なかなかの困難が予想されるところ。それはもう、あなたのプレゼン力と根回しにかかっている、としか言えないのだが、その資料の1つとしてこの記事がちょっとでも役に立てばうれしい限りだ。

(制作協力:テックウインド株式会社)