レビュー

4台同時通信もなんのその。11ac 4×4 4ストリーム対応ルーターを検証する

NEC「Aterm WG2200HP」の実測レビュー

 いくらモバイルネットワークが高速化されても、インターネット固定回線の重要度は変わらない。基本的に通信量の制限がなく、100Mbps~ギガビット以上の通信キャパシティをもち、それが比較的安価な一定料金で利用できるのは、光回線をはじめとする固定回線以外にないからだ。

 こうした固定回線で用いる重要なアイテムの1つがルーターだろう。とりわけPCやスマートフォンといった無線通信可能なデバイスが標準となっている現在では、ルーターの無線LAN性能の高さが求められる。しかも、PCやスマホだけでなくテレビ、オーディオ、その他スマート家電など、ネット接続もしくはLAN接続して使うデバイスが増えている近頃は、それらが同時に通信しても対処できる並列処理性能も注目される部分だ。

 そこで、IEEE 802.11ac対応では、4×4のアンテナで、規格値では最大の1733Mbpsを実現する無線LANルーターを使って、実際に筆者の木造2階の戸建てで使用し、どれくらい電波が届くのか、複数機器で同時通信した場合にどうなるのか、確かめてみた。

IEEE 802.11ac 4×4ルーターの実力を2階建て家屋で検証

4×4で最大1733Mbpsのギガビット超えルーター

 4×4ルーターは、NECプラットフォームズ、バッファロー、エレコムといった国産メーカーや、ネットギア、ASUSなどの海外メーカーからも提供されているが、今回は手ごろな価格帯の製品として「Aterm WG2200HP」をチョイスした。

 同じNECプラットフォームズでも、11ac 4×4のハイエンド製品として「Aterm WG2600HP」が存在するが、ハイエンドの製品が良いのは当たり前。ライトモデルで検証した方が、4×4ルーターの実力を見るのにはより都合がいいと考えたからだ。

 WG2200HPを簡単に紹介すると、IEEE 802.11ac/n/a/g/bに対応し、5GHz帯の11acでは4×4のアンテナで最大1733Mbpsを、2.4GHz帯の11nでは3×3のアンテナで最大450Mbpsの通信速度を実現する無線LANルーター。

 通信するデバイスの位置を検出して電波の届き方を最適化するビームフォーミングや、複数デバイスとの同時通信を高速化するMU-MIMOにも対応しており、まさに昨今のトレンドに沿った性能を備えるルーターと言える。

WG2200HPの外観
11ac 4×4対応の高性能に加え、簡単に使い始められる「らくらくQRスタート」などの機能も備える

 今回はこのWG2200HPを、1台のデバイスで通信した場合と、4台で同時通信した場合という2つのパターンで、自宅内の各所におけるデータ転送速度を測定してみた。なお、検証に当たっては、以下の共通の測定条件のもと実施している。

使用機材

Aterm WG2200HP
MacBook Air Mid 2013(測定用クライアントPC。11ac 2×2 ビームフォーミング対応)
MacBook(測定用サーバーPC。WG2200HPから有線LAN接続)
ASUS ZenFone 2 Laser×3台(動画再生用スマートフォン。11ac 1×1 MU-MIMO対応)

測定方法

 ネットワークパフォーマンス測定ツール「iperf3」を使用し、宅内の5カ所からクライアントPCよりサーバーPCに向けて計測を実施。1カ所につき各5回ずつ実行し、そのうち最大値と最小値を除いた3回の平均値を採用した。

計測場所

 WG2200HPの設置場所は、2階リビング近くの床から約180cmほどの高さにある棚上としている。計測した場所は以下の図に示す通り。

検証場所の筆者宅の間取りと計測箇所
2階リビング近くの棚上に置いたWG2200HP
PCを使ったリビングでの測定の様子
2階寝室
1階寝室
1階クローゼット
1階浴室

検証1:デバイス1台でデータ転送速度を計測

 前述の測定条件・方法で、MacBook Airからiperf3で単純に測定を実施した結果が以下の表だ。ルーター近くの2階リビングでは実転送速度が345Mbpsを超え、壁1枚隔てた隣の部屋でも256Mbps超と余裕のあるパフォーマンスを達成。1階ではさすがに速度は落ちるものの、通常スマートフォンなどのデバイスを使うと考えられる寝室ではそれでも226Mbpsと、200Mbps以上を維持している。

 床や壁に遮られ、ルーターから遠く離れた1階のクローゼットや浴室では、極端に電波が弱くなり、通信速度が大幅に低下している。それでもWeb閲覧はもちろん動画のストリーミング再生にも支障のないであろうレベルで通信できている。

デバイス1台での通信速度計測結果グラフ

検証2:動画再生×3と同時にデータ転送速度を計測

 次に、複数デバイスで同時通信した場合の通信速度を見てみる。測定用のクライアントPCに加え、11ac MU-MIMO対応のスマートフォンASUS ZenFone 2 Laserを3台用意し、それぞれでNetflix、dアニメ、YouTubeの動画を再生している状態で速度計測を実施した。

Zenfone 2 Laser 3台で同時に動画再生しながらの測定

 結果からいえば、全体的には同時通信による処理遅れや通信帯域の逼迫といった現象は一切見られなかった。2階リビングや1階寝室で速度が落ちているように見えるが、2階の寝室と1階クローゼットではむしろ速度が上がっており、この数値の上下は同時通信によるものというより、同じ環境下でも刻々と変わる電波状況に左右されているところが大きいものと考えられる。

デバイス4台での通信速度計測結果グラフ
デバイス1台と4台での計測結果の比較グラフ

“今”を高速化し、将来も変わらず高速さを維持するルーター

 WG2200HPは、デバイス1台のみで通信している場合は十分以上に高速なパフォーマンスを発揮し、複数台で同時に通信している場合でも変わらず高速に通信し続けられることが分かった。また、今回の計測結果からは見えてこないが、各所で5回ずつ計測した値は、ばらつきが少なく、安定して通信できていたことも印象的だった。

 今回は複数デバイスで同時通信する際に、ある程度通信帯域を消費する動画のストリーミング再生で試したが、実際に日常的にこのようなシチュエーションで通信することはまれかもしれない。ただ、ホームパーティなどで招いた友人らにWi-Fiを使ってもらったりする時には、一時的に負荷が高まることはもちろん考えられる。また、今後IoTの流れが進めば、1台1台は少量の通信だとしても、より多くの機器が同時に通信する事態になることも大いにありうるだろう。

 しかしWG2200HPのような11ac 4×4ルーターであれば、今回の結果から分かる通り、通信する機器が今後増えていったとしても、余裕をもって処理できることは間違いない。今回は11ac 3×3ルーターを検証したわけではないが、これらが4×4ルーターのWG2200HPを上回る性能を出すとは考えにくい。

 同じNECプラットフォームズの製品で比べると、3×3ルーターの「Aterm WG1800HP2」が1万1900円(8月25日時点のAmazon.co.jpの最安値)、4×4ルーターのWG2200HPが1万1480円(同)となっており、むしろ逆転してしまっている。価格.comの最安値比較でも、1000円少しWG2200HPが高いだけ。それほど変わらない価格で手に入るのであれば、十分検討する価値があるといえるだろう。

 家庭内ネットワークを単純にパワーアップしたい時はもちろんのこと、今後通信デバイスが増えてきた時も高速さをずっとキープしたいと願うなら、4×4ルーターのエントリーモデルは有力な選択肢の1つとなるはずだ。

高性能ながら片手で握れるサイズのコンパクトな筐体で、設置性が高いのもメリットだ

(協力:NECプラットフォームズ株式会社)