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サラリーマンの恒例行事、年末調整の書き方と記入例

 初雪のニュース、新語・流行語大賞、紅白歌合戦の出場歌手の話題などジワジワと年末が近付いていると感じられる時期となった。サラリーマンにとって年末恒例行事の1つが年末調整だ。今回は年末調整の書き方について説明しよう。

 筆者自身は起業して10年になるので、久しく年末調整の申告書を書いていない。この時期になるとヒヤリングも兼ね会社勤めの方に「そろそろ年末調整ですね」とその様子を聞いている。提出期限は会社によって11月上旬や12月上旬などさまざまだ。

 年末調整で記入・提出する「平成28年分 給与所得者の保険料控除申告書 兼 配偶者特別控除申告書」は、年内最後の給料の支払いに必要なので、仮に11月末締め12月15日支払が年内最後の給料日の人は11月中、12月15日締め12月25日支払が最後の給料日の人は12月上旬までに提出するなど、それぞれの企業により提出期限が異なっている。加えて冬のボーナスも年末調整に影響するので、決められた提出期限を過ぎても「申し訳ありません」とお願いすれば何とかなるケースもあるようだ。

 もう1枚の「平成29年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の裏面の冒頭には「この申告書は、平成29年の最初の給与の支払いを受ける日の前日までに、給与の支払者に提出してください。」と書かれている。文面どおりに受け取れば平成29年(2017年)の1月の給料日前までに提出する書類だが、ほとんどのサラリーマンは年末のこの時期に記入・提出をしているだろう。

 年末調整に関して何人かに話しを聞くと、傾向としては従業員数の多い企業は事務作業が膨大となるため提出期限が早め。ここ数年は「社内システムに組み込まれて楽になった」という声も聞くようになった。前年と家族構成や家族の所得が同じで、生命保険の加入や解約がなければ修正の必要がないので、あっという間に申告が完了するようだ。

 一方、従業員数が少ない企業は手書きによる申告を行っているケースが多い。

平成29年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書

 「平成29年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」は平成29年(2017年)の毎月の給与から天引きする所得税を算出するための申告書だ。毎月天引きされる所得税は「給与所得の源泉徴収税額表」[https://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/gensen/zeigakuhyo2016/01.htm]なるものがあり、例えば給与から社会保険料を引いた額が30万円の場合、独身であれば8420円、扶養親族が2人いれば5130円と、毎月みなし金額を納税している。そのために必要な「専業主婦の奥さんと高校生の子がいる」といった扶養親族の状況を確認するための申告書だ。

「給与所得の源泉徴収税額表」には天引きする所得税額が記載されている

 所得税は、同じ給料であれば独身の人より専業主婦や子がいる人の方が納税額が少なくなる。課税の対象となる所得(=課税所得)から、奥さん(配偶者)や子(扶養親族)の人数の応じて一定額を差し引く(控除)することで、課税所得が少なくなり、納める税金が減る仕組みだ。なので養っている奥さん、子、親がいる人は記入漏れがないように申告することで納税額を減らすことができる、大切な申告書であることを理解しよう。

 「平成29年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」はいくつかのブロックに分けることができる。色分けしたブロックごとに見ていこう。最上段は自分に関するブロックで会社や自分自身の情報を記入する。その下のAブロックは専業主婦やパート勤めの奥さん(配偶者)、Bブロックは16歳以上の子どもや親(扶養親族)、Cブロックは障害者などだ。

 Dブロックは夫婦がともに正社員として働いていて、2人の子どもの内、1人を自分の扶養親族、もう1人を奥さんの扶養親族にする場合などで使用する。Eブロックは16歳未満の子どもがいる場合に記入する。多くの場合、独身の人は自分のブロックだけ、妻子のいる人は自分とA、B、Eブロックを記入する。

平成29年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書

自分に関する欄は全員が記入する

 では多くの人が対象となる自分、A、B、Eブロックの記入方法を見ていこう。まずは自分のブロック。左半分の税務署や会社に関する欄は会社が事前に記入しているだろう。右半分も氏名、個人番号(マイナンバー)、生年月日、住所などを記入するだけなので問題はないと思われる。独身で親の扶養をしていなければこのブロックを記入すれば完成だ。

自分のブロックは簡単に記入できる

年収103万円以下の配偶者がいる人は配偶者控除の対象となる

 妻子や親を扶養している人は下段の記入が必要となる。Aブロックは控除対象配偶者(奥さん)を記入する。控除対象となるのは年収が103万円以下、所得で38万円(=103万円-65万円)以下の配偶者となる。ただしこの所得は来年(平成29年)の所得だ。「来年の収入なんか分からないよ」と言う人もいると思うが、毎年パート代が103万円を超えないようにセーブしているのであれば、取りあえず103万円以下の金額を記入すればよい。

 子育てが一段落して、奥さんが正社員として復帰することが決まっている場合は記入しない方がよい。控除対象の配偶者として申告すると毎月天引きされる所得税は減るが、仮に奥さんの来年の年収が300万円となれば控除対象ではなくなり、来年の年末調整で不足分をまとめて納税することになる。最終的な納税額は同じなので、毎月多めの納税して年末調整で多すぎた分を取り戻す方が安心だと思われる。

配偶者の来年の年収が103万円以下なら記入する

子や親は所得と年齢に気をつけよう

 Bブロックは控除対象となる扶養親族(子や親)を記入する。ここは控除対象の条件が少々複雑なので所得と年齢の条件を確認していこう。

 控除対象となる所得の額は38万円で配偶者控除と同じだ。例えば子がアルバイトをしている場合は、年収で103万円以下であれば所得が38万円以下となり控除対象となる。仮に毎月6万円のバイト代を得ているなら年収は6×12=72万円。所得は72万円-65万円=7万円となり控除対象ということだ。子に関して言えば、高校生、大学生といった制限はないので、就職浪人やリストラなどで所得が38万円以下であれば30歳でも40歳でも控除の対象となる。

 親が公的年金を受給している場合は年齢により控除額が異なる。65歳未満の公的年金控除額は70万円、65歳以上の公的年金控除額は120万円。よって65歳未満なら公的年金が108万円以下であれば所得が38万円以下となり控除対象、65歳以上なら公的年金が158万円以下であれば所得が38万円以下となり控除対象だ。

 年金に関する注意点は遺族年金。遺族年金は課税対象とならないので、仮にサラリーマンだった父親が亡くなり母親が遺族年金を受給している場合は、156万円を超えても扶養控除の対象となる。

控除対象となる親族には年齢と所得の条件がある

 控除対象となる年齢条件は16歳以上。左側の欄に(16歳以上)(平14.1.1以前生)と記載されているとおり平成29年(2017年)の年末に16歳以上の子や親が対象となる。

 加えて税的な優遇が受けられる年齢がある。上段の老人扶養親族(昭23.1.1以前生)、特定扶養親族(平7.1.2生~平11.1.1生)と誕生日が書かれた欄に注意しよう。平成29年の年末時点で昭和23年1月1日以前に生まれた人は70歳以上、平成7年1月2日から平成11年1月1日に生まれた人は19歳から22歳だ。この2つの年齢の合致すると特典が得られるので注意深く確認したい。図を見ていただこう。

扶養親族の年齢と控除額の関係

 70歳以上は老人扶養親族で、同居の場合は58万円、それ以外は48万円と控除額の加算がある。特定扶養親族の対象となる19歳から22歳はほぼ大学生の年齢で、控除額が25万円加算され63万円となっている。これらの年齢の扶養親族がいると控除額が増え、納税額が減るということだ。あくまで年齢が条件なので、特定扶養親族は大学生である必要はない。浪人生でもフリーターでも生計を一として年間の所得が38万円以下であれば特定扶養親族となる。

 70歳以上の親を扶養している場合、同居なら同居老親等に、別居であればその他に丸印を付ける。同じく特定扶養親族にあたる子がいる場合は該当する欄に丸印を付ける。これにより控除額が増え税金が減ることになる。

住民税に関する事項

 最下段のEブロックは住民税に関する事項となっている。ここには平成29年の年末時点で16歳未満の子(扶養親族)を記入する欄だ。左側に書かれているとおり平成14年1月2日以後に生まれた子どもがいる人はここに記入しよう。

16歳未満の子がいる人はこの欄に記入しよう

 多くの人は以上で「平成29年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の記入は完了する。独身で親がまだ現役で働いている人は氏名と住所を書いたら終わりだが、独身でも年金生活の親がいる人や妻子、親を扶養している人は収入、公的年金、年齢などに注意をして漏れのないように申告していただきたい。

平成29年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の記入例

平成28年分 給与所得者の保険料控除申告書 兼 配偶者特別控除申告書

 次はもう1枚の申告書「平成28年分 給与所得者の保険料控除申告書 兼 配偶者特別控除申告書」の書き方について説明しよう。「平成28年分 給与所得者の保険料控除申告書 兼 配偶者特別控除申告書」は生命保険、地震保険の支払金額から控除額を算出し納税額を減らすことができる申告書だ。保険以外に配偶者特別控除などもあるが、主役は生命保険による控除と思っていいだろう。

 こちらも記入欄がいくつかのブロックに分けられている。最上段は自分に関するブロック。左側の大きなブロックは生命保険料控除、左下は地震保険料控除となっている。右側の上段ブロックは配偶者特別控除。その下のブロックは社会保険などでほとんどの人は記入する必要はないだろう。ちなみに毎月天引きされている厚生年金、健康保険、雇用保険などの社会保険は記入する必要はない。もし20歳を超えた大学生の子の国民年金を免除せず親が支払っている場合は支払った額を社会保険の欄に記入する。

この申告書の主役は左側の生命保険のブロック

 最上段の自分に関するブロックは会社名、会社の住所、氏名、住所なので記入は簡単に終了する。独身で生命保険に加入していない人はおそらくこのブロックを書くと完成となる。

やや複雑な生命保険は節税の重要項目

 生命保険のブロックを記入するときは、生命保険会社から郵送された生命保険料控除証明書を手元に用意しよう。証明書には摘要制度の旧制度と新制度、一般用や介護医療用、保険の種類、保険期間、支払った保険料などが記載されているので、それを申告書に記入する。

生命保険料控除証明書に書かれた情報を見ながら記入しよう

 生命保険料の控除はやや複雑なので簡単に説明をしておこう。平成23年以前に契約した保険は旧制度、平成24年以降に契約した保険は新制度に分けられる。旧制度の保険は一般生命保険と個人年金保険に分かれていて、死亡保険などの生命保険と入院給付金などの医療保険はまとめて一般の生命保険となっている。

 新制度の保険は医療保険・介護保険を独立させ、一般の生命保険と介護医療保険が別々に控除を受けられるようになった。これに個人年金保険を加え3つに分かれている。旧制度と新制度では控除額の上限が異なるなど分かりにくいので証明書を注意深く見て記入したい。

生命保険料控除は旧制度と新制度で5つに分けられている

 実際の記入例に沿って説明していこう。1つ目の記入例は旧制度の生命保険に加入しているケースだ。この例では死亡保険などの生命保険に12万円、入院給付金などの医療保険に8万円をの保険料を支払っている。図の最下段の計算式II(旧保険料等用)に100,001円以上=一律に50,000円となっているから、12万円の保険が1つあれば、他の保険を記入する必要はない。記入例はあえて8万円の医療保険を書いているが、この例では記入は不要だ。

旧制度のみの人の記入例

 記入例の矢印に沿って「aのうち旧保険料等の金額の合計額」をBに20万円と記入し、下段の「計算式II(旧保険料等用)」に照らし合わせ控除額を算出し、矢印に沿って②に5万円、イも5万円、最終の生命保険料控除額にも5万円と記入すれば完成となる。記入例では保険料の合計が10万円を超えているので、控除額は上限の5万円だ。

 2つ目の記入例は旧制度の生命保険が12万円、介護医療保険が8万円、旧制度の個人年金保険が12万円の場合だ。旧制度の生命保険は先ほどの例と同じでイに5万円と記入。介護医療保険の8万円は赤点線に沿って計算しロに4万円。個人年金保険は青点線に沿ってハに5万円を記入する。イ、ロ、ハの合計額は14万円となるが上限額が12万円なので最終の生命保険料控除額には12万円と記入する。

旧制度、新制度、個人年金に加入している人の記入例

奥さんの年収が103万円を超えたら配偶者特別控除

 配偶者控除は103万円の上限額があった。奥さんの収入が103万円を超えた場合、配偶者控除の対象からは外れるが、救済措置的に適用されるのが配偶者特別控除だ。103万円を超え141万円未満であれば段階的に減額されるが控除を受け取ることができる。

配偶者特別控除
年収控除額
103万円超  105万円未満38万円
105万円以上 110万円未満36万円
110万円以上 115万円未満31万円
115万円以上 120万円未満26万円
120万円以上 125万円未満21万円
125万円以上 130万円未満16万円
130万円以上 135万円未満11万円
135万円以上 140万円未満6万円
140万円以上 141万円未満3万円
141万円以上0円

 例えば、110万円の収入があると控除額は31万円、120万円の収入があると21万円、130万円の収入があると11万円と徐々に減っていき、最後141万円の収入があると控除額は0円となる。

 配偶者特別控除の覧を記入してみよう。最上段の「あなたの本年中の合計所得金額の見積額」の欄は、所得が1000万円を超える高額所得者は配偶者特別控除を受けられないので、その確認用の記入欄だ。記入する金額は収入(年収)ではなく所得なので注意しよう。収入から給与所得控除なるものを引いた金額を記入する。

平成28年の給与所得控除
給与等の収入金額(年収)給与所得控除額
162万5000円以下65万円
162万5000円超 180万円以下収入金額×40%
180万円超 360万円以下収入金額×30%+18万円
360万円超 660万円以下収入金額×20%+54万円
660万円超 1000万円以下収入金額×10%+120万円
1000万円超 1200万円以下収入金額×5%+170万円
1200万円超230万円(上限)

 例えば年収600万円なら、給与所得控除の174万円を引いて426万円と記入しよう。ただしこの記入欄は1000万円以下なら400万円でも800万円でも同じなので、給与明細を並べて電卓で計算する必要はなく、大体の金額を記入すればよい。

配偶者特別控除の記入例

 奥さん(配偶者)の収入は納税額に影響するので正確に記入したい。配偶者特別控除の控除額は5万円ごとに控除額が変わる仕組みなので、年収130万円でも134万9999円でも控除額は同じだが、134万9999円と135万円は、1円の差で控除額は5万円異なる。

 とは言え、11月中旬までに提出する人は11月の給与、冬のボーナス、12月の給与の支給額を類推して1円単位まで正確に記入することは難しいだろう。この点では提出期限が12月の人の方がより正確な金額が算出できそうだ。

 収入を記入したら、後は表に沿って簡単な計算をするだけだ。収入から65万円を引いた金額を所得金額の欄に記入。その金額を早見表と照らし合わせて、控除額を一番下の配偶者特別控除の欄に記入すると完成だ。

記入例1
記入例2

 多くの人が記入すると思われる部分は以上だ。家族が増えることも減ることもなく、生命保険の契約、解約がなければ来年もほぼ同じ内容を記入する可能性が高いので、コピーを持っておくと翌年の年末調整がグッと楽になるだろう。