特別企画

現場でありがちな悩みを担当者がその場で解決 東芝テックソリューションサービスがネットスカウト「AirCheck Wi-Fiテスター」を導入したワケ

 POSシステムの導入や監視などを展開する「東芝テックソリューションサービス株式会社」。

 「安定していて当たり前」だと思われがちなインフラ環境を、不確定要素が多い現場でも着実に構築できる背景には、NETSCOUT(ネットスカウト)の「AirCheck Wi-Fiテスター」を積極的に活用する人材と、その導入と教育を支える強い組織があった。

 現場から技術者へのエスカレーションを減少させた現場を作り上げた秘訣とは? 普段はあまり語られることがない影の苦労に迫った。

AirCheck Wi-Fiテスター(写真は現行製品)

頭がイタイ、現場のWi-Fi

 普段、我々が店頭で何気なく見かけているPOSレジ端末やハンディ端末。

 その導入をもしも自分が担当したとしたら……。そこに、一体、どのような苦労がありそうか? 想像してみると、ちょっと興味深い。

 機器を納入して物理的に配置するのも大変そうだが、やはり悩ましいのは、そのインフラだろう。

 今時のPOSは、無線LANでの接続が当たり前。果たして、ずらりと並んだ複数台のレジの端から端まで問題なく通信できるようにできるか? 飲食店などで注文を受けたりするときに使うハンディ端末が店舗のどの席でも通信できるか? そしてそれらの機器がすべて遅延なく、そして正しく店舗システムとの間でデータをやり取りできるか?

 家庭内のWi-Fiなら、電波が届かない場所や通信速度が多少遅い場所があっても、さほど問題にはならないかもしれないが、店舗などの現場では、このようなWi-Fiの問題はある意味致命傷だ。

 通信に支障があるから、といって店舗のレイアウトを変更してもらうことなど到底できないうえ、仮に導入時に問題がなかったとしても、後から近隣の店舗の影響で電波の干渉が発生する可能性もあり、継続的なメンテナンスやトラブル対応も欠かせない。

 ちょっと考えてみただけでも、現場のWi-Fiがいかに頭のイタイ問題を抱えているかが想像できるだろう。

POSシステムの導入大手「東芝テックソリューションサービス」

 そんなWi-Fi周りの設計やトラブル対応で、現場レベルの対応力の底上げに成功した企業がある。

 東芝テックの国内事業のサービス提供を中心に、POSシステムをはじめとしたリテール、ファクトリー、オフィスの機器導入や運用、保守サービスなどを手掛ける東芝テックソリューションサービス株式会社だ。

 大手量販店や有名スーパー、駅ビル・ショッピングセンターなどのモール設備、コンビニエンスストア、飲食店、オフィスなど、幅広い現場へのPOSシステムの導入実績を持ち、サービス品質の高さに定評のある企業となっている。

 同社では、NETSCOUTが提供する「AirCheck Wi-Fiテスター」の導入によって、現場レベルでの無線品質の調査の手間を大幅に削減し、効率的なPOSシステムの設置や保守を実現。さらに、それを実施する現場の人材育成までも成功している。

 どのような経緯でAirCheck Wi-Fiテスターを導入し、具体的にどのような効果を得られているのか? 東芝テックソリューションサービス株式会社 技術戦略本部 サービスソリューション統括部 戦略事業企画部 戦略ソリューション技術グループ グループ長 駒﨑武志氏、同係長 唐崎健児氏、同 阿保洸佑氏に話を伺った。

現場でのトラブル解決のためにAirCheck Wi-Fiテスターを導入

 まず、NETSCOUTのAirCheck Wi-Fiテスターを導入した経緯に迫ってみよう。

 駒﨑氏によると同社の業務内容は次のようなものだ。「当社の業務の1つに『サーベイ』というものがあります。具体的にはWi-Fiの通信環境の調査です。POSやハンディ端末の導入前はもちろんのこと、導入後の保守などで実施する場合もありますが、たとえば飲食店などですべての席でハンディ端末オーダーを受けられるかを確認したり、そのオーダーが無線プリンターで厨房に遅延なく出力されるかどうかを調査します。そのうえで、アクセスポイントの設置場所や設定を調整します。もしも、周囲に無線LAN機器があればチャネル設定を変えるなどして、通信の品質を改善する必要もあります」という。

東芝テックソリューションサービスの駒﨑武志グループ長

 ハンディ端末や無線プリンターなどに問題があれば、飲食店でオーダーが通らないなどの問題も発生しかねない。もしかすると、過去、レストランで自分のオーダーした料理が届かなかったことの原因が、そのあたりにもあったのかもしれないと考えると、複雑な心境だ。

 しかし、このような調査はAirCheck Wi-Fiテスターでなくても実施できる。そのあたりについて阿保氏は次のように経緯を語った。「弊社では、従来、全国に130カ所あるサービスステーションに簡易Wi-Fiテスターを配置し、それを統括する全国12の支社・支店にはノートPCを利用した専用のテスター機器を配置していました」という。

 大き目のバッグから、専用ノートPCと各種ケーブルやアンテナを取り出し、専用のソフトウェアを駆使してWi-Fiの調査をしている姿を見かけたことがある読者も少なくないことだろう。

 阿保氏は続ける。「しかし、この方法には課題がありました。1つはサービスステーションの簡易テスターでは十分な調査ができないことです。しかし、だからといってノートPCを使ったテスターを全国のサービスステーションに配置することはできませんでした。理由は、価格が高いこと、そして調査と解析に高度な知識が必要だったためです」という。

 その結果、同社には一つの課題が発生してしまう。「事前の調査などで何か問題が発見されても、サービスステーションのCE(カスタマエンジニア)の手元にあるツールでは、それを解決することが難しいため、専用テスターが配置されている支社・支店に問い合わせが集中し、専用テスターを使いこなせる技術者の負荷が高くなってしまいました」(阿保氏)という。

東芝テックソリューションサービスの阿保洸佑氏

 技術者への負荷が高くなれば、個人への負担が大きくなるだけでなく、現場での対応にも時間がかかる。現場や支社・支店などを含めた作業のサイクルがうまく回らなくなってしまったわけだ。この課題を解決するために取り組んだのが、NETSCOUT(編集注:導入当時はFluke Networks社、買収以後はNETSCOUT)が提供している、AirCheck Wi-Fiテスターのサービスステーションへの配置とその教育だ。

 「弊社では、現在、約1000名のCEが存在しますが、2014年からAirCheck Wi-Fiテスターの使い方の教育プログラムを実施し、現在では245名が受講を終えています。今後、半期で80名前後の教育を続け、最終的には全員の教育と、全国のサービスステーションすべてへのAirCheck Wi-Fiテスターの配置を目指しています」(唐崎氏)。

 課題を解決するためのツール(AirCheck Wi-Fiテスター)を導入するだけでなく、現場レベルで対応できる人材も一緒に育成したわけだ。

さまざまな現場のトラブルをAirCheck Wi-Fiテスターが解決

 では、実際にどのようなケースでAirCheck Wi-Fiテスターが利用されているのだろうか? その点について、唐崎氏は次のように例を示してくれた。

 「現場では、つながらない、ローミングが安定しない、届かない、などのトラブルが発生することがあります。たとえば、端末の導入でアクセスポイントに接続できないことがありました。ただ、『つながらない』という現象だけでは、何が原因かがわかりませんでしたが、AirCheck Wi-Fiテスターを利用することにより、アクセスポイント側に問題ないことを確認することで、端末側の設定に問題がありそうだと判断した結果、端末に不明なSSIDが登録されていて、本来つながるべきアクセスポイントにつながっていないことがわかったケースがありました」。

 「また、ホテルへの客室向けWi-Fiサービスの導入時に、室内でつながりにくいという状況が発生しました。このときも、AirCheckを利用して、実際に電波状況を数値として把握することで、アクセスポイントの設置台数を廊下両端の2台から、中心もカバーする3台へと変更しました。きちんとした裏付けがあったおかげで、3台という提案ができ、お客さまにも納得していただけました」ともいう。

 このほか、「広大な施設のショッピングモールでWi-Fiのカバー率の調査をしたときもAirCheck Wi-Fiテスターが役立ちました。当初はノートPCに搭載したWi-Fi調査ツールの使用を検討しましたが、敷地が広大すぎるためノートPCのバッテリーが持たないうえ、持ち運びも大変であることがわかりました。軽量コンパクトでバッテリー駆動時間が長いAirCheck Wi-Fiテスターを使ったおかげで、広いエリアでの調査を無事に完了させることができました」とのことだ。

東芝テックソリューションサービスの唐崎健児氏

 AirCheck Wi-Fiテスターの概要についてはこちらの記事も参照してほしいが、ボタン1つでWi-Fiのテストを実行できる手軽な反面、信号強度、ノイズ、SN比、CH、MAC、ステルスを含むSSID、セキュリティ、802.11タイプ、非Wi-Fi利用率など、実にさまざまな情報を取得できる、強力なトラブルシューティングツールとなっている。

 これにより、同社では現場で発生した多くの課題を、現場のCE自らが、その場で解決できるようになったことになる。

 阿保氏が「従来のノートPCの専用テスターは『とっつきにくい』ところがありましたが、AirCheck Wi-Fiテスターは操作が簡単で、結果もわかりやすいので、現場での混乱もありません」と語るように、必要な機能を備えているだけでなく、それを手軽に使える機器である点が、同社の業務内容や組織形態と非常にマッチした良い例と言えそうだ。

 もちろん、AirCheck Wi-Fiテスターの導入後も、現場レベルでは解決できない問題も存在するが、それには従来通り、支社の技術者が専用テスターを使って支援すればいいことになる。

 従来は1次的な切り分けが機能しなかったために技術者への負担が増えていたが、1次的な切り分けが即トラブル解決につながるようになったおかげで、技術者への問い合わせが減り、現場だけでなく、関連部門の業務効率の改善が大幅に進んだことになる。

AirCheck Wi-Fiテスターを利用すると、さまざまな情報を取得できる

現場での自発的な活用や横の展開も進む

 このように、AirCheck Wi-Fiテスターの導入が非常に効果的だった同社だが、その効果が副次的な波及も見せているという。

 阿保氏によると、「まだ全国のサービスステーションへの導入が済んでいるわけではないのですが、教育を受けたCEが自発的に『AirCheck Wi-Fiを使いたい』と隣接するサービスステーションから借りて利用するケースも増えています」という。

 「また、すでに教育を受けたCEが、まだ教育を受けていない同僚に対して、AirChek Wi-Fiテスターの使い方を教えて、現場で活用する例もあります(阿保氏)」という。

 こういった自発的な活用や横への自然な展開が発生するというのは、現場の業務改善では珍しい例だ。

 同社に限らず、本部主導での導入では現場から反発されたり、教育した知識が個人で止まったり、あまり使われずに忘れさられていくことの方が多い。

 これに対して、同社の例では、現場が納得し、自らのメリットのためにツールを自発的に活用している。『現場』に関するケーススタディとしては、非常にうまくいっている例と言えるだろう。

ユーザー側で自ら持つメリットも

 つながって当たり前。ともすればそう思われがちなWi-Fi(インフラ)だが、実際に導入するとなると、思わぬ障壁は意外と多いものだ。

 東芝テックソリューションサービスは、いわば、そのような障壁をいくつも目の当たりにし、そして乗り越えてきた、プロ中のプロと言える。そんな同社がその最前線で選び、今後も積極的に導入を進めていくというのだから、AirCheck Wi-Fiテスターの実力はある意味折り紙付きと言ってもいいだろう。

 特に、最後に紹介した自発的な活用や横への展開は、現場で支持されている証であり、これぞAirCheck Wi-Fiテスターのメリットと言えるいい事例と言えそうだ。

 今回は、現場にWi-Fiを導入する側の意見であったが、導入してもらう側、つまりユーザーとしても同様にAirCheck Wi-Fiテスターを導入するメリットがあると言えそうだ。Wi-Fiの導入後につながらないなどのトラブルが発生した場合でも、導入業者やメーカーのサポートを待つことなく、自分たちである程度の原因を探り対処することができる。

 自社の営業にWi-Fi環境が欠かせないものだとしたら、そのトラブル解決手段としてAirCheck Wi-Fiテスターを1台手元に置いておく価値は十分にあると言えそうだ。

(協力:ネットスカウト)